猫の「偏食」について
猫の中には食の好みが強い子がいて、特定のものが好きだったり嫌いだったりするだけではなく、次のような性質を持つ猫がいます。
ネオフィリック(味の変化を好む)
常に新しい味を求めるのが「ネオフィリック」です。
猫は本来狩猟をする動物で、いろいろなものを捕食しています。いろいろなものを食べることによって必要なエネルギーを得たり栄養バランスが整ったりし、生存率が高まるのでしょう。
このような捕食動物としての名残からか、「ネオフィリック」タイプの猫は、同じご飯が続くのを嫌います。
ネオフォビア(味の変化を嫌う)
「ネオフォビア」は、新しい味覚を嫌うタイプです。
このタイプが新しいものを苦手とする理由は、毒物を避けるための本能かもしれません。同じ食べ物だけを食べることに安心感を持つため、味覚の変化を危険と感じてしまうのかもしれません。
新しいものが好きな「ネオフィリック」とは真逆ですが、猫にはどちらのタイプの偏食も見られます。
猫の食の好みには環境や幼少期の食生活など多くの要因が影響しますので、ある猫が偏食やネオフィリック、ネオフォビアだとしてもその正確な理由は分からないことが多いでしょう。
それでは、偏食によって起きるトラブルや対処法を調べていきましょう。
トラブル1.いつものフードを食べなくなってしまう
猫が体調が悪いわけではないのに急にフードを食べなくなると、飼い主さんは「いつも食べているフードなのに、ワガママなの?」と思うかもしれません。
しかしこの場合、「ネオフィリック (味の変化を好む)」や「ネオフォビア(味の変化を嫌う)」のせいだということがあります。
新しい味が欲しくなって今まで食べていたフードをもう食べない場合はネオフィリックです。
ネオフォビアの場合、たとえば、フードが酸化して今までと違う味がしたり、製造ロットが変わって微妙な味の変化がある場合などにそれまでのフードを食べなくなることがあります。
他には、体調が悪い時や薬を飲ませるためなどに無理やり食べさせられたご飯を食べなくなることもあります。猫は、イヤなことと結び付いてしまった食べ物を強く拒否する傾向があるそうです。
なお、猫は48時間以上全くご飯を食べないと、食欲不振になった元々の原因が何かに関係なく、肝リピドーシス(脂肪肝)になるリスクが高まります。
肝リピドーシスになると、さらに体調も悪く食欲もなくなってしまいます。肥満の猫では特に注意が必要です。月齢にもよりますが子猫が12時間以上、成猫が24時間以上何も食べない場合には、動物病院を受診しましょう。
対策としては、まずは嫌がるフードを違うフードに変えてみましょう。また、同じフードでもお湯でふやかして食感を変えるなど、少しの変化をつけるだけで食べてくれることもあります。ネオフィリックの猫の場合、何種類かのフードを用意して飽きないように常にローテーションさせる方法もあります。
また、フードを電子レンジで人肌程度に温めて香りをたたせると、猫は食欲をそそられるそうです。特定のフードしか食べなくなってしまうと、同じフードを買えない時や療法食を食べさせたい場合などに困ってしまいますよね。ネオフォビアの猫では、同じトッピングをすれば違うフードも食べられるようにしておくと良いでしょう。
体調の悪い時や嫌がる薬を飲ませる時に強制的に食べさせるフードは、治った後に食べて欲しいフード以外のものにすると良いでしょう。
トラブル2.人間の食べ物を欲しがるようになる
猫が偏食でご飯を食べないとき、人間の食べ物を口にしてしまうことがあります。それは、「何か食べさせなければ…」と思う飼い主さんの行動だったり、猫が自発的にした盗み食いだったり、理由は様々あるでしょう。
しかし、もし猫がそのときにその味を気に入ってしまったら、猫はそのたった一度の食事体験のせいで、以降は人間の食べ物を欲しがるようになってしまうことがあります。
人間の食べ物を好むようになってしまうと、猫用フードを食べなくなるかもしれません。また猫にとって人間の食べ物は有害なこともあります。すぐには倒れなくても、長年の蓄積で病気のリスクが高まる危険性もあります。
偏食の猫こそ、人間の食べ物を与えるのは厳禁!また、猫が食卓や食品庫を荒らすことが出来ないように環境を整えるといった配慮も必要です。
トラブル3.肥満や栄養不足による体調不良
偏食の猫の救世主といえば、おやつではないでしょうか。ペーストやフレークタイプなどいろいろな種類があり、食欲がなかったり食のこだわりが強くてもおやつなら食べてくれる猫は多いものです。
しかし、あまりおやつに頼っていると、猫が肥満になってしまうこともあります。おやつの量は、1日の摂取カロリーの20%以内が目安ですが、ご飯を食べないからとおやつを与えると、気づかない内にカロリーオーバーになってしまうことがあります。
また、「間食」「副食」として作られているものは猫にとって栄養バランスがとれたものではありません。猫の食いつきを重視して作られているので、おやつの味に舌が慣れてしまうと偏食が加速することも。
おやつに頼り過ぎるとあっという間に肥満や栄養不足におちいりやすいので、偏食の対策を目的におやつばかりを与えるのは避けましょう。
まとめ
人間の感覚だと「猫は同じもの(ドライフード)だけを毎日食べていてカワイソウ」と思いがちです。
しかし、猫が自らフードを食べているのであれば、いつも同じフードで問題はありません。偏食のせいで、愛猫に栄養バランスのとれたフードを食べさせるのに苦労している飼い主さんもいらっしゃるでしょう。
「ネオフィリック(味の変化を好む)」な猫にはフードをローテーションして与えられるように用意をしたり、「ネオフォビア(味の変化を嫌う)」の猫には「これをのせてあげれば食べる」というトッピングを見つけてあげると良いでしょう。
『猫は、生後6カ月の間に食べたことのあるものを好んで食べる。その間に食べたことはないものは食べたがらない。』とも言われています。
今現在、子猫と暮らしている人や子猫を迎える準備をしている人は、小さい頃に人間の食べ物を与えないよう注意したり様々なタイプや原材料のキャットフードを食べさせることで、将来偏食になる可能性を減らすことができるかもしれませんよ。