代表的な病気やケガにかかる費用
動物病院は法律の関係で「自由診療」となっているため、病院によって料金が異なります。
多くの病院では動物の診療コストと飼い主の負担、病院の経営状況なども踏まえて料金が設定されています。また、実際に行う検査内容も症状や年齢、病院や獣医師の方針、地域によって異なります。
ここでは「目安」という形で費用の紹介をします。実際に受診されるときは、お世話になる動物病院へご確認ください。
急性胃腸炎(嘔吐・下痢)
- 治療費:約6千円~2万円
嘔吐や下痢の治療は、毛玉や異物などの胃腸障害・閉塞性、ウイルスや寄生虫などの感染性、腫瘍や膵炎、その他の疾患に起因するものまで原因が多岐にわたるため、検査によって費用が変わり、治療もそれぞれの結果に応じて選ばれます。
下痢や嘔吐で脱水が懸念される時は輸液、薬物療法として、吐き止めや胃酸を抑える薬、消化促進剤の処方、必要に応じて下痢止めや整腸剤を使うこともあります。
成猫の急性胃腸炎の場合は、数日で治癒することが多く、よほど重症でない限りは入院まで至らないことがほとんどです。
異物誤飲
- 検査費:約3万~5万円
- 手術入院費:約6万~50万円
好奇心旺盛な子猫や若い猫は、遊びの延長からの誤飲事故が起こりやすくなります。
誤飲は飼い主さんが、何をどのくらい飲み込んだか、把握しているかどうかが、検査や診断をする上で重要なポイントです。
異物の形状や場所の目安を掴むため、問診とレントゲンやエコー検査が行われますが、レントゲンでは写らない物やエコー検査でもはっきりしない物もあるので、全ての検査をしても確定的な診断が難しい場合があります。
異物が胃内にあれば内視鏡で取れることもありますが、飲み込んだものの形状や経過時間、小腸に流れている、など場合によっては開腹手術になります。
胃腸の状態次第で術式も変わりますし、開腹手術は入院もともなうため、費用も高額になります。
泌尿器系疾患
【特発性膀胱炎】
- 治療費:約1万~3万円
【尿結石】
- 治療費:約3万~10万円
- 手術入院費:約12万~50万
【慢性腎臓病】
- 治療費:約1万~2万円(1ヵ月目安)
- 入院費:約4万~10万
猫は泌尿器系のトラブルになりやすい動物です。
泌尿器トラブルには、レントゲンや超音波、尿検査、血液検査など原因を特定するための検査費用もかかるので、実際の費用には大きな差が出てきます。
尿結晶や結石がごく小さな場合は、療法食や尿pH調整剤の投薬で対応していきますが、結石のサイズが大きいとき、溶解しない結石の場合には手術が必要です。尿路閉塞の手術は緊急性も高く、費用も高額になります。
また、慢性腎臓病は治療が長期にわたることが一般的です。進行度によっては週に何度か通院が必要になることがあるため、費用だけでなく時間についても努力が必要です。
四肢のケガ(捻挫や骨折など)
【捻挫】
- 治療費:約5千~2万円
【骨折】
- 検査費:約1万~3万円
- 手術費:約20万~30万円
(骨折部位などにより、骨以外の手術が必要な場合や長期入院の場合は、更に費用がかかることも。)
室内飼いの猫でも遊んでいて高いところから落下したり、走り回って転倒したりして、気付いたら足を引きずっているなんてこともあるでしょう。
足を痛めたときは、骨折していないかレントゲン検査が行われます。また、骨折している場合、(骨盤など)部位によってはCT検査を行った上で、必要に応じて手術が行われます。
骨折が軽度の場合には、ギプスで安静にすることもありますが、骨折の内容によっては、ピンやネジとプレートで骨を固定する手術が必要です。
歯周病
- 治療費:約7千円~2万円(年間)
- 麻酔下処置費:約5万~15万円
猫の口の中はアルカリ性のため、酸によって歯が虫歯になることは滅多とありませんが、代わりに、歯周病菌が繁殖しやすく、歯周炎になりやすい環境にあります。また、虫歯とは違う原因で歯が溶けてしまう猫に多い吸収病巣も見られることがあります。
ひどくなると口が痛くてごはんが食べられなくなるので、食欲不振などの主訴で来院するケースがほとんどです。
多くの場合、口の中を開けて見れば、炎症しているのはわかりますので、詳しい検査は進行具合を評価するために行います。
歯周病治療は、感染に対しての抗生剤や痛み止めのための消炎剤、口腔内善玉菌などのサプリメントで様子を見る場合と、歯石除去や抜歯など麻酔をかけて処置する場合があります。
ただし炎症が重度な場合は、抗生剤や痛み止めなどの内科的治療では根本的な原因が取り除かれず、痛みが再発するため定期的な通院が必要になります。
費用を確保する方法
猫の病気は家庭でのケアである程度は防げますが、ケガや予測不能な病気は、突発的に起きてしまうものです。
そのような緊急時に「お金がない!」と治療を諦めるわけにはいきませんので、あらかじめ猫用の治療費は備えておくことが大切です。
費用を確保する方法は2つあります。
- ペット保険に加入しておく
- 猫貯金をしておく
どちらにもメリット・デメリットがあります。
ペット保険のメリット・デメリット
保険に加入しておくと治療費の一部がカバーできるので、安心して治療が受けられます。
猫の体調不調は予期せぬときに起こり、高額な出費が一度にやってきますが、保険に入っていることで金銭的な不安を抱えず、治療に専念できるのが最大のメリットです。
デメリットは、当然ながら保険料がかかることです。多頭飼いなら、1匹ずつの加入が必要になります。
加入時によく検討しておかないと、病院の治療費よりも保険料のほうが高額になってしまう可能性があるかもしれません。
とはいえ、病気を事前に予知することはできませんし、病気になってから保険に入っても、その病気は保険適用にはなりません。
どんな猫でも病気にはなりますが、猫種によって「かかりやすい病気」もあるので、事前に調べておくと良いでしょう。
猫貯金のメリット・デメリット
猫貯金とは、愛猫にかかる費用を、毎月貯蓄としてキープしておくことです。
メリットは、貯めた貯金は猫の治療費だけでなく、どうしても必要となれば家族なら誰でも使うことができる自由度の高さです。
デメリットは、猫貯金をはじめたばかりで十分な貯蓄額がない時点で、猫に高額医療費が必要になったときに支出が困難になることです。
猫を飼うと決めた時点で、一緒に住み始める前からある程度貯めておくことができれば理想的です。
いずれにしても、猫の状態によっては検査してみないと、治療にいくらかかるのか病院ですらわからないことがあります。
もし、猫の治療と支払い額に不安があるときには、正直に動物病院に相談してみましょう。猫の健康を考えて、先生もいくつかの選択肢を提案してくれるはずです。
まとめ
猫の治療費は、予測不能な出費となることが多いため不安になりますね。
今回はほんの一例しか紹介できませんでしたが、猫の治療費は検査項目や病状によっても変わってきます。また、料金も病院ごとにそれぞれ違います。
できるだけ安く済ませたい気持ちもありますが、病院選びは大事です。病院を選ぶ際は通いやすさや相談しやすさなどをもとに「かかりつけ」の病院を決め、獣医師の専門性や病院の設備などを参考に、治療で困った際に受診できる病院も探しておくとよいでしょう。
そして、このような緊急時の負担に備えて、ペット保険の加入や猫貯金をすることも大切です。メリットとデメリットを考えて、自分に合った選択をしましょう。