1.身体を強制的に拘束する
愛猫の健康を管理する飼い主には、爪切りや投薬など、ときには猫の意志に反してでも抱っこや保定をする必要が出てきます。
しかし「やらなくてはいけない」「獣医師の指示だから」という理由から、力ずくで押さえつければ猫にトラウマを植え付けてしまう可能性があります。
猫のケアがどうしても難しいときは、無理に継続せず、獣医師などに相談するようにしましょう。
特に通院など必要性があった上で、キャリーバッグに入れる際には、飼い主の方もやらなくてはいけないという義務感が生じるため強引になりがちです。
ふだんからキャリーバッグを出しておいて、慣れさせるという方法もありますが、一度病院で嫌な思いをした猫が素直に入ってくれるケースは珍しいかもしれません。
恐怖を軽減するために、猫のニオイがついた毛布と一緒に入れる、タオルなどを猫の頭にかぶせて周囲を見えなくするなど猫の不安が減るような工夫もしてみましょう。
2.差し迫る大きな音や動き
人が理解している音や動きでも、猫にとっては急な動きや大きな音は恐怖以外の何物でもないということがあります。
たとえば、家族間・夫婦間の口論で感情的な大声を出してしまうと、直接猫に危害がなくても、猫にとっては戦場に放り込まれたような恐怖が生じます。
また、しつけと称して大きな音をたてたり、殴るような動きや蹴るマネなどをしたりすると、猫は驚きと恐怖から心に傷を残す可能性があります。
たとえ冗談でも、掃除機など嫌がることを、遊び半分で猫に仕向けてはいけません。
そのときは猫も素早く逃げて別室や物陰に隠れるかもしれませんが、一度怖いと感じた飼い主を見るたびに恐怖心をよみがえらせるかもしれません。
猫との暮らしの中では、穏やかに過ごすような配慮を忘れないことが重要です。
3.誤ってストレスを誘発してしまう
愛情があっても、飼い主が猫へのストレスを誘発してしまうことがあります。
例えば、汚れてしまった猫をお風呂に入れることもあるでしょう。
多くの猫は水に濡れることを嫌うものですが、お風呂に慣れていない猫にとって、シャワーや乾燥時のドライヤー音は、強烈な記憶として残ります。
そして、そのまま強引にシャンプーすれば、次から恐怖を引き起こして猛烈な拒否反応を示すかもしれません。
あまりに嫌がる場合は、それ以上の恐怖心を抱かないようシャワーを弱くしてタオルごしに当てるか、シャワーをやめて蒸しタオルやペット用ウェットシートで清潔にするなど、必要に応じて猫のストレスを軽減する必要があります。
また、猫は慣れない病院の診察台の上で、何をされるのかわからず不安に感じています。
動物の医療行為は、獣医師の先生と飼い主が協力して行うのがベストです。
猫に愛情を示すためにも、声をかけるときは「大丈夫だよ」「頑張ろうね」など、猫に安心感を与える言葉にすることが重要です。
猫の性格にもよりますが、動物病院のスタッフのみで処置を行う方が良いケース、飼い主が一緒の方が良いケースがあります。猫の性格に合わせて判断した方が良いかもしれません。
猫に恐怖感を与えるメリットはゼロ
悪意の有無やしつけと称する正当性を持っても、猫を怖がらせて得られるメリットは何もありません。
むしろ、猫に恐怖を与えれば、日常的に必要なお手入れ(爪切りやブラッシングなど)にも抵抗感を持つようになります。
また、将来的に医療処置や投薬が必要になった際にも、猫が強く抵抗するようになり治療をスムーズに進めにくくなる可能性が高くなります。
恐怖の状況が解消されたあとも精神的なストレスが続く場合、日常的に問題行動をするようになったり、ストレスから消化器系の病気になったりすることも考えられます。
不快な記憶がいつまでも残るのは、命の危険から身を守るための自己防衛本能です。しかし、人間のように理性的な療法が行えない猫は、一度恐怖を抱くとその恐怖が解消されるまでには時間がかかります。
猫と飼い主の信頼関係を損なわないためにも、できるだけ猫に不快な思いをさせずに目的を達成することは、飼い主としての管理能力の一環と言えるでしょう。
まとめ
今回は、猫への厳禁行為を3つ紹介してきました。
猫を飼っている間には、さまざまなハプニングも起こることがあります。しかし、愛猫に対して意図的に心を傷つけるようなことは、絶対に避けたいものです。
猫に決断の余地も与えないほどの、強制的な拘束や大きなショックはトラウマになってしまいます。また、ジワジワとストレスを長引かせるのも問題です。
猫が嫌な記憶を抱えてしまうと、飼い主との関係性や必要な時のケアにおいて、とても困難になってしまいます。
猫の健康を守るために、医療にかけることは家族としてとても大切なことですが、そのやり方においても、猫が怖がらないようにひと工夫して行うことを心掛けましょう。