猫の見える色、見えない色は?『視覚』にまつわる3つの話

猫の見える色、見えない色は?『視覚』にまつわる3つの話

猫と人間の相違点は数多くありますが、視覚もそのひとつです。今回は、猫が普段見ている視覚世界はどんなものなのか、3つの視点に着目して解説します。みなさんの猫雑学欲を刺激できれば幸いです。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

1.猫が見える色とは?

オッドアイの猫

姿かたちと同じように、猫の視覚もまた、私たち人間とはかなり違っています。特に際立つのは、色を見分ける能力です。

人間は、赤・青・緑が見える三色型色覚を持っています。一方、猫は二色型色覚と言われ、青と緑は認識できますが、赤は判別できません。そのため、紫は青、赤は緑に見えてしまいます。色味という点では、人間に比べるとやや見劣りする視覚世界です。

なぜこのような色覚の違いが生じるかと言うと、網膜における視細胞の内訳が、人間と猫とでは異なるからです。

視細胞には「桿体細胞」と「錐体細胞」があり、前者は周辺視野、暗視力を司り、後者は明るい場所での色の識別を担当します。

猫の場合は、「桿体細胞」の割合が多く、「錐体細胞」は少ないため、色の判別よりも、むしろ、暗がりでものを見る力に重点が置かれています。この特徴は、後述する狩りのプロセスのなかでも重要な役割を果たす要素です。

2.猫は近視ながらも動体視力は抜群

ハンティング中のベンガル

猫の視力は、人間の視力で換算すると、0.1~0.2ぐらいで、解像度も低く、おぼろげに見えるレベルです。視力だけでは、遠くに立った飼い主さんを見極めるのは難しいかもしれません。余談ですが、ダチョウの視力は20もあると言われています。

猫は確かに近視ですが、動体視力に関しては、人間には及ばない能力を誇っています。具体的には、30mぐらいの距離であれば、カサコソと動く小動物(ネズミや昆虫など)にさえも素早く反応できます。

さらに猫の視野は約280度もあり、約200度の人間よりもワイドな視野を確保できます。猫が身のまわりの動きに敏感なのも、この視野力の影響でしょう。

猫は、たとえ視力が弱くても、優れた動体視力と広角的な視野、鋭い聴覚を駆使することで、獲物をものにできます。つまり、猫の視覚は、あくまで狩りに即した実際的なものであり、人間のようにこの世界の美しさを鑑賞するためのものではない、ということです。

3.暗がりでもよく見える

暗がりの黒猫

猫は多少の光さえあれば、暗がりでも障害物にぶつかることなく、スムーズに歩けます。この驚異的な能力は、前述した「桿体細胞(暗視力を担う)」と網膜の後ろにある「タペタム」という器官のおかげです。

「タペタム」は、簡単に言うと、反射鏡のようなものです。取り込んだ光を網膜側に映し返す働きがあるので、ある程度の暗闇なら、猫は少ない光量を頼りに問題なく歩き回れます。

ちなみに、車のライトなどに照らされて猫の目が光るのは、「タペタム」が光を反射するからです。

猫は薄明薄暮性の動物と言われ、明け方と夕暮れ前に動きが活発になります。その時間帯こそ、ネズミや鳥、虫などが忙しくなるタイミング。薄暗くなっても難なく獲物をとらえる視覚は、野生時代から、生き残るためにも猫にとって不可欠な武器だったのでしょう。

暗がりでものがよく見えるのも、やはり、生まれつきのハンターである猫の本質に深く根差しています。

まとめ

片目でカメラ目線の猫

今回は、猫の「視覚」について3つの特徴を紹介しました。

結論から言うと、猫は赤をうまく認識できません。赤信号も青信号に見えてしまいます。近視ながらも動体視力は抜群、一定レベルの暗がりであれば、へっちゃらで歩き回れます。

人間にはマネできない視覚能力は、単独で獲物を捕まえる猫の習性にすべて基づいています。赤の色味が見えなくても、「猫業」を営むうえで何ら問題ない、ということなのでしょう。ここにも、ハンターとしての潔さが感じられます。

猫の能力にはまだまだ驚くべきものがたくさんあります。これからも猫雑学の面白さに触れながら、猫という不思議な動物をいっそう愛してみてください。

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