1.ますます病院嫌いになってしまう

多くの猫が動物病院を目の敵にしています。健康のためにも、喜んで愛猫に受診してもらいたいところですが、相手はツワモノ、簡単には事が進みません。
逃げる、隠れる、立て籠もる、など一時的な反抗期に陥ります。
そんなときに非常に重宝するのが、お気に入りのおやつです。おやつで気を引けば格段にキャリーに入ってもらいやすくなります。病院嫌いの愛猫を抱える飼い主さんにとっては、強力なアイテムでしょう。
うまくいけばいいのですが、下手すれば、おやつ=動物病院、という負の記憶が結びつく恐れもあります。猫は、イヤな出来事を関連付けて覚える動物です。次回のチャレンジでは、おやつを見ただけで逃亡してしまうかもしれません。
結果的に、おやつという便宜的な「ウソ」が、愛猫の病院嫌いにますます拍車をかけてしまいます。
2.いよいよ爪切り嫌いになる

猫にとって苦手なイベントは、病院通いだけではありません。爪切りをはじめ、歯磨き、シャンプーなど、猫それぞれに存在します。
たとえば、飼い主さんがストレートに爪切りを申し出ても、愛猫から即座に却下されることがほとんどです。
「どうやったら、爪切りしてもらえるのか?」と飼い主さんはさんざん悩みつつ、最終的には、やはり、おやつに手を染めてしまいます。
愛猫の身体を「確保」すべく、おやつを誘い水にして、近寄って来るのを待ちます。迫りくる爪切りの恐怖を感じ、いったんは物陰に避難した愛猫も、おやつの魅力には抵抗しがたく、ついには表にまで出てきます。
その瞬間、手慣れた感じで、飼い主さんは愛猫を抱き上げ、悲願の爪切り達成を試みます。
残念な習慣(猫目線では)を受けるハメになった愛猫は、この場合でも、病院通いと同様に、おやつ=悲しい結末と認識する可能性があります。
次の機会におやつを差し出しても、前回の不快な出来事が蘇るため、そっぽを向き、以前にも増して爪切りを拒否するようになるかもしれません。
おやつ大作戦を封じ込められた飼い主さんは、いよいよ困惑するばかりです。
3.信頼関係にヒビが…

前述した2つの問題がこじれると、最悪の場合、おやつ=病院、爪切りに加え、悪代官のごとくウソをつく飼い主さん、という負の構図が、愛猫のなかで築き上げられます。
おやつの威光が無効化するうえに、大事な病院通いも遠のき、果ては伸び放題の爪でそこらに爪とぎされまくります。
性格がデリケートな愛猫だったら、飼い主さんから触られることすら、「No!」と拒絶するようになるかもしれません。愛猫にとって、飼い主さんを含めた「安全神話」が崩壊した状態です。
信頼関係が崩れるような悲劇を避けるには、おやつを先行き不安な片道切符ではなく、病院通いや爪切りの困難に打ち勝ったご褒美として提供することが大切です。まさに、こんな状況こそ、おやつがおやつとして最大限の効力を発揮するタイミングと言えます。
不快なことに直面しても、その先に大好物が待ち構えているなら、愛猫も苦難を見事に乗り越えられることでしょう。
愛猫が苦手なイベントに挑戦する際は、おやつの出し時だけには十分に留意してください。
まとめ

今回は、飼い主さんがおやつという名の「ウソ」をつくと、どんな悲劇が生まれるのか、3つのパターンに分けて解説しました。
結論から言うと、おやつを「ウソ」としてではなく、「ご褒美」として活用するほうがメリットが大きい、ということです。
人間社会でも、「ウソ」をつく状況によっては、物事がスムーズに展開することがあります。そういう意味では、猫の場合も、「ウソ(おやつ)」はタイミング次第と言えるかもしれません。
良好な信頼関係を保つためにも、飼い主さんは上手に「ウソ(おやつ)」を使うようにしましょう。