1.ただ黙ってそばにいる

愛猫を亡くした人は、どうしようもない悲しみに襲われています。自分の気持ちをうまく言語化できずに、あふれる感情を抑え込もうと必死です。ショックのあまり、心が不安定になって、食欲が失せ、無気力状態に陥ってしまう人さえいます。
精神的に追い詰められた飼い主さんに、「クヨクヨしてもしょうがない。前向きに生きよう!」と声を掛けても、まったく意味がありません。場合によっては、激怒され、信用を失うこともあります。
ペットロスで打ちひしがれる飼い主さんにいちばん必要なのは、信頼できる人がそばにいてくれることです。
孤独感に襲われた飼い主さんは、相手が黙って寄り添ってくれるだけで、「一人じゃないんだ…」と心強さを感じます。
そう思ってもらえると、次に、説明のつかない自分の気持ちを言葉で表現してくれるようになるかもしれません。
2.相手の話をありのまま受け止める

相手が少しずつ率直な感情を表に出せるようになったら、ひたすら耳を傾けてあげてください。「傾聴」と言って、グリーフケア(悲嘆に寄り添う)の基本的な方法です。
亡くなった愛猫のちょっとした思い出やお世話上のいまだに引きずる後悔など、楽しいものから自責の念に駆られてしまうことまで、あふれるように話してくれるかもしれません。
傾聴のポイントは、自分の価値観で判断せず、相手のありのままの言葉を受け止めてあげることです。適度なタイミングで「うんうん」と相槌を打つと、「話をちゃんと聞いてくれる…」と感じ、相手も安心できます。
混乱した気持ちを言葉で整理できるようになると、パニックに陥った精神状態もいくらか収まり、ゆっくりと回復方向に向かうかもしれません。
どんな些細な出来事であれ、愛猫にまつわる記憶は、かじり癖でボロボロになったブランケットのように、飼い主さんにとっては大切なものです。
そばにいる人は、決してそのことを忘れないようにしましょう。
3.適切な言葉をかける

傾聴を続けるなかで、相手の態度にゆとりが生まれてくると、今度は、言葉をかけるタイミングが出てきます。
ここで重要になるのは、どんな言葉をかけるべきか、という問題です。
ある程度感情が落ち着いたとは言え、飼い主さんの悲しみはまだまだ癒えていません。選ぶ言葉は、相手の立場に寄り添っていることが大前提です。
受け止める人によって個人差はありますが、一般的には次のような声掛けがふさわしいとされています。
「あなただから楽しく長生きできたんだよ」
「あなたを選んであの子も幸せだったはずだよ」
「素敵な思い出をいっぱい作ってくれて、すごい子だったね」
「泣けるだけ泣いていいよ。ずっとそばにいるから」
反対に、相手の立場を考えずに自分の物差しで語る言葉は、たとえ善意であれ、心のかさぶたをひき剥がしてしまうだけです。
一例としては、冒頭でも述べた「前向きに生きなきゃ!」をはじめ、「いい加減に元気出せよ」、「あなた好みの子猫がペットショップにいたよ」、「たかが猫のことで落ち込んでどうするんだ」、「違う病院を選んだほうが良かったんじゃない?」などが挙げられます。
ペットロスで落ち込んでいる人にとっては、「残念だったね」という何気ない悔やみの言葉にすら、決して他人と共有できない己の悲しみの深さを思い知らされ、二重に傷ついてしまいます。
ただそばに寄り添い、相手の話に耳を傾け、必要なタイミングで適切な言葉をかける―できるようでなかなかできない、そんなシンプルな対応こそが、家族同然の愛猫を失った人のささやかな後押しになります。
まとめ

今回は、ペットロスで苦しむ飼い主さんに対して、まわりの人たちはどんなふうに対応すれば良いのか、3つの方法を紹介しました。
「いっしょにいてあげる」、「聞き上手になる」、「相手の気持ちに寄り添った言葉をかける」、この3つは、悲しみの底から立ち上がるために欠かせない、非常に重要なプロセスです。
愛猫を失うと、あまりの悲しみに簡単には立ち直れません。再び日常を取り戻す過程で大事なのは、そばにいる人たちのさりげないサポートです。
もしみなさんの身近に、ペットロスで日常生活もままならなくなった飼い主さんがいたら、まずは、ただ寄り添うことから始めてみてください。