シニアになった猫がかかりやすい病気と予防のためにできること

シニアになった猫がかかりやすい病気と予防のためにできること

猫も人と同じで、シニアになると徐々に免疫力などが低下していきます。そこで今回は、動物介護士資格を持つペットケアアドバイザーが、シニアの猫がかかりやすい病気と予防のためにできることについてお話します。

シニア猫は病気にかかりやすい?

ぐでっとしてる猫

人でもそうですが、猫でも年齢を重ねると病気にかかりやすいイメージを持たれている方も多いかと思います。

実際にはどうなのかというと、やはり若い頃に比べるとシニア期の猫では病気にかかりやすかったりケガをしやすかったりすると言えるでしょう。

と言うのも、猫も人と同様に、年齢を重ねると免疫力・筋力などが徐々に低下します。

さらに、関節や内臓の機能にも衰えが出始めるので、今までは平気だったようなほんの些細な病原体などがきっかけで病気につながることも増えるのです。

でもだからと言って、「シニア期に入ってからの体調不良はどうにもならない」という訳ではありません。

病気の種類にもよりますが、日頃のケアによって予防したり進行を遅らせたりすることは十分に可能なこともあります。

見た目はいつまでも可愛らしい愛猫でも、生きている限り老化は防げません。飼い主のみなさんはそうした現実も受け止めながら、ご自宅の猫ちゃんのためにできる対策を考えていきましょう。

シニアの猫がかかりやすい病気

動物病院と猫

シニア期に入った猫は、若い頃に比べて病気にかかりやすいとお話しました。では、具体的にはどのような病気が増えるのでしょうか?詳しくお話していきます。

慢性腎臓病

猫の病気の中でも群を抜いて有名なのが「慢性腎臓病」で、シニア期に入った猫の35%が腎臓病に陥っているとも言われているくらいです。

「慢性腎不全」と呼ばれることもあるこの病気は、赤血球を作ったり体の中の不要な毒素を尿に送ったりする腎臓の働きが悪くなり、最悪の場合には死につながります。

なぜシニア期の猫が腎臓病に陥りやすいのか、明らかな理由は分かってはいません。

しかし一説では「元々砂漠で暮らしてきた猫は水分の摂取量が少ないため、腎臓への負担が大きくなるのではないか」と言われています。

慢性腎臓病の初期には下記のような症状が見られますので、シニアになった猫ちゃんのいるご家庭では十分に注意して観察しましょう。

  • 食欲がない
  • 水を飲む回数や量が増える
  • おしっこの回数や量が増える
  • おしっこの色が薄い
  • 体重が減る
  • 嘔吐や下痢をする

慢性腎臓病が原因で一度体内の組織が壊れてしまった場合、それを元に戻すことは現在の獣医療ではできないと言われています。

そのため、慢性腎臓病は早期に発見して、初期の段階から進行を緩やかにする治療を行うことが重要です。

尿路結石

先ほどもお話した腎臓から尿管・膀胱・尿道など、尿が通っていく道を総称して「尿路」といいます。

尿路結石は、この尿路内にカルシウムなどの成分が結晶として集まり結石となってしまう病気です。シニアに限らず猫に多い病気ですので、飼い主さんは普段から愛猫の体調やトイレの様子を確認することが大切です。

結石の大きさは砂粒くらいの大きさの場合もあれば、数センチほどの大きな石になってしまうこともあります。

どちらにしても、尿路内を傷つけたり詰まらせたりしてしまうため、猫ちゃんが排尿をする際には激痛を伴います。

  • おしっこに血液が混じっている
  • 排尿時に痛がって鳴く
  • トイレ以外の場所でおしっこをする

これらの症状があった場合には尿路結石を疑い、早めにかかりつけの動物病院を受診するようにしましょう。

甲状腺機能亢進症

先ほどお話した腎臓病に次いで、シニア期の猫ちゃんに多いと言われているのが「甲状腺機能亢進症」というホルモンの病気です。

甲状腺機能亢進症になると、甲状腺という器官からホルモンが過剰に分泌されることによって、必要以上に新陳代謝を活発にしてしまいます。

すると、きちんとご飯を食べているのに痩せてしまったり、高血圧につながったり、攻撃的になったりなどの症状が見られるようになるのです。

シニア期の猫ちゃんのいるご家庭でよく聞かれる「うちの子は歳だけれど食欲もあるし元気」という言葉。しかし、これがじつは甲状腺機能亢進症によるものだった…というケースは決して珍しくはありません。

