飼い主なら覚えておきたい!シニア期に入った猫の「食事介護」 方法や注意点を解説

飼い主なら覚えておきたい!シニア期に入った猫の「食事介護」 方法や注意点を解説

猫の介護は自分には縁遠いと感じる人も多いかと思いますが、じつはどの猫ちゃんにも食事の介護は必要なのです。今回は、シニア期の猫と暮らす飼い主さんに知ってほしい食事介護の方法や注意点について解説します。

猫の食事介護とはどのようなこと?

食事を与える飼い主と猫

みなさんは「猫の介護」と聞くと、どのようなことを想像するでしょうか?おそらく、多くの飼い主さんは「猫のお世話をしてあげる」という姿を思い浮かべるかと思います。

「食事の介護」に限定した場合には、「猫にご飯を食べさせてあげる」といった姿を想像するかもしれませんね。もちろん、それも猫に対する介護で間違いはありません。

しかし、動物介護士の視点からお話すると、そうした「身の回りの世話や介助をしてあげる」ということだけが介護ではないのです。

例えば、今回お話する「食事の介護」の場合で言うと、シニア期に入って愛猫の食欲が落ちた場合に、ご飯の内容を切り替えてあげたり、食器を猫が食べやすい種類に変更したり…といったものでも「猫の食事介護」のうちに入ります。

