猫がなかなか懐かない理由

約1万年前から人と一緒に暮らし始めた猫ですが、その間も猫は野生で暮らしていた時の習性を失わずにずっと引き継ぎながら現在のイエネコになりました。そのため、いまだに猫の身体能力や習性、性格には、野生動物としての特徴がいくつも備わっています。
そうした特徴の中の一つが、警戒心の強さです。精度の高い聴覚や嗅覚、そして薄暗がりの中でも素早く動くものがよく見える視覚などで捉えたわずかな刺激に対し、俊敏な瞬発力と集中力で逃げたり隠れたり、時には反撃したりして身の安全を確保しています。
猫の警戒心を高めたり不安を引き起こしたりするような接し方を避けることで、なかなか懐かなかった猫が、飼い主さんを家族と認め、信頼して懐いてくれるようになることでしょう。
愛猫との絆を深めるために取り入れたいこと

1.猫優先主義で自分の気持ちは抑えよう
家に迎え入れたばかりの猫は、当然飼い主さんやご家族を強く警戒しています。そのような猫に対して、早く仲良くなろうとして積極的に猫に近づいていく行動は、より猫の警戒心を高めてしまうため逆効果です。
飼い主さんへの警戒心が解けていない猫と接する時には、決して飼い主さんのペースではなく、猫のペースを優先して距離を縮めていくことが大切です。
2.まずは「無害な人」と覚えてもらおう
猫の強い警戒心を解く鍵は、「無害な人」だと思われることです。何をするか分からないと思われるから、警戒されるのです。しかし「この人がそばにいても自分に関心がないので何もしない」と思えば、その警戒心もやがては解けるでしょう。
まずは、「この人は無害だ」と覚えてもらいましょう。必要最低限のケア以外は、無理にかまわず静かに見守るようにしましょう。また猫は、相手を主に嗅覚で認識します。猫が近づいてきたら、指先を猫の鼻先にそっと差し出してニオイを嗅がせ、覚えてもらうことも併せて行いましょう。
3.「この人がいるといいことがある」という印象に変えていく
「無害な人」だと認識されたら、次の段階に進みましょう。「この人がいるといいことがある」という印象に変えていくのです。猫が自分から近づいてきたら、優しく声をかけながら気持ち良いと感じる部位を優しく撫でたり、おもちゃで遊んだりしてみましょう。
ただし、大前提として食事やトイレ掃除、寝心地の良い寝床を整えるなどの日常ケアをしっかり行うことを忘れないでください。また、しつこくしないこと、離れている時でもいつも気にかけることを忘れないようにしましょう。
4.怖がることや嫌がることは極力やらない
どんな時でも大切なのが、猫が怖がったり嫌がったりすることはやらないことです。爪切りなどのどうしてもやらなければならないのに猫が嫌がるケアをする場合は、1日片足のみにするなどで作業を分割し、1度の作業時間を短くしましょう。
また、嫌なケアを我慢した後にはご褒美として大好きなおやつをあげるといったことを組み合わせれば、嫌なケアも好きなケアに変えていくことができます。
心の距離を縮めるための接し方のコツ

声のトーンや話し方
猫に心地よく聞こえる声のトーンや話し方を意識しましょう。猫が好むのは、大きすぎない声量で少し高めのトーン、優しくて穏やかな話し方です。低い声は自分よりも体の大きな天敵となる動物の声を想起させるのか、怖がる傾向があります。
また怒鳴り声などの激した感情が伴った言動も、猫に強い脅威を与えます。猫が飼い主さんを困らせるような行動をした場合でも、感情に任せて怒鳴りつけてはいけません。褒めることで好ましい行動を引き出させる「陽性強化」など、最新のトレーニング方法を使ったしつけを行いましょう。
突発的な行動は控える
猫は、自分の縄張りの中で日々同じようなルーティーンを繰り返すような暮らし方を好みます。そのため、突発的な出来事への対応が苦手です。幼い子どもを苦手とする猫が多いのは、子どもは気まぐれで突発的な行動を頻繁に起こすからです。
愛猫との心の距離を縮めたければ、突発的な行動を極力控え、できるだけルーティーンに則った暮らし方を心がけると良いでしょう。
まとめ

自然な振る舞いが猫に心地よく、すぐに心の距離を縮められる飼い主さんもいれば、猫と仲良くなろうと努力してもなかなか心を開いてもらえない飼い主さんもいます。愛猫との絆を深めるために取り入れると良い行動として、下記をご紹介しました。
- 猫を優先し、自分の気持ちは抑える
- まずは「無害な人」と覚えてもらう
- 「この人といるといいことがある」という印象に変えていく
- 怖がることや嫌がることは極力やらない
また心の距離を縮めるためには、声のトーンや話し方を意識したり、突発的な行動を抑えることが大切だということもご紹介しました。
これらのことを一つ一つ意識するのは、大変だと思われるかもしれません。その場合は、「穏やかな老人の言動を真似よう」と考えてみてください。自然と相手の気持ちを尊重し、穏やかでゆっくりとした言動へと変わっていくはずです。