1.ワクワク感でいっぱい

猫の「正座」とは、上体を起こしたまま、前脚を行儀よくそろえて座る姿勢のことです。犬のお座りによく似ていますが、かわいいおみ足を団子のようにきちんと並べている点が少し違います。
まず、猫の「正座」の意味としては、ゴハンやおもちゃ遊びなど、愛猫お待ちかねの恒例イベントが始まる前の期待感があります。人間のセリフで言えば、「楽しみだなぁ…ワクワクする!」といったところです。
たとえば、ゴハンの時間になると、真っ先に食いしん坊の愛猫が駆けつけてきて、飼い主さんの前で正座して待ち構えます。
高まるばかりの荒々しい食欲とは対照的に、あくまで礼儀正しい姿勢を貫く―このギャップに、思わず「キュン」となる飼い主さんも多いはずです。
あまりに愛猫の「正座」に見入っていると、「早くしろよ、コノヤロー!」と突如、凶暴化して、催促の猫パンチが飛んでくるかもしれません。
愛猫の期待を裏切らないように、飼い主さんは早急にゴハンの準備を整えてあげてください。
2.ちょっと緊張気味

もし愛猫が正座時にしっぽを自分の身体に巻きつけていたら、やや緊張している可能性があります。俗にいう「しっぽマフラー」と呼ばれる行動です。
「しっぽマフラー」の背景には、周囲へのちょっとした警戒心が働いています。
「すぐに逃げ出すほどの緊急性はないが、念のために用心だけはしておこう…」という感じでしょうか。
一説によると、大切なしっぽを誰かに踏まれないように、安全な場所に収納している、とも考えられています。
ちなみに、「しっぽマフラー」には、寒さをしのぐためのマフラー代わり、リラックスのサインといったバリエーションも存在します。
「しっぽマフラー」の違いを正確に判断できれば、飼い主さんとしてレベルアップした証拠かもしれません。
3.いつでも動けるように観察も兼ねている

最後の3つ目は、注意深く状況を観察している、です。
よく見ればわかる通り、猫の「正座」は、リラックス状態を示す「香箱座り」と違って、気が向いたらいつでも移動できる姿勢です。
たとえば、正座しているとき、「あれは何だ?」というように、猫が首を傾げることがあります。その視線の先には、光を浴びて部屋のホコリがキラッと光っていたり、壁をチャバネ色の秘密工作員が這っていたり。いずれにしても、愛猫には興味深い現象です。
もしベランダの向こうで、忙し気に動くスズメを見つけたら、おそらく、愛猫はスイッチが切り替わったかのように、「正座」を投げ出して、「狩人」と化すはずです。
猫の「正座」で重要なのは、すぐに動き出せるところです。上体を起こしていれば、良好な視界も確保できます。そろえた前脚は、一歩踏み出すときも手間がかかりません。どんなことが起こるかわからないかつての野生時代にあっては、欠かせない「作法」です。
そう考えてみると、猫の「正座」とは、その折り目正しい佇まいとは裏腹に、もともとハンターである「野性」がいまだに残っている表れ、と言えます。
まとめ

本文でも紹介したように、猫の「正座」には、「期待感」、「ちょっと緊張気味」、「観察待機中」、3つの理由があります。
ポイントは、「正座」でいると前脚をすぐに動かせるので、次の行動に出やすいことです。その点は、前脚を身体の下に収納する「香箱座り」とは少し違います。
猫は言葉を話す代わりに、行動やしっぽの動き、鳴き声などで、自分の気持ちを表します。その様子を正確に、かつ柔軟に識別できるようになると、愛猫とのコミュニケーションも今まで以上にスムーズになるはずです。