1.生まれつき

人でいう「寄り目」のような状態は、医学的には「斜視(しゃし)」と呼ばれます。猫にとって必ずしも異常とは限らず、生まれつきの体質や一時的な要因によって起こることもあります。
子猫のころから両目が内側に寄って見える場合、多くは遺伝的な要因による先天性斜視です。とくにシャムやヒマラヤン、ラグドールなどの一部の猫種では、視神経の配線が生まれつき少し異なっていることがあり、これが斜視の原因と考えられています。
このタイプの斜視は、猫自身がその状態で成長してきているため、距離感や視力に大きな問題がないことも多く、猫も自分の見え方に適応しています。
ただし、この種の猫は他の眼科疾患も起きやすいとされているため、物にぶつかりやすい、ジャンプの着地が不安定などの様子が見られるなど、視覚に影響が出ている可能性がある場合は、動物病院で検査を受けておくと安心です。
2.脳や神経のトラブル

成猫になってから突然片方の目が内側に寄るようになった場合や目が揺れるような「眼振」を起こしている場合、脳や神経系の異常が関係していることがあります。
脳の中でも目の動きをコントロールする部分や、そこから伸びる神経が障害を受けると、筋肉のバランスが崩れて斜視が起こります。
原因としては、脳炎、腫瘍、外傷、中耳炎が広がって神経に影響するケースなどが考えられます。急に発症した場合、「ふらつき」「食欲不振」「瞳の大きさの左右差」などが見られるときは、早急な診察が必要です。
猫は不調を伝えられないため、見た目の変化と行動の異常が同時に起きたときは見逃さないことが大切です。
3.眼球や周囲の筋肉の異常

目そのものや、目を動かす筋肉に異常がある場合も、内側に寄って見えることがあります。たとえば外傷によって筋肉が損傷したり、眼球の奥に炎症や腫瘍ができたりすると、正常な位置に目を保つ力が弱くなります。
また、加齢による筋肉の衰えや慢性的な炎症で、少しずつ斜視が目立ってくるケースもあります。もし目の充血、まぶたの腫れ、涙や目ヤニの増加が同時に見られる場合は、眼病が進行しているサインかもしれません。
猫の場合は症状が軽くても、放置すると視覚の質が落ちる可能性があるため注意が必要です。
まとめ

猫の目が内側に寄って見える理由は、生まれつきの体質から神経や筋肉の病気までさまざまです。
先天性の斜視なら大きな影響はないことも多いですが、成猫になってから急に変化が出た場合や、ほかの症状を伴う場合は要注意です。
もしも「急に寄り目になった」「片目だけ寄っている」「動きがぎこちない」といった変化が見られたら、放置すると回復が難しい病気が隠れていることもあります。
日頃から目の様子をよく見て、少しでも違和感を感じたら早めに動物病院で相談し、愛猫の視界と健康を守ってあげましょう。