スプレー行為とは?
猫のスプレー行為とは、立ったまま腰を高く浮かし、スプレー状で少量の尿を放つことです。去勢していないオス猫に典型的な行動で、性成熟期(生後7~8ヵ月ぐらい)をきっかけにして始まります。メス猫もやる場合がありますが、あくまで例外的です。
非常に匂いがきついので、愛猫のスプレー行為にみなさんも困ったことがあるかもしれません。過剰な匂いの原因は、これまで肛門付近の分泌腺との関連性が考えられてきました。
ところが、岩手大学の最新研究によれば、尿の匂い成分そのものは通常の尿と変わらないことが判明。匂いの要因として、以下の2点が指摘されています。
- スプレー状のため、尿の付着面が広範囲に及ぶ
- 尿中のタンパク質「コーキシン」が壁などに付着しやすい性質を持つ
- 「コーキシン」は悪臭の素となる「フェリニン」を生成する働きを持つ
つまり、広がりやすいうえに、タンパク質である「コーキシン」が表面張力を高め、悪臭源である「フェリニン」を壁などに残してしまう特質があるため、通常の尿よりも臭く感じてしまう、ということです。
1.生活上のストレス
スプレー行為自体は本能による行動であって異常ではないのですが、過剰なスプレー行為の裏側には、生活上のストレスが潜んでいる可能性があります。環境に深く根差す猫は、変化が苦手です。引っ越しや部屋の模様替え、トイレ環境の悪化など、生活空間、状況が変わると、ストレスを抱えやすくなっています。
もし愛猫がスプレー行為を繰り返すようになったら、ひとまず、生活上の問題点を改めて見直し、何が愛猫のストレスになっているか、明らかにすることが大切です。原因に合わせて、適切な対応を心がけましょう。
スプレー行為は、本能的なもので、ある意味、言葉代わりの表現手段です。過剰なスプレー行為など、問題行動の裏には何らかのストレスが関わっていると考えた方が良いでしょう。早めにストレスサインに気づき、深刻な事態を未然に防ぐよう努めてください。
2.縄張りの主張
爪とぎや顔スリスリの匂いづけなど、猫の縄張り行動にはいろいろありますが、スプレー行為もまたその仲間です。
引き金は、同居猫の加入、家族構成の変化、あるいは、元より一緒に生活していた動物や人と相性が合わないことの不快感、イライラ。その他にも、たとえば、外猫の庭先侵入や外から声が聞こえてくる、匂いがするなどによるストレスで発生することもあります。
猫の縄張り意識は、人間のパーソナルスペースよりもシビアです。スプレー状の尿を噴射することで、「立ち入り禁止!」を強く訴えかけてきます。
同居猫との緊張関係でスプレー行為が起こっているなら、ケージの利用や部屋を別にするなどで生活空間自体を分けたり、隠れる場所をつくってあげたり、対立構造を生まないことが重要です。
3.発情期だから
発情期にも同様のスプレー行為があらわれます。いわゆる「性衝動スプレー」というものです。一般的にオス猫だけの現象に思われがちですが、実は、メス猫でもやるケースがあります。
オス猫の場合、「性衝動スプレー」は、外から聞こえてくるメス猫の声や他の猫の鳴き声などに反応して起こります。カーテンや部屋の角が主な「被害場所」です。
去勢手術すると、オス猫の多くはスプレー行為がおさまると言われています。ただ、猫にもよりますが、完全にゼロになるわけではありません。本能に基づいた行動なので、愛猫にやめさせるのは難しいところ。飼い主さんなりに対策する必要があります。
もし愛猫に「性衝動スプレー」があったとき、以下のことを試してみてください。
- 爪研ぎの場所を増やす(ストレス発散のため)
- おもちゃなどでしっかり遊ぶ
- スプレー行為があった場所にペット用トイレシーツを貼る
- 同じところで繰り返さないように、消臭スプレーで匂いを除去する
これらの対策で完全にスプレー行為をなくすことはできないかもしれませんが、スプレー尿を放置しておくと、匂いの沈着は人の生活環境を害するほどひどくなります。
まとめ
かわいいだけの角度から見ていくと、愛猫の思わぬ行動に驚くことがあるかもしれません。
スプレー行為は、紛れもなく愛猫が「動物」であることの証です。いくらペットとして飼われていても、人間の思い通りにはいきません。
もしスプレー行為が始まったら、行動の背景に生活環境に問題点がないか、ストレスが絡んでいないか、確認したうえで状況を改善するように取り組んでみてください。単純な性成熟から始まるスプレー行為の場合は去勢手術を行うかなど、早めに動物病院で相談しましょう。