1.ペスト
人畜共通感染症(ズーノーシス)とは、猫などの動物から人という流れだけではなく、その逆の人から動物という感染経路も含む、人間と動物の両者がかかる感染症や病気のことです。世界でも古い歴史を持つ人畜共通感染症としてはペストが挙げられ、これは中世社会で大流行し多くの死者を出したとされていますが、実はもっと古い時代から存在していたとされ、すでに古代エジプトなどでは認知され、ミイラの肺と肝臓からもペストの菌が見つかっているそうです。
感染経路は
ペストはネズミの血を吸ったノミが人間を刺すことで引き起こされますが、ペストのより恐ろしいところは感染した人間の血を吸ったノミがまた、他のネズミを刺し、そのネズミについたノミがまた他の人をさして病気にさせるというように、動物→人→動物→人という風にどんどん広がっていくところです。
ほかにも、感染した人や動物の排せつ物から傷口や粘膜を介して感染したり、飛沫感染も考えられます。
ペストは死滅していない
ペストについては、現代ではほぼかかることはないように思えますが、完全に死滅したわけではなく、2012年にはアメリカのオレゴン州の男性がネズミを喉に詰まらせた飼い猫を助けようとして指を噛まれ、その後ペストに感染したということが実際にありました。そして命を落とした飼い猫も、後にペストに感染していたことが判明したのです。
このようにペストは現代においても存在し、人間の健康や猫の命を十分に脅かしかねない人畜共通感染症です。また、ペスト以外にも近年のMERSやSARSといった感染症も、宿主のコウモリを感染元とし、その後それ以外の動物→人間というふうに広まっていったとされる、人畜共通感染症であるとされています。
以上のように人畜共通感染症は非常に古くから存在している、人間と動物の両者を脅かす非常に恐ろしいものなのです。
2.結核
結核というと古い時代の日本で流行した病であり、今はそれほど脅威ではないように思えます。しかしながら近年では結核になる人は増加傾向にあり、何年か前には芸能人の方がこの病気にかかり、結核という感染症に再び注目が集まりました。
そしてこの結核は実は人間だけがかかる病気ではなく、動物もまた感染してしまう人畜共通感染症なのです。結核にかかる動物はサルなどの霊長類以外にも牛、馬、鹿、犬、猫など、非常にたくさんの種類が感染します。
2006年から2012年の間にイギリスでは結核に感染した猫が30頭近く報告されています。それ以上の数の猫が感染している可能性はあると報告されています。
https://www.theguardian.com/society/2014/mar/27/first-documented-cat-human-tb-infection
動物園で感染例が
以前に、動物園で結核にかかった人間から、サルや鹿がこの病気をうつされたということもあったようです。結核は空気感染の他、口を介して広がっていく経口感染でも広まっていきます。猫の場合はこれ以外にも屋外などでネズミなどを飼い主の知らないところで捕らえ、そのときに反撃を受けて噛まれたりすることで、結核菌をもらってしまうことがあるようです。
猫の感染症状
猫が結核になると全身の倦怠感、食欲の低下、体重減少、よだれ、発熱、首、喉元のリンパの腫れなどが見られ、人間のように肺に関連する症状が見られることが少ないそうです。このように結核は人間だけでなく猫もかかる可能性があり、最悪の場合はその命も奪いかねない恐ろしい感染症なのです。
予防対策
結核を予防するためには普段から人間、猫ともに免疫力を下げないことが大切であるとされますが、この病気が屋外で感染する可能性を含んでいることから、やはり以前から推奨されているように、飼い猫は完全室内飼いにすることが、猫の健康のためには望ましいことと言えるでしょう。
3.パルボウィルス
野良猫→人→飼い猫のような経路でうつる可能性のあるパルボウィルスは感染力が強く、短期間に多くの猫の命を奪う恐ろしい感染症として知られています。
感染経路は
このパルボウィルスは感染している猫の糞などに触ることでうつってしまうものです。では、糞に直接触らなければと思うかもしれませんが、野外で野良を触る場合、知らずに糞で汚染されている部分に触れてしまうということも十分あり得ます。
猫のパルボウイルスが人にうつり感染するわけではありませんが、人の手や靴・服などにパルボウイルスが付着して家の中に持ち込んでしまう可能性はあります。
感染力が強い
このパルボウィルスは非常にしぶとく、手洗いや消毒液を使っても死滅しない場合があり、飼い猫を飼っている場合は非常に危険です。もしも屋外で野良に触った場合、一度お風呂に入るなどして徹底的に洗い流すか、もしくは家猫が心配であるならば、できる限り野良猫には触らないというのがより安全と言える対策かもしれません。
また、パルボウイルス感染症は汎白血球減少症ともいわれ3種以上の混合ワクチンに入っています。猫が外に出ないからと予防接種をしないのは危険です。1年に1回、ワクチンを打つことで防げる病気です。しっかり予防してあげましょう。
まとめ
いかがでしたか?人間と猫も含む動物を脅かす人畜感染症には様々なものがありましたね。世間ではコロナウィルスが猛威をふるっており、少数の動物に感染したとの報告があります。(2020年3月28日現在)今後のコロナウイルスの動向は慎重にならざるを得ないところです。コロナウイルス以外にも心配な感染症はたくさんあります。
何事も心配し過ぎるのはよくありませんが、やはり一つの知識として知っておくことは必要なことかもしれません。