猫の歯は抜いたほうがいい場合も 猫の『抜歯』のメリット・デメリット

猫の歯は抜いたほうがいい場合も 猫の『抜歯』のメリット・デメリット

歯周病や口内炎など猫の口の中のトラブルの治療は、薬を使った治療の他に「抜歯」による治療もあります。猫の歯を抜くと聞くと不安になるかもしれません。抜歯のメリットやデメリットをご紹介します。

SupervisorImage

記事の監修

日本では獣医師。世界では旅人。”旅する獣医師”として世界各国を巡り、海外で見てきた”動物と人との共生の様子”を、執筆や写真展を通して皆さんと共有する活動をしています。

猫の「抜歯」のメリット

あくびをする猫

まずは、猫に「抜歯」をする際のメリットについて解説します。抜歯と聞くとマイナスな印象を持たれる方もいるかもしれませんが、ちゃんとメリットがありますので確認しておきましょう。

痛みがなくなる

猫の歯についた歯垢が原因で歯周病になると、歯茎から出血したり、口臭がきつくなったりします。強い痛みもあるので今までのように生活ができなくなることもあるのです。歯周病が進行すると、歯だけでなく、顎の骨や内臓にも影響が出ます。

また、猫の口内炎も強い痛みが出る病気で、舌やのどへと炎症が広がります。ウイルスなどが関与していることもありますが、他の原因がはっきりと分かっていないため治りにくい場合があります。

薬による治療は一時的に症状が落ち着きますが、完治せず再発して薬を使い続けることになり副作用が心配されます。こういった難治性の歯肉口内炎で効果が期待される治療法として「抜歯」があります。全ての猫の歯肉口内炎に有効というわけではありませんが、抜歯をすることで痛みや腫れなどの症状が軽減されることがあります。

猫の状態によっては歯を全て抜く場合もあります。抜歯をして回復をするまでに時間がかかることもありますが、薬の使用頻度を下げることができる場合もあります。

食べられるようになる

歯周病や口内炎は強い痛みがあるため、ごはんを食べることでも痛みを感じます。痛みで鳴いたり、食欲が落ちてしまうこともあるのです。抜歯による治療をすると、もちろん抜歯直後は痛いのですが、処置部の傷が治った後は抜歯部の痛みがなくなるため、食事をすることができるようになります。

歯がないと食べられないように思いますが、猫の歯は獲物を引きちぎるためにあります。引きちぎった後は丸飲みする食べ方なので、キャットフードを食べるのには歯はなくても平気です。

ただし、元々噛んで食べる猫が突然丸飲みするようになると、食後すぐにフードを吐き戻す症状が出ることがあります。そういった場合は粒の大きさや形状を変えてみるなど工夫をしてみると良いでしょう。

口臭が改善する

猫が歯周病や口内炎になると口臭がきつくなり、その状態で毛づくろいをすると体も臭くなってしまうことがあります。

抜歯による治療で炎症が収まれば、口臭は気にならなくなります。

猫の「抜歯」のデメリット

獣医師に口を触られる猫

猫の「抜歯」には当然デメリットも存在します。メリットと合わせて考慮し、愛猫にベストな治療を考えられるようにしておきましょう。

全身麻酔が必要

持病がある猫は、抜歯による治療が受けられない場合があります。

人間同様、猫も手術前には血液検査などをして、全身麻酔ができるか検査をしますが、不安なことがあるときは獣医師に相談をしましょう。

たとえ麻酔前検査で問題が見つからなかったとしても、全身麻酔での処置が100%安全と言い切れるものではありません。抜歯のメリットと比較し、主治医とよく相談した上で処置をするか決めましょう。

抜歯をしても改善しない場合がある

歯周病や口内炎で抜歯は効果的な治療ですが、10~20%の猫は改善が見られない場合があります。

これは抜歯してみないと分からないことです。また、全抜歯を行わない場合は残っている歯で歯周病が再燃する可能性があります。

費用が高い

動物病院や抜歯した歯の本数によって異なりますが、5~10万円程度は最低かかると考えておいてください。抜歯本数が多い場合や、ドリルなどの特別な機械を使う場合などは更にかかる可能性があります。あわせて、検査、薬、入院、通院などの費用も必要です。

まとめ

口の中を見られる猫

歯周病や口内炎など、猫の口の中の病気の治療では「抜歯」が必要になることがあります。

投薬だけでは良くならない場合でも、抜歯をすることで炎症や痛みが治まり、食欲も戻り元気になることがあるのです。ただし、場合によっては全身麻酔が必要だったり、抜歯をしても必ず改善するわけではないことなどデメリットもあります。

愛猫の歯に関して気になることがある場合は、動物病院でどのように治療を進めるべきかよく相談をしましょう。

スポンサーリンク