1.ニオイに惹かれる

飼い猫にとって、飼い主さんの匂いは、安心感を得られる大切な情報源です。スリッパには足の裏の汗や体臭など、飼い主さん特有の匂いがたっぷりと残っています。
嗅覚が非常に優れている猫にとって、その匂いは「見慣れた人」「信頼できる存在」を感じさせるようなもの。そのため猫は、スリッパの足を入れる部分に顔をうずめたり、頬や体をスリスリとこすりつけたりします。匂いを確認しながら安心し、自分の匂いを重ねて「ここは落ち着ける場所」と認識している行動といえるでしょう。
2.居心地の良さ

猫は、体を丸めてぴったり収まるような「狭い場所」を好む習性があります。これは、外敵から身を守りやすく、安心して休めるという野生時代の本能からくるものです。
スリッパは、そんな条件がそろっているアイテム。足を入れる部分は程よく囲まれており、猫の顔が入りやすいサイズ。さらに、素材が柔らかいものが多く、床の冷たさや硬さを和らげてくれる点も、猫にとっては魅力的でしょう。
人間から見ると違和感があるポーズですが、猫にとってスリッパは簡易ベッドのような役割を果たしていることも少なくありません。とくに、ちょっとした隙間が好きな猫ほど、スリッパの“ほどよい窮屈さ”に強く惹かれる傾向があるでしょう。
3.テリトリー意識

飼い主さんの匂いを自分にこすりつけるという理由を先述しましたが、逆に、自分の匂いをスリッパにこすりつけるという考えもあります。
猫は、自分の匂いをつけることで安心感を得る動物です。頬や体をこすりつける「スリスリ行動」には、縄張りを示すためのフェロモンを付着させる意味があります。
スリッパは、飼い主さんが毎日使うアイテムです。そのため猫にとっては、「飼い主さんの足」のような認識で、スリッパに自分の匂いを重ねることもあるでしょう。「スリッパ=飼い主さんの足」は、自分のテリトリーの一部と主張するという行動で、特に多頭飼の家で見られやすいかもしれません。
また来客があった後など、環境に変化があるとスリッパへの執着が強まることもあります。これは、不安を感じたときに自分の匂いを付け直し、安心できる空間を確保しようとする猫なりの行動といえるでしょう。
4. 遊び心・狩猟本能

猫はもともと狩りをする動物であり、遊びの中にも狩猟本能が色濃く表れます。したがって、人間から見たらただのスリッパでも、猫にとっては魅力的な対象。歩くたびに位置が変わり、床の上で引きずられるスリッパは、猫の目には獲物のように映ることがあるのです。
また、ひらひらと動く装飾や、噛みごたえのある縁・中敷きの感触も、猫の好奇心を刺激します。
その結果、スリッパを「蹴りぐるみ」のようにして遊ぶ猫もいます。前足で押さえつけたり、噛みついたり、中に前足や顔を突っ込んだりする行動が見られます。これはスリッパを「安心できる匂いのある遊び道具」として認識している状態です。
とくに、若い猫や運動量が多い猫ほど、スリッパを狩りの練習相手のように扱う傾向があるので、スリッパをおもちゃにされてしまっても怒らないようにしましょう。
まとめ

猫がスリッパを好むのは、決して「汚いものが好きだから」ではありません。そこには、飼い主さんの匂いによる安心感、体にフィットする居心地の良さ、遊び心や狩猟本能など、猫ならではの理由が重なっています。
また、看板猫がいるお店のSNSに、玄関先に並んだたくさんのスリッパの上に乗ったり、穴に顔を入れたりしている猫たちの姿がアップされ話題を呼んだことがあります。
中には「お客様のためにスリッパをあたためている!」と、写真を楽しむ人もいますが、これも猫にとっては安心を得るための行為かもしれませんね。
スリッパにくっつく姿は、飼い主さんだけでなく第三者の猫好きさんが見ても癒されるものです。そして、猫たちが人間を信頼している証でもあります。そんな愛猫の気持ちを、少しだけ温かく受け止めてみてください。