メリット1「水分補給しやすい」

「ウェットフード」を選ぶ最大の利点は、水分補給しやすいことです。
砂漠地帯をルーツに持つ猫は、習性上あまり水を飲みたがりません。野生時代には、捕まえた獲物に含まれる水分で必要量をまかなっていました。みなさんの愛猫が率先して水を飲んでくれないのは、こうした大昔の習慣が、いまだに根づいているからです。
多くの猫にとって、「ウェットフード」は嗜好性が高く、食いつきも良いので、美味しくいただきながら、気軽に水分補給できます。
そして、肝心なのは、「ウェットフード」で水分摂取量が増えると、尿の回数が増加し、体内に溜まった老廃物(濃い尿)がスムーズに排泄されることです。反対に水分摂取量が少ないと、必然的に尿の回数が減り、腎臓内で老廃物が溜まり続けます。
この状態を放っておけば、将来的に慢性腎臓病のリスクが高まったり、尿石症や膀胱炎などの病気にもつながったりします。
つまり、「ウェットフード」は、健康維持だけでなく、腎臓病や尿石症などの重い病気の抑制、進行を遅らせるうえでも非常に大切な役割を果たす、ということです。もちろん、常日頃の脱水対策にもなります。
猫が一日で必要な水分摂取量は、個体差がありますが、体重1kgあたり50~60ml程度が目安とされています。とりわけ、水を飲みたがらない愛猫に困り果てている飼い主さんは、「ウェットフード」を積極的に活用してみるのもいいかもしれません。
メリット2「肥満防止やダイエットにつながる」

次に紹介したいメリットは、肥満防止やダイエットにつながることです。
「ウェットフード」は、高タンパクかつ低カロリーで、70~80%以上の水分量が含まれているため、「ドライフード」に比べると、少ない摂取カロリーで満腹感を得やすくなります。この点は、食欲旺盛でおねだりの多い子や肥満が気になる子には大助かりです。
栄養面で考えても、「ウェットフード」で適量のタンパク質を摂取すると、筋肉量の維持につながるので、基礎代謝が高まり、結果的に太りにくい身体をつくれます。
また、「ウェットフード」の場合、1袋(缶)あたりのカロリー量が明確に表示されているため、カロリー計算しやすい点も、愛猫の健康を第一に考える飼い主さんには好材料です。
愛猫の肥満防止やダイエットのために、「ウェットフード」の強みを活かした「ミックスフィーディング」という給餌法もあります。
「ミックスフィーディング」とは、「ウェットフード」と「ドライフード」を併用し、お互いの長所を組み合わせることです。朝と夜で使い分けたり、ドライとウェットを混ぜて提供する方法もあります。
たとえば、肥満気味で「ドライフード」をガツガツ食べる子には、その割合を減らした分、「ウェットフード」で補えば、満腹感も得られ、貴重な水分摂取にもつながります。
「ミックスフィーディング」を試す際は、必要なカロリー摂取量を超えないことを前提に、「総合栄養食」と「一般食」の摂取バランス、愛猫の好みなどを考慮することが大切です。
もし現状の給餌法から「ミックスフィーディング」へ切り替えるときは、急に変化させると、下痢などの症状を引き起こす恐れがあります。愛猫の様子を見ながら、段階的に移行を進めてみてください。
デメリットは「コストが高く、歯周病になりやすいこと」

良いことづくめに見える「ウェットフード」ですが、実は、少なからずデメリットもあります。
経済面で問題なのは、「ドライフード」に比べると、「ウェットフード」のほうが割高なことです。毎日、ウェットフードだけで必要な総カロリー摂取量を満たそうと思えば、かなりの金額がかかります(体重3kgの猫の場合、最低限で月に1万円以上)。
衛生面で言えば、ドライと違って、開封後は長期保存できないのも難点です。たとえば、夏場、お皿に放置したままでいると脂質の酸化などの傷みが早く、すぐに雑菌が繁殖しやすい傾向があります。
さらに、「ウェットフード」は、水分豊富で柔らかいため、歯垢や歯石がつきやすく、歯肉炎を含めた歯周病のリスクがどうしても高くなってしまいます。猫の歯周病は、腎臓などの臓器、全身に悪影響を及ぼしかねない病気です。
以上、「ウェットフード」の弱点を挙げてきましたが、もちろん、使い方次第で最大限に強みを引き出すことも可能です。その際には、栄養の偏りが出ないように、「総合栄養食」と「一般食」の使い分けにはくれぐれも注意するようにしましょう。
まとめ

結論から言うと、「ウェットフード」のメリットは、「水分補給しやすい」「食いつきが良い」などがあります。
一方、デメリットには「コストが高い」「傷みやすい」「歯周病になりやすい」などが挙げられます。
本文でも紹介した「ミックスフィーディング」を実践すると、「ウェットフード」と「ドライフード」のそれぞれの強みを発揮できます。
愛猫の健康面、好みを最大限に尊重して、これからも適切なキャットフードを選択してみてください。