1.毛球症のリスク

1つ目のリスクは、「毛球症」です。
毛球症とは、毛づくろい時に飲み込んだ猫の被毛が、胃や腸内で絡まり塊(毛球)になって、消化器系のトラブルを引き起こす病気のことです。
通常、飲み込んだ抜け毛は、吐き戻しや糞便といっしょに排出されます。ところが、毛づくろいの頻度が増えると処理が追いつきません。被毛の質や毛づくろいの頻度によって体内で毛糸玉のような状態で溜まり続けた結果、嘔吐や食欲不振、便秘などの症状が表れます。
症状が軽度の場合は毛球除去剤の服用で治療できますが、重度になると開腹手術が必要です。また、最悪のケースでは、腸閉塞から腹膜炎を発症し、命の危険に関わってくることもあります。
飼い主さんが定期的にブラッシングすると、毛づくろい時に飲み込む抜け毛の量を減らせ、愛猫の身体の負担も軽減できます。それこそが、ブラッシングの最大のメリットです。
特に、毛づくろいの増える換毛期(3月、11月)、長毛種猫、ストレスで過剰なグルーミング癖のある猫は、毛球症のリスクが高いと言えます。愛猫の健康のためにも、飼い主さんは、日々のブラッシングで毛球症予防に努めましょう。
2.皮膚炎のリスク

2つ目は、「皮膚炎」のリスクです。
猫は起きている間の5分の1ほどの時間を毛づくろいに費やします。非常に重要なルーティンなのですが、シニア猫を迎えると、肥満や関節炎などから、毛づくろいの回数が減りやすくなります。
毛づくろいが満足にできないと、やがて、被毛のアンダーコート(柔らかい毛)に皮脂が溜まり、毛玉(フェルト状)の原因になってしまいます。
ブラッシングもせずにその状態を放置すれば、皮膚の通気性が悪化し、炎症や細菌感染、皮膚炎などにつながります。
シニア猫に限らず健康的な若い猫でも、同じように、毛玉が発生することもあるので、飼い主さんは油断できません。
ブラッシングを習慣化すると、毛玉の発生を未然に防ぎ、皮膚を健やかなまま維持できます。同時に、猫は毛玉の部分に不快感を覚えやすいため、精神的なストレスも軽くなります。
3.病気のサインをスルーしてしまうリスク

ブラッシングは、広い意味で言うと、スキンシップのひとつであり、飼い主さんと愛猫をつなぐコミュニケーションの手段です。ブラッシングしながら、愛猫の身体に触れていると、腫れやしこり、痛がる箇所など、体調異変に気づきやすくなります。
たとえば、加齢により毛づくろいの回数が減り、なおかつ、ブラッシング習慣(もしくは、スキンシップ)がない場合、気づかないうちに、何らかの病気が愛猫の身体で進行している可能性もあります。
毛ヅヤの良さは、見た目の美しさだけでなく、健康のバロメーターです。
「ブラッシング」がうまくいくコツとは?

いくらブラッシングに効果があっても、すべての猫が気軽に受け入れてくれるわけではありません。なかには、本能的に嫌がる子もいます。以下、簡単にブラッシングの手順を提示するので、これからのヒントにしてみてください。
- まず、ブラシの存在自体に慣れてもらう(かじったり、遊んだりしてもOK)
- 日頃から撫でやすいところを起点に始める(例、背中からお尻にかけて)
- タッチはやさしく、毛並みに沿ってが基本
- 慣れてきたら、毛玉のできやすい箇所(お腹や脇、内ももなど)まで範囲を広げる
ブラッシング時には、「嫌がったらすぐにやめる」を徹底することが肝心です。不快感を示すサインとしては、「ソワソワし始める」、「しっぽをパタパタ振る」などが挙げられます。
飼い主さんのブラッシングが上手になると、毛球症や皮膚炎の予防、病気の早期発見につながり、愛猫との親密度も向上します。日頃の習慣として心がけてみてください。
いきなりステップアップさせる必要はありません。徐々に慣らしていきましょう。
まとめ

愛猫のブラッシングには、毛球症や皮膚炎のリスクを回避し、病気の早期発見に気づきやすくなるメリットがあります。もちろん、被毛の健康を保つ効果も抜群です。
本文でも触れたように、ブラッシング時に不機嫌なサインが表われたら、ただちにやめるようにしてください。構わず続けていると、ブラッシングが大の苦手になってしまいます。
スキンシップだけでなく、ブラッシングに関しても、コミュニケーションの一環として取り組むと、愛猫の健康維持、ストレス解消にも役立つはずです。