猫伝染性腹膜炎(FIP)とコロナウイルス
そもそも猫伝染性腹膜炎(FIP)とは、どのような病気なのかというと、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)が原因とされていて、全体の猫の80%が感染していると言われている、”コロナウイルス”の変異によって引き起こされる病気です。
普通は腸の粘膜でしか繁殖することのできないコロナウイルスが、腸以外から検出された場合に、猫伝染性腹膜炎(FIP)と診断されます。発症すると数日~数ヶ月という短期間で猫が死に至る恐ろしい病気です。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状
猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症が疑われる場合の診断方法ですが、見た目で猫のお腹、又は胸に水が溜まる腹水貯留や、体液の貯留がない黄だんがあるかを確認します。それらの症状が見られた場合、血液検査を行い、高たん白血症が出ていればFIP抗体を測定し、それで高い数値が出た場合に猫伝染性腹膜炎(FIP)と確定します。
猫伝染性腹膜炎(FIP)にはドライタイプとウェットタイプの2種類が存在し、症状がそれぞれ少し違います。初期症状は共通して、発熱や食欲減退、痩せてくるなどの症状があります。
ウェットタイプ症状
- 脱水症状
- 貧血症状
- 黄疸が見られる
- 下痢やおう吐
- 腎臓肝臓機能の低下
- 呼吸が苦しそう
- 便秘
ウェットタイプ症状は猫の腹や胸に水が溜まるのが特徴です。お腹が異様に膨れていることで気づく飼い主も多く、私の猫も猫伝染性腹膜炎(FIP)にかかったた時はこのウェットタイプでした。私の猫は、それまであまり症状は見られませんでしたが、身体に対してお腹が大きくなり風邪のような症状が出て、体調も悪そうだったので動物病院に連れていったところ、猫伝染性腹膜炎(FIP)と診断されました。
猫によっては脱水症状や貧血症状がみられ、黄疸やおう吐、下痢、便秘を繰り返すこともあります。
ドライタイプ症状
- 神経障害
- 歩行障害
- 腎臓や肝臓の障害
- 視覚障害
- てんかんや性格の変化
- 異常行動
猫に神経障害、歩行障害、腎臓や肝臓の障害、視覚障害などが見られ、てんかんや性格の変化、異常行動を経て死に至ります。ウェットタイプより症例は少ないですが、そのぶんドライタイプのほうが予後は悪いと言われています。
またウェットタイプと違い、猫の腹や胸に水が溜まることはありません。そのため、こちらをドライタイプといいます。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因
では、どうしてコロナウイルスだったものが猫の体内で突然変異し、猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスになってしまうのか?という点ですが、ハッキリとした原因はわかっていません。
コロナウィルスを持っている猫は多いですが、突然変異をし猫伝染性腹膜炎(FIP)となる猫は全体の5%前後といいます。発症する猫としない猫のその違いはわかっておらず、まだ研究段階です。最近の報告だとウイルスの感染が原因ではなく、猫のストレスが原因になっているのではないかと言われています。
猫はテリトリー意識が強い生き物として良く知られていますので、特に多頭飼育により、猫にストレスが掛かってしまった場合に発症しやすく、多頭飼いの場合と単頭飼いの場合で比較すると、多頭飼いの方が圧倒的に高い確率で猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症しているそうです。
ちなみに、猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスは、人間や他の動物に移ることはありません。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の他の猫への感染
一部の研究報告によると、多頭飼いの家庭での発症率が高いことが報告されています。愛猫が猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症してしまった場合、ほかの猫に移るのか?と気になる飼い主さんが多いと思います。特に多頭飼育の場合は、感染するのか、しないのかによってその後の飼育方法(隔離する等)が変わってきます。
この猫伝染性腹膜炎(FIP)は、「感染する」・「感染しない」、の2つの意見に分かれています。
意見が分かれる理由としては、
- 原因となる「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)」自体は、他の猫に移る事は無い
- ただし「コロナウイルス」は他の猫に移るため、それを発端に猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症する恐れがある
という、2つの面を合わせ持っているからだそうです。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の感染経路
次に、猫が猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症する経路を、わかりやすく説明していきたいと思います。
猫同士の接触感染(猫同士のグルーミング等)によりコロナウイルスに感染、感染後、猫の体内にあるコロナウイルスが、ある日突然変異してFIPウイルスへと変化します。そのウィルスが猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症します。
大切なポイントは、
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因になるコロナウイルスは、簡単に猫は感染してしまう
- 感染後にウイルスが突然変異することで、FIPウイルスに変化してしまう
- 既に猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症した猫から、直接猫伝染性腹膜炎(FIP)が感染することはない
この3つです。なお、空気感染の有無については意見が分かれており、ハッキリとした結論は出ていません。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療法
猫伝染性腹膜炎(FIP)の場合、血管炎を抑えることで症状は一時的に緩和しますので、抗炎剤であるステロイドを使用することが多いそうですが、ウイルス疾患のため、インターフェロン(抗ウィルス剤)の投薬も猫の痛みや苦しみを緩和する対症療法として、効果的だと言われています。
また、猫伝染性腹膜炎(FIP)の恐ろしい所は、一時的に症状を緩和することは可能でも、ほとんどの場合再発してしまうという所です。猫伝染性腹膜炎(FIP)は再発するとステロイド剤が効きません。再発は必ず訪れますが、幸運にも1~2年存命した猫もいます。ほとんどの場合、数ヶ月で再発し、1歳以下の猫で発症した場合は、同じ治療を用いても3ヶ月以内に亡くなることがほとんどです。
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、初めの治療が延命のカギです。初めの治療から症状が緩和された期間を、いかに長くするかということがポイントになります。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の予防法
残念ながら猫伝染性腹膜炎(FIP)のこれといった予防方法はありません。発症原因も特定されておらず、特効薬もワクチンもありませんので完全に予防するのは不可能です。
しかし現在は、猫のストレスが原因ではないかと言われていますので、猫にストレスをかけさせない生活を心懸けるようにしてください。
まとめ
残念ながら、一度、突然変異によりFIPウイルスに変わってしまったウイルスは、元に戻ることはありません。コロナウイルス自体は症状が強いものではなく恐ろしい病気ではありませんが、それがFIPウイルスに変化してしまうことで、猫の生命にかかわる恐ろしい病気へと変わってしまいます。
現在の医療では完治することが出来ない病気の為、猫にとってツライ通院や治療を続けることを、断念する飼い主さんも多くいらっしゃいます。猫のストレスが原因とは言われていますが、それすらも真偽は定かではないのが現状です。
私の猫は猫伝染性腹膜炎(FIP)と診断された次の日に亡くなりました。もっと早く異変に気付けてあげられなかったのか、猫にストレスを溜めさせる生活をさせていたのか、猫は私の元に来て幸せだったのか、と後悔が後を絶たず今も時々思い出しては悲しい気持ちになります。
もしも大切な猫が猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症してしまった場合は、”どうすることが猫の為なのか”ということを慎重に考えることが大切です。後悔の無いように、大切な猫と限られた猫生を幸せに暮らして下さい。