早期に発見して継続的に治療を行うことで、甲状腺ホルモンの分泌をコントロールすることは可能です。

元気に見える猫ちゃんであっても、シニアになったら定期的に健康診断を行うと安心ですよ。

悪性腫瘍

「がん」という呼び方で有名な悪性腫瘍も、シニア期になった猫ちゃんが陥ることの多い病気の一つです。

悪性腫瘍では、別の場所に移動し増殖してしまう「転移」、治ったと思ったらまた発生する「再発」などもあるため、早期発見・治療がとても重要だと言われています。

また、人と同じく猫の場合でも、悪性腫瘍には消化器・皮膚・泌尿器・呼吸器・血液など、さまざまな種類があります。

その中でも猫に特に多いとされているのが「リンパ腫」「皮膚腫瘍」です。愛猫の体にしこりや腫れが確認できたり、疲れやすい・元気がないなどの症状が見られたりした時には、早めに動物病院を受診しましょう。

関節炎

ジャンプが得意でまるでバネのような関節を持っている猫であっても、歳を重ねるにつれて筋力や関節の軟骨部分が衰えていきます。

それによって関節炎を引き起こすことも珍しくはありません。

  • ジャンプをしなくなった
  • 毛繕いや爪研ぎなどが減った
  • 触られるのを嫌がる
  • 遊ぶことが減った

これらの様子は一見「歳のせいかな?」と思ってしまうものばかりですが、じつは関節が痛むのが原因になっているのかもしれません。

適切な治療を受けることはもちろんですが、関節炎の場合には家の中を猫ちゃんが過ごしやすいように整えてあげることも大切です。

トイレや部屋にある段差にスロープをつけてみたり、愛猫の居場所や寝床を低い位置に変えてあげたりなどの工夫をしてみましょう。

歯周病

人でもよく耳にすることのある歯周病はその名前から「口の中だけの病気」と思われがちですが、細菌性の病気のため全身に影響を及ぼすこともあり、最悪の場合には死に至る恐ろしい病気です。

若いうちにも起こり得る病気ですが、シニアになると唾液の分泌が減るため歯石ができやすくなったり免疫力が落ちたりすることから、特に陥りやすいと言われています。

  • 口臭が気になる
  • 歯肉が赤く腫れている
  • 歯がグラグラしている
  • 鼻から膿が出てくる

これらの症状があった場合には、迅速にかかりつけの獣医師に診てもらうようにしてください。

予防のためにできること

シニアになった猫がかかりやすい病気についてお話してきました。年齢を重ねて体に不調が出ることは、とても自然なことです。

その一方で、愛猫の「生活の質」を保ち最期の時までその子がその子らしく生きていけるよう、一緒に暮らす飼い主は気を遣ってあげることも重要ですよね。

最後に、シニアになった愛猫に起こり得るさまざまなトラブルを予防したり早期に発見したりするため、私たち家族ができることについてお話します。

家族による体調チェック

繰り返しになりますが、シニア期に入ると体に不調が出てくることも多くなります。

しかし、そうした不調が見えた時にも「シニアだから」と済ませてしまうのではなく、「何か病気が隠れているのではないか」と疑うことが重要です。

特に猫ちゃんは体の不調を隠すのが得意な動物で、愛猫を亡くした後で「もっと早く気づいてあげられてたら…」と後悔する飼い主さんも珍しくはありません。

  • ごはんはきちんと食べられているか
  • 排泄に問題はないか
  • 体を痛がってはいないか

これらのことを常に頭の隅に置くようにし、適度に愛猫とスキンシップをとりながら確認していきましょう。

定期的な健康診断

ご家族が体調チェックを行うことが大切だとお話しましたが、素人目ではどうしても見逃してしまう部分もあるのは仕方のないことです。

「おかしい」と思った時だけではなく見た目には何も問題がない時でも、シニア期に入ったら定期的に動物病院で健康診断を行うようにしましょう。

猫ちゃんの飼い主さんには「うちの子は動物病院が苦手だから」と健康診断をつい避けてしまう方も多くいます。

しかし、「あの判断がもっと愛猫に苦痛を与えることになってしまった」と嘆く飼い主さんも珍しくはないのが事実です。

確かに、家で過ごすことを好む猫にとって、動物病院の受診や健康診断にはそれなりの負担やストレスがかかります。

しかし、「何が愛猫のためになるのか」を飼い主さんやご家族はよく考えるようにして、悔いのないようにシニア期の愛猫との楽しい暮らしを守っていきましょう。

執筆者情報

写真
Rapport Ciel
代表・ペットロスカウンセラー・ペットケアアドバイザー
松永由美

以前はトリマーとして従事していたが、愛犬の死をきっかけにペットロスカウンセラーへと転身。現在では、Rapport Cielの代表として、ペットロスカウンセラーやグリーフケアを行う一方で、Webライターとして動物に関する様々な記事の執筆を行う。
著書「ペットロスで悩んだときに読んでほしい愛犬の死がきっかけで平凡主婦がペットロスカウンセラーとなって起業した話: 「意外」と驚かれるペットロスとの向き合い方 (ラポールブックス)

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