1.単なる好奇心から

1つ目の理由は、単なる好奇心から、です。
猫は基本的に好奇心旺盛な動物で、気になったものがあると、ちょいちょいと前脚で触ったり、匂いを嗅いだり、実際に口に入れたりします。特に子猫や若くて元気な猫ほど、その傾向が強くなりがちです。
たとえば、紙系の猫砂からおから製のものに替えると、匂いの違いに興味を惹かれ、調査がてら食べてしまうこともあります。同時に、トイレ自体を遊び場として認識しているケースも、イタズラや遊びの延長線上で誤食しやすくなります。
仮に猫砂を少量でも食べてしまい、体内に取り込んでしまうと、消化器系トラブルなどの悪影響を及ぼす危険性があります。とりわけ、ベントナイトなどの鉱物系の猫砂は、胃や腸内で固まりやすく、腸閉塞を引き起こす原因にもなりかねません。
誤食対策としては、間違って口にしても、消化しやすく安全性の高いおから製などの猫砂へ切り替えるのがベストです。万が一、大量に猫砂を食べた場合は、ただちに動物病院へ連れていってあげてください。
2. 環境の変化によるストレス反応

猫は環境の変化にとても敏感です。些細な例で言うと、食器の変更や部屋の模様替えなどでも異変を感じ、いつもと違った反応を示すことがあります。
そのなかでも、猫に最も深刻な影響を与えるのが、引越しや新入り猫が加わることです。
住み慣れたおうちを離れることは、猫にとって、自分の縄張りを手放すようなもので、非常にストレスがかかります。同居猫が増えることも同様です。
新居移転後、愛猫が猫砂を食べるようになったのは、ガラッと変わった環境に対応できず、ストレスを溜め込んだせいかもしれません。猫は、不安状態に陥ると、気持ちを静めるために、目の前のモノをもてあそんだり、口に入れたりします(転位行動)。
猫が大事にするのは「いつもと変わらないこと」であり、安心感はそこから育まれます。
引越しのストレス対策には、「トイレを新調せず以前のものを使う」、「自分の匂いの染み付いた愛用の猫ベッドを隠れ家として置く」、「新しい環境の中でも落ち着いて自分だけで過ごせる空間をつくってあげること」などを試してみてください。ポイントは、環境が変わっても、愛猫にとって大切なものは変えないや安心して落ち着ける空間を作ることことです。
ちなみに、猫の問題行動には、猫砂の誤食以外に、過剰な毛づくろい、ところ構わずの爪研ぎ、粗相、夜鳴きなどがあります。
3.栄養が足りていないから

3つ目の理由は、足りない栄養素を補いたいから、です。
毎食、適量の総合栄養食を食べているなら、栄養的には何の問題もありません。ただ、極端に安価なキャットフードを使っていたり、愛猫に偏食傾向があったりすると、ミネラルやビタミンなど、必要な栄養を摂取できていない恐れもあります。
一例を挙げれば、鉱物系の猫砂には微量のミネラルが含まれていて、不足分を補うため、猫が食べてしまうことも十分にあり得ます(異食症)。前述したように、鉱物系の猫砂は、お腹のなかの水分を吸って固まる性質があるので、非常に危険です。
また、異食の背景には、寄生虫感染や内臓疾患、糖尿病、甲状腺機能亢進症といった病気が隠れていることもあります。これらの可能性が疑われる場合は、すぐにかかりつけの動物病院を受診してみてください。
異食(猫砂)による愛猫の健康リスクを避けるには、総合栄養食を中心に、栄養バランスの整った食事が欠かせません。あわせて適量の水分摂取(体重1kgにつき50~60ml程度)を心がけると、よりいっそうの健康維持につながります。
まとめ

猫が猫砂を食べる行為は、いわゆる「異食」と呼ばれます。今回は、その理由として、「好奇心」、「ストレス反応」、「栄養不足や病気の可能性」、3つのポイントを解説しました。
おから製の猫砂は食べても最小限の影響で済みますが、鉱物系の猫砂は消化器系トラブル、最悪の場合、腸閉塞にもつながるので、十分に注意してください。
猫の好奇心を満たし、ストレスを減らすには、日頃のおもちゃ遊びやスキンシップが不可欠です。食事は栄養面に気をつけて、愛猫の好みやライフステージに合わせたフードを選ぶようにしましょう。