猫が『ビニール袋をかじる』理由5つ 油断できない事故のリスクや予防策まで解説

猫が『ビニール袋をかじる』理由5つ 油断できない事故のリスクや予防策まで解説

猫が大好きなビニール袋ですが、飛び込んだり、前足でカサカサと遊んだりしているうちにかじってしまうことがあります。万が一、誤飲してしまうと腸閉塞など、命に関わる危険が潜んでいます。なぜ猫はビニール袋をかじるのでしょうか。今回はその理由と予防策までご紹介します。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

猫がビニール袋をかじる5つの理由

袋で遊ぶ猫

猫がビニール袋を気に入ってしまうのは、本能的な行動から健康上の問題までいろいろな要因があります。

ここでは代表的な5つの理由を、多くの猫に当てはまる一般的なものから、注意が必要なケースまで順番に解説します。

1.音や感触が狩猟本能を刺激する

ビニール袋のカサカサという音は、落ち葉や草むらを獲物が動く音に似ていることから猫の狩猟本能を刺激します。また、ふわふわした動きも猫の好奇心を駆り立てます。

遊んでいるうちにエスカレートして噛んでしまうことはよくあります。中でも、最も危険なのが、ビニール袋の破片を飲み込んでしまうことです。ビニールは消化されないため、胃や腸に詰まって腸閉塞を引き起こす可能性があります。

腸閉塞になると、立て続けに嘔吐を繰り返し、便秘やひどい下痢の症状がみられます。食欲は落ち、腹痛からうずくまって動かないこともあります。腸閉塞は最悪の場合は命に関わり、誤飲がわかれば緊急手術が必要になるケースも。

2.食べ物のニオイに惹かれている

最近ではエコバッグを使う方も増えていますが、スーパーの買い物袋も猫は大好きです。

買い物で持ち帰った魚や肉、お惣菜などの油分や調味料の味は、好奇心旺盛な猫、あるいはお腹のすいた猫には興味を引く要因となります。これらの食べ物のニオイがきっかけでビニール袋にかじりついてしまう可能性もあります。

もし飼い主さんが見ていないところで猫がおいしいニオイに釣られてビニール袋に手を出してしまったら、中の食材とビニール袋を誤飲してしまうことも考えられます。

3.退屈やストレス解消

運動不足や刺激が少ない環境で過ごしている猫は、カサカサ音や感触に興味を向けてしまい、退屈しのぎにビニール袋で遊ぶことがあります。イライラした人間が爪を噛むように、猫も退屈や不安を感じると何かをかじる「転嫁行動」でストレスを発散しようとします。

成猫になって遊びが落ち着くと、飼い主としては「留守番させられる」安心感が生まれる一方、離れる時間が増えることからコミュニケーション不足が生じることもあります。もし過去にビニールをかじったときに飼い主が駆け寄ってきた経験があれば、猫はその経験から、わざと注目を得るために同じ行動を繰り返すことがあります。

ビニール袋に噛みついて、前足でおさえて引っ張るという噛み心地の楽しい刺激から、猫はつい続けてしまうでしょう。しかし、遊んでいて首に袋がかかり、窒息する事故も発生しています。

4.口腔内の違和感や不快感

歯のむずがゆさや、歯肉炎や口内炎などの口腔トラブルがあるとき、不快感をまぎらわすためにビニール袋を噛むことがあります。

また、子猫は歯の生え変わり時期のかゆみを和らげたくて、ビニール袋をクチャクチャ噛むこともあります。人間が歯に違和感があるときに、無意識に何かを噛みたくなるのと似た行動です。

このような理由でビニール袋をかじる猫では、口臭や歯肉の炎症があることがあります。もし頻繁にかじる場合は、獣医師に口腔内をチェックしてもらうことが大切です。

5.異食症の可能性も

「異食症」という言葉をご存じでしょうか。ビニール袋や布類、毛糸、ゴム、段ボールなど、食べ物以外のものをしゃぶったり噛んだりする行動を指し、その中には布や毛糸を噛む「ウールサッキング」も含まれます。

異食症になる理由には、特定の猫種による遺伝や母親と幼少期の影響、栄養不足や認知機能の問題などがあるといわれています。

ビニール袋をはじめとした異食行動が続くと、誤飲による腸閉塞など命に関わる危険もあるため、もし気づいたら、できるだけ早く異食症への対処が必要です。

まずは環境の整備が基本ですが、栄養面や健康状態に不安がある場合は、獣医師による食事の見直しや健康チェックも重要です。

ビニール袋かじりの効果的な予防策

キッカーを噛む猫

ビニール袋をかじらせないようにするには、なんといっても猫の手の届かない場所に保管することが基本かつ最も効果的です。ビニール袋は、キッチンでよく使われるものですが、引き出しや戸棚の中など、猫が開けられない場所に置きましょう。ゴミ箱も蓋付きのものを使用すると安心です。

もともといろんなものをかじりたがる猫には、安全な代替品を与えましょう。デンタルケア用おもちゃは、噛むようにできているので、耐久性もさることながら歯磨き効果も期待できて一石二鳥です。

ただし、異食症が疑われる場合、様子を見ているうちに誤飲があると危険ですので、まずは獣医師に相談してください。食物繊維が豊富なフードや猫草が改善につながることもありますが、あくまでも適度な範囲に留めておくことが大切です。

ふだんは猫が退屈していても、なかなか気づきにくいものです。ビニール袋だけでなく、運動不足の解消もかねて、一日に10〜15分ほど遊んであげる習慣を持つとよいでしょう。

まとめ

ビニール袋に入る子猫

猫がビニール袋をかじる理由は様々ですが、ほんの少しであっても消化されないビニールは腸閉塞や窒息など、命に関わる危険が潜んでいることを覚えておきましょう。

予防の基本は、ビニール袋を猫の手の届かない場所にしっかりと保管することですが、万が一、飲み込んだことが判明した場合には、様子を見ようとせずに、すぐに動物病院に連れて行きましょう。自宅で無理に吐かせたり、診察前に食べ物や水を与えたりするのは避けてください。また、自己判断で下剤などを飲ませて押し出そうとすることも非常に危険です。

もし愛猫がビニール袋をかじる行動を繰り返す場合は、単なるクセとして片付けずに必要に応じて獣医師に相談しましょう。適切な対処をすることで、愛猫の安全と健康が守れます。

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