猫の難病『アミロイドーシス』とは?原因や症状、なりやすい猫などを解説

猫の難病『アミロイドーシス』とは?原因や症状、なりやすい猫などを解説

アミロイドーシスは猫の難病のひとつと言えますが、確定診断されることが少ないため、初めて耳にした方も多いのではないでしょうか。この記事ではアミロイドーシスの症状や原因、治療法についてご紹介します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

︎アミロイドーシスとは

腎臓

アミロイドーシスとは、「アミロイド」という絹の構造に似た特殊な糖タンパクが、全身の臓器や、組織の細胞と細胞の隙間に沈着して、細胞の圧迫萎縮(※)を起こすことにより、各臓器の機能障害を招く疾患です。

※圧迫萎縮:圧迫されることにより、その部分に血液が行かなくなり、萎縮が生じること

猫での発症は稀ですが、腎臓に沈着することにより、進行性の慢性腎不全を引き起こすことがあります。

︎アミロイドーシスの原因

遺伝子

アミロイドは、何らかの理由で炎症反応が体で起きた時に、肝臓で産生される「SAA」と呼ばれるタンパク質が元となっています。

よって、慢性的に炎症がある状態が続くとSAAが体内で大量に作られてしまい、その分アミロイドーシスになる確率も高くなります。

最新の研究ではSAAの中でも、特にアミロイドーシスになりやすいタイプの遺伝子を持ったSAAが存在し、それが親から子へと引き継がれる可能性があると報告されていることから、遺伝も大きな原因の一つと言えます。

︎起こりうる症状

元気のない猫

アミロイドは全身の臓器のどこにでも沈着する可能性があり、その症状はアミロイドが沈着する部位によって変わってきます。

猫で特に沈着がよく見られるのは、腎臓と肝臓です。

腎臓では、腎糸球体という部分にアミロイドが沈着しやすく、沈着が進むと多飲多尿、体重減少、食欲低下、嘔吐、脱水など、慢性腎不全に似た症状が見られます。

また、肝臓でアミロイドーシスを起こした場合は、元気消失、食欲低下、黄疸、下痢、腹部の腫れ、腹水などが見られます。肝臓では、アミロイドが沈着することで、もろくなった部分から肝臓が破裂し、お腹の中で出血してしまうことがあり、そうなってしまった場合には急に倒れてぐったりしてしまったり、粘膜が真っ白になったり、脈が弱く早くなったりするなど、命に関わる症状が出ます。

稀ですが、膵臓に沈着した場合に、それが原因で糖尿病を発症した例も報告されています。

︎なりやすい猫

アビシニアン

アミロイドーシスは遺伝的な原因もあることから、なりやすい猫種が存在するとされています。特に、アビシニアン、ソマリは遺伝的にアミロイドーシスになりやすいとされています。

また、炎症が原因となって発症することから、猫白血病や猫伝染性腹膜炎などのウイルスの感染症、腫瘍性疾患、歯肉炎や歯周病など、慢性的な炎症が続いている猫はアミロイドーシスにかかりやすくなります。

︎検査と診断

顕微鏡

アミロイドーシスは、検査をして確定診断を下すためには、組織の生検が必要となります。この検査では臓器の一部を切り取って、それを顕微鏡で見る必要があるのですが、アミロイドの沈着によってもろくなっている疑いのある臓器の一部を切り取ることは、大量出血のリスクがあり、危険を伴います。

よって、多くの場合は問診や血液検査や超音波検査、尿検査などの情報を元に、アミロイドーシスを疑って治療をしていく形になります。

しかし、アミロイドーシスは他の慢性腎不全などと症状や検査結果が類似していることから、アミロイドーシスであっても、正しく診断が下ることは比較的稀です。

︎アミロイドーシスの治療法

現在アミロイドーシスの根本的な治療法は残念ながらありません。よって発症した臓器によって、その症状を緩和したり、なるべく進行を遅らせて臓器を保護することが主な治療となります。

腎臓で発生している場合には、腎臓用の食事に変えたり、点滴をしたり、血圧が高い場合には降圧剤を服用するなど、基本的には腎臓病と同じ治療を行います。

肝臓の場合には、何よりも肝破裂を防ぐことが大切です。なるべく安静に過ごし、止血剤や肝機能を補う薬などを服用することもあります。

︎まとめ

獣医師と飼い主

猫のアミロイドーシスは、確定診断も難しく、根本的な治療法がないため、完治ができないことから猫の「難病」のひとつと言えるでしょう。

しかし、他の疾患と同様、早めに症状に気がつくことで臓器を保護して、進行を遅らせることができるかもしれません。

少しの嘔吐や食欲不振でも放置せずに、少しでも異変を感じたら動物病院で検査を受けるようにしましょう。

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