猫にひっかかれたら注意するべき感染症
- 猫ひっかき病=バルトネラ症
- パスツレラ症
猫にひっかかれたら、猫から人に共通して感染する病気として、人獣共通感染症に注意しましょう。人獣共通感染症はたくさんありますが、猫にひっかかれたら注意すべき主な感染症は、バルトネラ症とパスツレラ症があげられます。
猫が人獣共通感染症に感染していても、症状がでない場合が多いのですが、人が感染した場合には症状が現れ、重症化することもあります。
猫ひっかき病=バルトネラ症
猫にひっかかれたら、猫ひっかき病という病気にかかる可能性があります。猫ひっかき病は猫が持つ「バルトネラ菌」というものが原因になって、猫の血液、口の中の粘液、または猫に寄生するノミの糞などから検出されます。
その原因から猫ひっかき病はバルトネラ症という感染症で、リンパ節炎を主体とする「バルトネラヘンセラ」という細菌によって引き起こされる感染症のことなのです。猫から人へは、猫にひっかかれたり噛まれたりして感染し、人には次のような症状が出ます。
- 傷が赤くなって腫れる
- 傷に膿を持つ
- 熱が出る
- リンパ節が腫れる
- 食欲がなくなる
- だるい、倦怠感がある
- 吐き気がする
猫にひっかかれたら、すぐ後から数時間でまず傷口が赤くなり、出血したり腫れたりします。症状が出るまでには数日から2週間くらいの潜伏期間があります。
猫に引っかかれた傷口から膿を持ったり、発熱したりして、リンパ節が腫れてくると数週間から数か月続きます。リンパ節が腫れた後、重症化すると、1週間から3週間後に、痙攣や意識障害を起こしたりすることもあります。
猫に引っかかれたら、傷が治ったように見えても、数週間してから発熱することがあります。熱が出ると食欲がなくなり寒気がしてくることもあり、倦怠感が出たり、関節痛を感じたり、発疹が全身に出てきたりすることもあります。
ごく稀ですが、脳炎、心内膜炎、眼球運動障害といった病気に発展し重篤化する恐れがあるので、おかしいと思ったら早めに病院に受診するようにしましょう。
パスツレラ症
パスツレラ症とは、パスツレラ属菌のパスツレラムルトシダという細菌によって引き起こされる感染症です。パスツレラ菌は猫の口中に高確率で存在する菌で、猫に噛まれたときはもちろん感染する可能性があります。
さらに猫は爪を舐めてグルーミングもしますので、猫にひっかかれたら感染する可能性があります。その他、猫にスリスリされる、触るといった接触から、菌が人間の手などに付着し、そのまま目をこすったり傷口に触れたりすると、そこから感染に至ることもあるのでこまめに手を洗うようにしましょう。
このパスツレラ症は、感染した人の免疫力が低下しているときにだけ症状を現す感染症なので、日和見感染症と言われています。パスツレラ症になると、人には次のような症状が出ます。
- 傷が腫れる
- 気管支炎になる
- 肺炎を起こす
猫にひっかかれたら、パスツレラ症になった場合には、30分後くらいから傷が痛み始め、傷口が膨張し、浸出液が出てくるようになります。パスツレラ症が悪化すると、呼吸器疾患、排血症、髄膜炎や骨髄炎などの症状が出ることもあります。
カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症
こちらも猫の口内にいる菌で、猫から感染する病気の中でも危険な感染症になります。猫にひっかかれたり噛まれたりすることにより発症する可能性がります。この感染症は猫の傷を負った数日後から、
- 発熱
- 頭痛
- 腹痛
- 嘔吐
- 意識障害
- 敗血症
- 髄膜炎
といった症状が現れ、最悪の場合は
- 敗血性ショック
- 多臓器不全
などを引き起こし、命を落とすこともあります。
狂犬病
猫に引っかかれた時になる感染症の「狂犬病」は犬だけではなく、猫も感染することがあります。もし感染してしまったら、ほぼ100%助からないと言われているとても怖い感染症です。
猫が狂犬病に感染すると、顔つきや性格がガラッと変わり、瞳孔が開きっぱなしになるなどの見た目の変化、呼吸不全や痙攣などの体調の変化などが見られるようになります。
日本では昭和32年以降狂犬病の報告はあがっていませんが、海外では今でも普通に蔓延している感染症なので、もし海外に行くことがあれば野良猫にひっかかれたり噛まれたりしないように、飼い猫は野良猫に近づけない、飼い主さんもなるべく近寄らないなどの対策をとるようにしましょう。
破傷風
