捨て猫が減らないのはなぜ?
環境省が2020年度に行った調査では、72,433頭もの犬猫が保健所や動物愛護センターに持ち込まれたといいます。
では、なぜ捨て猫は減らないのでしょうか。今回は、その理由を5つ紹介いたします。
1.「猫ブーム」や「癒し」の煽り
ブームというものは、爆発的に人気が出た後にその波が去ってしまうもの。本来であれば、命ある動物に対してこのような言葉を使うこと自体、適切ではないのでしょう。
しかし実際には、「猫ブーム」として煽られた時期があり、加えて「癒し」というワードも強調されました。その結果、猫を最期まで育て上げるというビジョンを描く前に猫を迎え、最終的には手放してしまうというケースが生まれてしまうのです。
2.「外でも生きられる」という誤解
何らかの事情で猫と暮らせなくなってしまった時、外に放置してしまう人がいます。このような行動の背景には、どこか「猫は外でも大丈夫」という思い込みがあるのでしょう。むしろ自由に暮らせて幸せだ、と考えてしまうかもしれません。
しかしこれは大きな誤解です。家猫が外の環境に馴染むことは困難なことなのです。
更に、不妊手術をしていない猫を放してしまうことが大変な事態を招きます。
3.凄まじい繁殖力
未去勢の猫が野良化してしまうと、あっという間に子猫が生まれ、数が増えてしまいます。
猫は年に2回ほど出産することが可能で、1度の妊娠で誕生する子猫は4匹から8匹です。つまり、1年後には20匹、3年後には2000匹以上に増える可能性があります。それほど猫の繁殖力は凄まじいのです。
積極的に不妊手術を行い、1代限りの命としてお世話をする「地域猫活動」なども進んでいますが、まだまだ追いついていないのが現状です。
4.多頭飼育崩壊
猫の繁殖力が元で発展する問題は、外の猫だけではありません。家庭内における多頭飼育崩壊も捨て猫が増える原因です。
不妊手術を行わずに多頭飼育をしてしまうと、先ほど紹介したような現象が家の中で起こります。その結果、手に負えないほどの猫で溢れ、捨て猫同然の状態になってしまいます。
5.猫の高齢化
医療技術の進歩により、高齢化が進んでいるのは猫も同じこと。かつての平均寿命が4〜5歳だったのに対し、現在は約16歳にまで伸びています。
『将来的には、30歳程度まで生きられる時代が来る』とまで言われています。もちろん喜ばしいことなのですが、その反面、捨て猫が増える懸念もあります。
飼い主さんが猫を迎えた年齢によっては最後までお世話ができない可能性がありますし、ライフスタイルの変化というものも無視できません。
今現在でも「孫ができたのでいらなくなった」や「赤ちゃんが生まれたので面倒が見られない」などの理不尽な理由から手放されてしまう猫がいます。
今後、このようなケースが増える可能性は高く、捨て猫が減らない現状に拍車をかける恐れがあります。
猫を迎える覚悟と心構え
猫は素っ気ない態度を取りつつも、飼い主さんを頼りにしています。だからこそ、人間の都合や理不尽に振り回されるようなことがあってはなりません。
現在猫と暮らしている飼い主さんはもちろんのこと、これから猫を迎えたいと思っている方は次のような覚悟を持ってください。
終生飼育を成し遂げる
愛猫が最期の時を迎えるその日まで、大切に育ててあげましょう。終生飼育は如何なる動物が相手であれ、重要な責務になります。
いざという時に備える
どんなに責任感が強い飼い主さんでも、病気や怪我で入院を余儀なくされてしまったり、愛猫との生活が続けられなくなることがあるかもしれません。
そんないざという時に備えて、愛猫のお世話をサポートしてくれる人・代わりに里親さんとして育ててくれる人を探しておくことも大切です。これも、終生飼育を徹底する責任の1つになります。
猫の習性について知っておく
猫との暮らしが初めての場合は、習性や大変さについて知っておきましょう。
猫の飼育は楽だといわれていますが、実際には手がかかること・性格の個体差が激しく、同じ猫種でも個性があること・爪とぎやイタズラが本能に基づく行動であることなどは特に重要です。
実際に暮らしていけるかイメージする
2021年以前から猫と暮らす20~60代の男女3000人を対象に行ったある調査では、猫の一生(平均寿命を15.62歳とした場合)にかかる費用が264万6956円であることが明らかになりました。
あくまでもこれは平均的かつ、最低でもこのくらいはというラインです。病気や怪我による通院や、場合によっては療法食が必要になること、介護が必要になる可能性まで考慮しなければなりません。
猫を迎える前に、実際に暮らしていけるかどうかイメージしてみることが大切です。特に経済面・時間的余裕・ご自身のライフスタイルなどについて想像してみてください。
まとめ
捨て猫が減らない背景には、猫ブームの煽り・猫にまつわる誤解・繁殖力の凄まじさ・猫の高齢化などがありました。
高齢化に関しては、今後ますますの課題になっていくことでしょう。安易に猫を迎えるのではなく、その暮らしについて想像し、終生飼育が可能かどうか見極めることが重要です。
ライフスタイルなどを考慮して、いざという時に備えることも大切なこと。これからの時代は、甘えとは違った意味のサポーターがいて初めて猫の飼育が成り立つようになるかもしれませんね。