つまり「うちの子は自力で食べられるから介護は必要ない」と安心しきっている飼い主さんにも、実はできることがたくさんあるということです。

これから詳しくお話していきますので、ご自宅の猫ちゃんにはどのような食事介護が必要なのかを確認してみてくださいね。

自力で食べられる猫への介護

食事中の猫

まずは、自力でご飯を食べられる猫ちゃんへの食事介護について見ていきましょう。

先ほどもお話したように、食べさせてあげる必要はなくても猫ちゃんの健康を守るためにはさまざまな工夫が必要です。

シニア用フードへの切り替え

まず、シニア期に入った猫ちゃんの飼い主さんに行ってほしいのが「シニア用のご飯に切り替える」ということです。

シニア期に入ったばかりの猫ちゃんでは、まだまだ元気で若く感じることが多いかもしれません。

しかし、それでも猫は7歳を過ぎた頃から徐々に体に衰えが出始めます。それは、視力や聴力など見ていて気づくようなものだけではなく、体の中の機能でも同じです。

摂取した食事をエネルギーに変換する代謝機能や、栄養を体に吸収させたり不要なエネルギーを外に出したりする消化機能も、シニア期に入ると少しずつ低下していきます。

そのため、7歳を過ぎても今まで通りのご飯をあげていると、肥満につながったり内臓に負担をかけたり…というケースもあるのです。

飼い主さんに悪気はなかったとしても、知らない間に大切な愛猫の健康を害してしまうのは、とてもつらいことですよね。

どんなに元気に見える猫ちゃんでも、7歳を過ぎたらシニア用のご飯への切り替えを検討してみましょう。

食器の変更

先ほどもお話しましたが、どんなに元気な猫ちゃんであっても、シニア期に入ると体は徐々に衰えていってしまいます。

これまでは何も問題なく背中や首を曲げてご飯を食べていた子でも、もしかしたら「この体勢がつらい」と思っていることもあるかもしれませんよ。

自力で食べられる子であっても本当に今までのように難なく食べているのか、飼い主さんはもう一度よく観察してみましょう。

注意深くチェックしてほしいのは、以下の4つです。

  • 食べこぼしが多い
  • 食事に時間がかかってしまう
  • ご飯を食べながら、むせることがある
  • まだ食べたそうにはしているが、途中で食事をやめる

愛猫にこのような様子が見られた場合、今使っている食器が合っていないことが考えられます。

シニア期に入った猫の食器には、ラクな姿勢を保てるように高さがあり、底に少し角度がついたものが最適です。

首や背中を曲げずにご飯を食べることで、体がラクなだけではなく吐き戻しを予防することにもつながりますよ。

嗜好性を高める工夫

シニア期に入って食欲が落ちてしまう猫ちゃんも珍しくはありません。

その原因としては、次のようなことが考えられます。

  • 運動量が減って必要なエネルギーも減るため
  • 嗅覚が低下して、ご飯の匂いがわからない
  • 口腔内のトラブル
  • その他の病気

人でも猫でも、体に必要なエネルギーが体内に残っていない状態だとお腹が空いて食欲が増します。

シニア期に入ると、そもそもの運動量が減るので、それに伴い必要なエネルギーも少なくなり食欲が落ち着く…というケースはとても多いです。

また、犬ほどではないものの猫もとても嗅覚の優れた動物なので、嗅覚の低下によって食欲が湧かないということも考えられます。

この2つが考えられる場合には、猫の食欲が湧きやすいようにご飯を人肌程度に温めて匂いを出してみるなど「嗜好性を高める工夫」をしてみましょう。

ご飯をあげる場所をいつもと違うところにしてみるだけでも、猫ちゃんの気分が変わり食欲が増すこともありますよ。

ただし、食欲が落ちて明らかに元気もない場合には、口腔内トラブルやその他の病気が原因ということも考えられます。

ご飯を十分に食べられないと命にも関わりますから、なるべく早くかかりつけの動物病院で診てもらうようにしてください。

食欲にはよく注目して

食欲が落ちてしまった猫ちゃんへの介護についてお話しましたが、中には「シニア期に入ってから食欲が増した」という猫ちゃんもいるかと思います。

「元気だし、たくさん食べられるのはいいこと」と考える飼い主さんもいらっしゃるかと思いますが、安心するのはまだ早いかもしれません。

というのも、こうしてシニア期に入って食欲が増した場合やたくさん食べているのに痩せてしまう場合、認知症や糖尿病・甲状腺機能亢進症などの病気が潜んでいることが考えられます。

シニア猫ちゃんの食欲は増え過ぎも減り過ぎも何らかのサインだと思って、飼い主さんは普段から注意深く観察しておきましょう。

自力で食べられない猫への介護

食事と猫

寝たきりの状態などで、自力でご飯を食べられない猫ちゃんの場合、噛む力がない子でも無理なく飲み込める「流動食」を与える必要があります。

ですが、流動食は誤った与え方をすると誤嚥を起こす危険もあるため、飼い主が自己流で行うのは絶対にやめましょう。

猫への流動食は、基本的には獣医師の診断を受けてから与えることになりますから、まずはかかりつけの動物病院での指示に従ってくださいね。

流動食が初めての場合には、与え方の詳細などもレクチャーしてくれる動物病院がほとんどなので安心してください。

愛猫の食事介護で気をつけたいこと

最後に、愛猫への食事介護を行う際に飼い主さんに気をつけてほしいことについてお話します。

自力で食べられる子でも自力での食事が難しい子でも共通していることですので、ぜひ最後まで読んでいただけたら幸いです。

食後の口周りのケアも忘れずに

シニア期に入ると体の機能だけではなく、免疫力も低下していきます。

そのため、普段からさまざまな病気への対策が必要になるのですが、中でも「歯周病」はシニア期の70%以上の猫が抱えているとも言われている病気です。

歯周病は、その名前から「口だけの病気ならすぐに治る」と安心してしまう飼い主さんも多いです。

しかし、実際には他の病気に発展することもあり最悪の場合には死にいたることも……。

自力で食べられる子にもそうでない子にも、食後には口周りのケアをしてあげるように心がけましょう。

歯磨きを嫌がる場合でも、市販の猫用歯磨きガムならば喜んで噛んでくれる子が多いです。

ご自分の猫ちゃんに合ったお口のケアを選んでくださいね。

介護の目的を考えよう

食事の介護に限ったことではありませんが、多くの飼い主さんは「介護」と聞くと「この子の身の回りのことを全てやってあげないと」と気張ってしまいがちです。

ですが、まずは愛猫への介護の目的は何なのかをもう一度考えてみましょう。

ご家庭によってさまざまな考え方もあるかと思いますが、最も忘れてほしくない目的は「愛猫の最期の時まで、その子の生活の質を保つこと」です。

自分で食べて、自分で排泄をして、自分で歩いて…そんな当たり前の行動であっても、猫にとっては「できることならば最期の時まで自分で続けていたいこと」なのです。

「愛猫のために全てをしてあげたい」と考えるのは、とても素晴らしい心意気です。

ですが、猫ちゃんが「自分のできることまで奪われてしまった」と感じてしまっては本末転倒ですよね。

介護は、飼い主さんと猫ちゃんが幸せに暮らすための手段の1つです。

食事の介護でもそのほかの介護でも、飼い主さんは「愛猫のできないことをサポートする」というスタンスを忘れないようにしましょう。

執筆者情報

写真
Rapport Ciel
代表・ペットロスカウンセラー・ペットケアアドバイザー
松永由美

以前はトリマーとして従事していたが、愛犬の死をきっかけにペットロスカウンセラーへと転身。現在では、Rapport Cielの代表として、ペットロスカウンセラーやグリーフケアを行う一方で、Webライターとして動物に関する様々な記事の執筆を行う。
著書「ペットロスで悩んだときに読んでほしい愛犬の死がきっかけで平凡主婦がペットロスカウンセラーとなって起業した話: 「意外」と驚かれるペットロスとの向き合い方 (ラポールブックス)

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