土や砂利にいる菌で野良猫の爪に付着し、猫にひっかかれることで、そこから感染する可能性があります。破傷風になると口が開きにくくなり痙攣を起こし、最悪の場合は死に至る感染症です。大人より子どもの感染率が高い感染症なので、できれば予防接種を受けておくのが良いかと思います。
猫にひっかかれた時の対処法
応急処置をする
猫にひっかかれたら、まずできる限り早く応急処置をしましょう。
- 水道水など流水で洗う
- 傷口を消毒する
猫にひっかかれた傷口を流水で時間をかけ、猫の唾液などが残らないように洗い、汚れや異物なども洗い流します。きれいにした後、猫にひっかかれた傷口をオキシドールなどの消毒液で消毒します。軽度の場合には、傷は自然治癒する場合がほとんどです。ただ、傷が治ったようでも、後から感染症の症状が出てくることもあります。
さらに、リンパ節が腫れたり発熱したりだるくなったりと、風邪と間違えるような症状が出るため、人獣共通感染症の発見が遅れてしまうこともあります。そのため、猫にひっかかれたら、軽い傷だと思っても、病院に行って処置をしてもらった方が良いと言えるでしょう。
病院に行って処置してもらう
猫にひっかかれたら、傷の状態や出血や痛みがひどい場合には、すぐに病院に行った方が良い場合もあります。病院に行く場合には、できれば総合病院へ行ってください。皮膚科、整形外科、形成外科、内科、などがありますが、総合病院の受付で、猫にひっかかれた傷だということを医師に伝えて、指示に従いましょう。
猫に引っかかれた傷が浅く、応急処置をして病院に行かなかった場合でも、傷が痛んだり、熱が出たり、腫れがひかなかったりした場合には、早めに病院へ行ってください。軽く見ていても、感染症が重症化すると、発作を起こしたり、痙攣したり、意識障害を起こして脳症を併発することもあり得ます。
子供や高齢の方が猫にひっかかれたら特に大事をとって、傷が大したことのないように思えても、病院で傷の処置をしてもらいましょう。その際には猫にひっかかれたということを必ず伝えてください。妊婦さんの場合は抗生物質による治療はできないので、妊娠中であることを必ず伝えるようにしてくださいね。
猫ひっかき病を予防するには
猫にひっかかれたら、人獣共通感染症にかかる可能性があるため、できるだけ予防をしたいものです。まず猫がひっかき病=バルトネラ症になることを防ぐことで、人間が感染することを防ぐということになります。ただ、猫が猫バルトネラ症にかかるのを予防する確実な方法はありません。以下のことに注意して、猫がヘモバルトネラ症に感染する可能性を減らすという方法になります。
- ノミを駆除する
- 猫を室内飼いする
- 猫の爪をしっかり切る
- 野良猫にはむやみに触らない
猫にひっかかれたら、必ずしも感染症にかかるわけではありませんが、念のために上記のように予防策を取っておきましょう。飼い猫がいる場合には、飼い猫が感染症にかからないようにします。猫と猫の感染では、ノミが病原菌を媒介すると言われているため、ノミの駆除をしっかりします。飼い猫を室内飼いにして、他の猫との接触をなくせば、感染症にかかる可能性も低くなります。
猫の爪を定期的に切ることも予防のために有効です。もし猫にひっかかれたら、爪が伸びていれば怪我をしますが、爪が短く尖っていなければ、それほど怪我をせずに済みます。
さらに、人が直接猫に触れることを減らし、猫にひっかかれないように気をつけることが予防になります。野良猫が懐いてきたら可愛いものですが、猫にひっかかれたら怪我をしますし、感染症にかかる可能性も高いので、興奮させたり怒らせたりしないように気をつけましょう。
パスツレラ症の予防には、猫にできるだけひっかかれないようにすることと、体調が悪いときには猫とのスキンシップを控えるという方法があります。子供や高齢の人がパスツレラ症になった場合、重症化すると死亡する例もまれにあります。また糖尿病や、免疫不全などの基礎疾患を持つ人が感染しやすく、重症化もしやすいため、特に注意が必要です。
まとめ
飼い猫でも野良猫でも、猫にひっかかれたら、人獣共通感染症にかかる可能性がありますから、しっかりと応急処置をしましょう。感染症にかかると、つらいだけでなく、治るまでにも時間がかかりますし、場合によっては重症化するおそれもあります。
猫にひっかかれたら、傷の大きさにかかわらず必ず応急処置をして、異常があれば早めに総合病院に行くことをおすすめします。万が一のために小さな消毒液をカバンに入れておくと良いかもしれませんね。