猫の「行動診療科」って?
猫の「行動診療科」は、猫が問題行動を起こし、飼い主がどうしていいかわからず困ってしまった時に相談できる猫の心療内科、精神科のようなものです。
お迎えしてからずっと家族になつかず警戒してばかりいる、あるいはある時からイタズラや鳴き声が激しくなったなど、何かおかしいと感じたら、原因があるのしょう。その原因を探り、改善するための診察・治療を行うのが行動診療科なのです。
専門的な知識と経験を持ち合わせた獣医師がカウンセリングや生活指導、薬の処方を行うことで、猫ができるだけ心穏やかに安定した状態で生活できるように導きます。その結果、問題行動が減ったりなくなったりし、猫も家族も落ち着いて暮らすことができるようになることを目指します。
行動診療科では、事前に問診票に記入しておくことが多いようです。問診票をもとに、時間をかけて飼い主さんとのカウンセリングを行います。また、診察室での猫の様子や自宅での様子の動画なども見て、問題行動の原因を特定したり治療方針の提案をします。
飼育環境の改善や飼い主と猫との触れ合い方などの生活指導が問題行動の主な解決方法となることが多いようですが、抗不安薬などの薬やサプリメントを服用することもあります。また、病気が問題行動の原因となっていることもあり、その場合にはその病気の治療を行います。問題行動の原因となっている病気があるのかないのかを判別することは、行動診療科での診察の基本となります。
日本では日本獣医動物行動研究会が2013年に獣医行動診療科認定医制度を発足させたばかりなので、初めて聞くという方も多いかもしれませんが、行動診療を行う動物病院も少しずつ増えています。
「行動診療科」を利用すべきタイミングとは
では、猫がどのような状態の時に行動診療科を受診したら良いのでしょうか。
1.猫の健康を害する恐れがある時
猫の問題行動とは、どこででも爪とぎをしてしまう、トイレで排泄できないなどの他、同居猫や飼い主に攻撃的になるなどです。
中にはグルーミングのし過ぎで毛が抜けてしまったり皮膚がただれたりするなど、自分の体を傷つけてしまうような問題行動もあります。毛布などの布製品をかじって食べてしまうこともあります。このように、自分の体を傷つけたり異物を口にすることなどは、猫の健康に害を与えてしまいますね。
放っておいたらひどくなってしまうかもしれません。その前に、かかりつけ医や行動診療科を受診しましょう。
2.飼い主が手に負えないと感じた時
猫の問題行動は、飼い主の工夫で乗り越えることができる場合も少なくありません。
しかし、問題行動の原因が飼い主自身では思いもよらないようなことであったり、投薬が必要なほどに問題が大きい場合などは、飼い主だけでは何をしてもうまくいかないこともあります。
たとえば、短時間でも留守番ができない、飼い主から一時も離れられない、極度に臆病でいつも何かに不安を感じている、家族にもなつかない、夜鳴きがひどいなどの問題行動は、飼い主の日常生活にも支障が出かねません。また、猫の鳴き声はご近所トラブルのもとになることもありますね。
このように、ご自分で何をしても改善できずにどうしたら良いかわからない状態になってしまった時は、ぜひ行動診療科で相談してみて下さい。
まとめ
猫の問題行動の多くは、猫が持つ習性によるもの。そのため、家の中を荒らされたり大きな声で鳴かれてしまうと「問題行動」と判断されてしまう場合もありますが、猫にとっては極めて正常な行動であることが多いのです。ですので、猫の問題行動は、飼い主が事前に対策しておいたり猫を正しく理解していれば問題とならないことが多いものです。
しかし、あまりにもイタズラや臆病な性格、それ故の攻撃性の度が過ぎる場合は、専門家の助けが必要になります。また、重度のストレスから健康被害が起きていたり病気が原因で問題行動が生じている場合は、その治療も必要です。
もしこのように猫の問題行動が自分では改善できずに困ってしまった時は、猫の行動診療科を探してみて下さい。