「キャットリボン運動」を知っていますか?猫に多い「乳腺腫瘍」と、苦しむ子を減らすためにできること

「キャットリボン運動」を知っていますか?猫に多い「乳腺腫瘍」と、苦しむ子を減らすためにできること

猫の乳腺腫瘍は8〜9割が悪性といわれています。見ただけではわかりにくく猫の自覚症状もないため発見時にはかなり進行していることがほとんど。この病気で苦しむ猫をゼロにするため、猫の乳がんに関する知識を広め、さらなる研究を進めるために立ち上げられたのが「キャットリボン運動」です。

SupervisorImage

記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

「キャットリボン運動」とは?

キャットリボン運動ロゴ

キャットリボン運動は、「乳がんで苦しむ猫をゼロにする」をスローガンに、2019年に一般社団法人日本獣医がん臨床研究グループ(JVCOG)によってはじまりました。

人間の乳がん撲滅を目指すピンクリボン運動にちなんで名付けられました。猫の乳腺腫瘍に関する知識を飼い主さんへ発信し、同時に獣医師へ最新最善の治療法を研究・普及していく運動です。

海外の研究では病死した猫の約3割が悪性腫瘍で、猫の乳がんは悪性腫瘍の中でもっとも多いといわれています。予防するのはもちろんのこと、たとえ、乳腺腫瘍になったとしても早期に適切な治療を受けることで、もっと長く一緒に過ごせるかもしれません。

猫が乳腺腫瘍になる原因と予防

診察される猫

猫の乳がんは4,000頭に1頭の割合で発症するといわれています。乳腺腫瘍(しこり)ができたら8〜9割が悪性で、未避妊や避妊が遅かったメス猫に多発します。好発するのは10〜12歳。ごくまれにオスの乳腺腫瘍も確認されています。

適切な時期に不妊手術ができれば、発症リスクを抑えることのできる病気です。乳腺腫瘍は卵巣から分泌されるホルモンバランスと関係があるため、発情期を迎える生後6ヵ月までに不妊手術をすることで発生率を91%も抑えられるといわれています。

一方、生後24ヵ月以降の不妊手術では、乳腺腫瘍の発生抑制の効果は期待できません。おとなになるまで外で暮らしていた保護猫などは、不妊手術を受けたタイミングが遅いこともあるため、おうちでしこりがないかチェックをしてあげましょう。

乳がんで苦しむ猫を減らすために

白い建物の上にいる猫

一般の私たちが、乳がんで苦しむ猫を減らすためにできるのは、「うちの子」を守ること、そして多くの飼い主さんたちと情報の輪を作ることです。

「うちの子」には、定期的な乳がんチェックをしましょう。日頃のスキンシップで早期発見が期待できます。

乳がんチェックのしかた

1.猫をあおむけに座らせるか、体の前面(胸〜お腹)が触れる体勢ではじめます。
2.わきの下からおっぱい周り、足の付け根まで、指先で円を描くようにくまなく触ります。
3.同じように軽い力ですこしずつ皮膚をつまんでいきましょう。

乳腺腫瘍の初期はほんの数ミリの小さな塊で、痛みもないため猫も無自覚です。腫瘍がある場合、触れると皮膚が硬くなっているのがわかります。異変があればすぐに病院で検査を受けましょう。

もし猫がマッサージを嫌がったら無理強いせず、また次の回に続きをやりましょう。乳がんチェックは月1回が目安です。

猫の乳腺腫瘍については、飼い主さんの多くがまだ十分な知識を持っていないのが実情です。

飼い主に向けに猫の乳がんについての知識を発信しながら、研究を進める「キャットリボン運動」の応援は私たちでもできる猫助けの手段のひとつ。

この運動が広がって、多くの飼い主さんが正しい知識を知れば、乳がんで苦しむ猫はもっと減らすことができるでしょう。

まとめ

ピンクのリボンと猫

今回は、乳がんで苦しむ猫をゼロにする活動「キャットリボン運動」について紹介しました。

猫の乳がんは、未避妊や避妊手術が2歳以降になった猫に発生しやすい病気ですが、適切な時期に避妊することで発生率を劇的に下げられます。また、腫瘍は自宅での乳がんチェックによって早期発見できる病気です。小さな異変に気付くためにも定期的に乳がんチェックを習慣にしましょう。

そして、毎年10月22日は「キャットリボン運動の日」として、猫の乳がんの啓発活動が行われています。多くの飼い主さんたちが正しい知識を得て、乳がんで苦しむ猫を減らす一助となることを願い、イベントなどが行われています。ぜひチェックしてみてください。

スポンサーリンク