猫の『ガン』リスクを高めてしまう原因4つ 発症を防ぐための予防法も解説

猫の『ガン』リスクを高めてしまう原因4つ 発症を防ぐための予防法も解説

猫のガン発症リスクを高める主な要因を、具体的な生活環境や遺伝、病歴の観点から解説していきます。見落としがちな危険因子や、日常生活で飼い主ができる予防法についてまとめました。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

猫の「ガン」リスクを高める4つの原因

猫とタバコを吸う人

1.環境と生活習慣

環境中の有害物質への継続的な暴露は、猫のガン発症リスクを大きく高める要因です。特に受動喫煙(タバコの煙)は、猫のリンパ腫や口腔内の扁平上皮癌の発症と関連が深く、飼い主の喫煙習慣が直接的な健康被害につながり得るという説もあります。

また、特定の農薬、殺虫剤、家庭用洗剤などの化学物質も、猫がグルーミングを通じて体内に取り込むことで、発がんリスクを上昇させる可能性があることが指摘されているようです。

さらに、紫外線への過度な暴露は、特に耳や鼻といった被毛の少ない部位に「皮膚癌(扁平上皮癌)」を引き起こす原因となり得ます。

室内環境を清潔に保ち、有害物質を排除することも愛猫の健康を守ることにつながるでしょう。

2.年齢と品種

高齢化は、猫がガンを発症する最大の要因です。7歳以上のシニア期に入ると免疫力の低下と相まって、ガン細胞の増殖リスクが飛躍的に高まります。若齢の猫にもみられる腫瘍もありますが悪性でないこともあり、中高齢の猫で、がんと呼ばれる悪性の腫瘍の発症率が急増します。

また、猫種によっても特定のガンのリスクが異なり、例えばシャム猫は乳腺腫瘍のリスクが高いという説があるなど、猫種によってなりやすい腫瘍の種類がある場合もあります。

メインクーンは肥大型心筋症が有名ですが、特定のリンパ腫や肉腫の好発傾向があるとする報告もあります。

遺伝的要因は変えられませんが、品種ごとの好発疾患を把握し、早期から注意深い健康管理を行うことが、発症リスクを抑える上で重要となるでしょう。

3.既往歴・感染症

過去にかかった病気や特定のウイルス感染症は、猫のガン発症リスクに直結します。最も関連が深いのは、猫白血病ウイルス(FeLV)と猫免疫不全ウイルス(FIV)の感染です。

特にFeLV感染は、リンパ腫や白血病といった造血器系腫瘍の主要な原因となります。これらのウイルスは免疫細胞に感染し、細胞の異常な増殖を引き起こすため、ガンを発症する可能性が非感染猫に比べて大幅に高まると言われているようです。

また、慢性的な炎症が続く状態もガンの温床となり得るため、例えば「炎症性腸疾患(IBD)」の猫は、消化管型リンパ腫を発症するリスクが高まります。

感染症や慢性疾患の適切な治療と管理は、間接的なガン予防策として極めて重要だと言えるでしょう。

4.ホルモンと不妊手術

性ホルモンの存在は、特定のガン、特に乳腺腫瘍のリスクに大きく関与しています。猫の乳腺腫瘍は悪性度が高いケースが多く、未避妊のメス猫が発症するリスクは、若齢で避妊手術を受けた猫と比較して、約7倍高いとされています。

これは、乳腺組織が卵巣から分泌される性ホルモンの影響を受けて異常増殖しやすくなるためです。最初の発情が来る前に避妊手術を行うことで、このリスクを劇的に下げることができます。

不妊手術は望まない繁殖を防ぐだけでなく、ホルモン関連のガン予防において極めて効果的な手段です。

見逃してはいけない「ガン」のサイン

猫をなでる手

猫のガンは進行が速いことが多いため、早期の異常に気付くことが生存率に大きく関わります。

特に見逃してはいけないサインは、体表にしこりや膨らみが見られることです。良性か悪性かを問わず、新しいしこりを見つけたらすぐに獣医師の診察を受けてください。

また、食欲不振や継続的な体重減少は、ガンの全身的な影響を示す重要なサインです。その他にも、慢性の嘔吐や下痢、排泄時の異常(血尿、排便困難)、口臭の悪化や口からの出血、手足を引きずる・跛行(特定の骨や関節のガン)、そして治りにくい傷や皮膚の潰瘍なども注意が必要です。

日々のスキンシップを通じて、愛猫の全身を優しく触り、わずかな体調や外見の変化も見逃さないボディチェックを習慣化することが、早期発見の鍵となります。

猫の「ガン」の発症を防ぐための予防方法

検査を受ける猫

猫のガン発症を完全に防ぐことはできませんが、関係し得ると言われているリスク要因を積極的に排除し、免疫力を高め全身状態をより良くすることで予防効果を高めることは可能です。

乳腺腫瘍のリスクを大幅に減らすため、獣医師と相談の上、適切な時期に不妊手術を行うことも必須の予防法です。

どんな猫でもがんになり得るため、早期発見ができるよう、こまめな健康診断を行い、健康により良いとされることを生活に取り込むことが一番の予防策と言えるでしょう。

食事管理においては、肥満を避けるための適正体重の維持と、抗酸化作用のある成分を含むバランスの取れた高品質のフードを与えることが推奨されます。

さらに、FeLVやFIVなどの感染症のリスクを抑えるための適切なワクチン接種と検査を行い、慢性炎症の要因となる病気があれば早期に治療することが大切です。

年に一度以上の定期的な健康診断は、自覚症状が現れる前の段階でガンを発見するために不可欠な予防行動なので必ず行いましょう。

まとめ

猫を抱きしめる女性

猫のガン発症リスクは、年齢、遺伝、ウイルス感染、そして飼い主の提供する環境と生活習慣が複雑に絡み合って形成されます。

愛猫の命を守るためには、若齢時の不妊手術や感染症の予防といった医学的な対策に加え、全身状態を健康に保つよう心がけた生活を送ることが重要です。

日々の丁寧なボディチェックと定期的な獣医師の健診を組み合わせることで、発症リスクを抑え、万が一の場合でも早期発見につなげることが、飼い主ができる最大の予防であり愛情表現となります。

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