猫と人の痔について
「痔」とは、肛門にかかわる病気の総称で、本来は二足歩行の人間特有の病気とされています。理由は、二足歩行の姿勢だと、肛門にかかる圧力が大きいからです。そのため、四足歩行の猫や犬には「痔」という概念がありませんでした。
しかし実際は、肛門や排便の不具合で通院する猫がいます。血便だと、結腸炎や直腸炎、腫瘍からの出血や食物アレルギー、寄生虫や感染など、疑わしいものは多種多様です。そしてその中でも、猫の肛門の皮膚が裂けている状態や肛門内が化膿しているものは、人間でいう「痔」と同じ症状です。
人間の「痔」は、大きく分けて「いぼ痔」「切れ痔」「痔ろう」の3タイプに分かれます。人間に最も多い痔の種類はいぼ痔で、その原因は二足歩行特有の姿勢や習慣などが見られます。
一方、猫がなりやすい痔の種類は、いぼ痔以外の切れ痔と痔ろう。「猫は痔にならない」という説は、そんなところから言われはじめたのかもしれませんね。
猫の痔の種類と症状
猫がかかりやすい痔の症状は、先述したように切れ痔と痔ろうです。それぞれの症状を解説していきます。
切れ痔
肛門の皮膚が切れてしまう切れ痔。別の呼び方では「裂肛」とも呼ばれています。
切れ痔は排便後の便に血液が付着するため、比較的発見しやすいものです。おしりに血がついていることもあります。
また、軽症のものだと、病気というよりすり傷や切り傷に近い感覚です。
痔ろう
猫の肛門には、左右にひとつずつ袋状のものがありこれを「肛門腺(こうもんせん)・肛門嚢(こうもんのう)」といいます。そこに分泌液が溜まり、本来は便と一緒に排泄されるのですが、うまく排泄できずに詰まり、細菌感染すると膿が溜まってしまいます。これが痔ろうの前段の状態です。
痔ろうは、肛門が赤く腫れたり、膨らんだり炎症することで始まります。肛門の中と外がトンネルでつながると、肛門ではない皮膚のほうから膿が出て、悪化すると、この部分から便も出てきます。
猫が痔になる原因と予防策
猫が痔になる主な原因は、便秘と下痢です。痔の種類によって予防策が多少ことなるので、種類別に整理します。
切れ痔の原因と対策
猫の切れ痔の大敵は「便秘」です。
腸内で硬くなってしまった便はスムーズに排便されず、排便時に肛門周辺を傷つけ、さらに肛門からの出血や血便が出て、排便痛も起こしてしまうのです。
切れ痔の対策は、猫が便秘にならないように水分調整を行うこと。水をあまり飲まない猫には、ウェットタイプのフードを与えたり、ドライフードを白湯でふやかすなどで水分を摂らせることができます。
ほかにも、便秘対策のフードや猫用のサプリメントもあるので、かかりつけの獣医師に相談してください。便が軟らかくなれば排便の負担を軽減させることができますよ。
痔ろうの原因と対策
猫の痔ろうは、便秘や下痢で便が肛門線や肛門嚢(こうもんのう)に入り込んでしまうと、発症のリスクが高まります。肛門嚢(こうもんのう)で細菌が繁殖して炎症をおこし、膿がたまってしまうからです。
痔ろうの対策も切れ痔と同様、フードによる便の調整をすることが大切。また猫がお尻を床にこすりつけながら歩く通称「お尻歩き」をするときは肛門線がつまっている可能性があり、痔ろうの予兆でもあります。早めに動物病院を受診することで、未然に防ぐこともできますよ。
猫の痔の治療方法
愛猫の体調変化に「もしかして痔かな?」と思ったときには、なるべく早く動物病院を受診するのが一番です。
痔が疑われるということは、便秘や下痢、血便や排泄痛などの症状があるということ。もしかしたら痔ではなく、十二指腸や胃などから出血していることもありますからね。素人判断で様子を見ず、専門医の診察してもらうのがベストです。
動物病院にて痔と診断された場合は、痔の種類や段階にもよりますが、肛門につまっている分泌液を排泄する「肛門しぼり」や投薬、重度の場合は外科手術をします。また猫の生活習慣の改善も必用なので、食事や運動などアドバイスをもらうとよいでしょう。
なお、人間でも痔に悩む方が多いので、市販薬も豊富で、中には薬を常備している家庭もありますよね。しかし、猫の痔に人間の字の薬を使うことは厳禁です。猫の痔にワセリンを塗ることが推奨されていますが、それも念のためかかりつけの獣医師に相談してからにしましょう。
まとめ
愛猫のおしりに血がついていたり、血便が出たりすると、飼い主さんは驚いてしまいますよね。もし血のついた便の採集が可能なら、便を袋に詰めて、受診時に持参するとよいでしょう。便について血液の付着の仕方や色などで、診断の参考になりますよ。
猫の痔は、便秘や下痢が大きな原因となります。食生活や運動管理の他、過度なグルーミングやストレス軽減などあらゆる面で配慮してあげましょう。
また血便は、口の中から内臓を通った肛門までのどこかで出血しているという証拠。痔以外の可能性もあるので、必ず獣医師に相談することをおすすめします。