猫の『自律神経障害』ってどんな病気?その症状や原因・予防策など5つ

猫の『自律神経障害』ってどんな病気?その症状や原因・予防策など5つ

猫の「自律神経障害」という病気をご存知でしょうか。今のところ原因が不明で、予防も治癒させることも難しい病気です。今回は、猫の自律神経障害について、その概要や症状、原因、予防策などを解説します。

1062view

SupervisorImage

記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

1.猫の自律神経障害とは

餌を取ろうとする猫

私達は、思った通りに動いたり食事をしたりと、自分の意思で身体を操ることができっています。しかし、呼吸や血液循環、食べ物の消化、体温の維持、ホルモン分泌などは、自分の意思とは全く関係なく、自律神経がコントロールしています。

猫も同じように、自律神経により生命活動が維持されています。しかし、この自律神経に障害が起こってうまく機能しなくなり、さまざまな体の機能が正常に働かなくなる病気が、自律神経障害です。

人でよく聞く「自律神経失調症」と名前は似ていますが、自律神経失調症は様々な理由で自律神経(交感神経と副交感神経)の働きのバランスがとれなくなり体の様々な機能に異常が現れている状態を指すのに対し、「自律神経障害」とは何らかの理由で自律神経の細胞に障害が起き、その神経が関わっている体の機能に異常が起こっている状態を指します。

猫の自律神経障害は、1982年にイギリスで初めて報告され、その後ヨーロッパの他の国やアメリカなどでも散見されるようになりました。日本でも、「自律神経失調症と診断された猫の例」としていくつかの報告があるようです。猫の自律神経障害は「キー・ガスケル症候群」とも呼ばれています。

同じような症状の病気が馬や犬、ウサギなどでも見られていて、どれも同じ原因で発症している病気だと考えられていますが、どの動物においても原因は特定されていません。

猫の自律神経障害はどの年齢でも発症する可能性がありますが、比較的若い猫に多く見られる傾向があります。今のところ、好発品種や性別による発症率にも大きな違いは認められていません。

2.猫の自律神経障害の症状

食欲不振の猫

自律神経がコントロールしているのは、心臓、肺、眼、消化器官、膀胱、肝臓、腎臓、脾臓などのあらゆる臓器の活動で、分かりやすいところだと涙や汗、唾液、ホルモンなどの分泌や消化管運動、体温維持、心拍にも関与しています。

そのため自律神経障害では、どの神経に障害があるかによってさまざまな症状があらわれます。猫の自律神経障害では、腸管神経系やその他の抹消神経、中枢神経や一部の運動神経に染色質溶解や細胞の変性、消失が見られます。

猫の自律神経障害では下記のような症状が見られると言われています。

  • 元気消失
  • 心拍数低下
  • 瞬膜が出たままになる
  • 光の状態と無関係に瞳孔が開いたままになる
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 胃腸が働かなくなる
  • 下痢、便秘
  • 巨大食道、巨大結腸
  • 嘔吐、吐出(食べた物が胃に到達する前に吐き戻す)
  • 誤嚥性肺炎
  • 排尿障害
  • 尿や便の失禁
  • ドライアイ(涙の減少)
  • 口腔内や鼻の粘膜の乾燥(唾液の減少) など

3.猫の自律神経障害の原因

ぐったりした猫

猫の自律神経障害の原因は、解明されていません。血液検査、尿検査、ホルモン検査を行っても、原因となる異常はみられません。

2017年に、イギリス国内の3か所から集められた自律神経障害の猫達の血液や食べていた物を対象に、原因を探る調査の研究結果が発表されました。

猫の自律神経障害と同じ原因で起きていることが強く疑われている馬のグラスシックネスでは、ボツリヌス菌が産生する毒素や血液中の特定のアミノ酸濃度の低下と関連している可能性が示されています。

そのため、その2つについて自律神経障害を発症した猫と同居猫、全く関連のない無症状の猫において調査が行われましたが、結局原因は分からず、未知の神経毒(カビ毒)もしくは生体異物が関わっている可能性が高いという結論になったとのことです。

【2017年に発表された論文】
【2017年に発表された論文】

McGorum BC, Symonds HW, Knottenbelt C, Cave TA, MacDonald SJ, Stratton J, et al. (2017) Alterations in amino acid status in cats with feline dysautonomia. PLoS ONE 12(3): e0174346.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0174346

獣医師:木下明紀子

4.猫の自律神経障害の診断・治療

検査を受ける猫

自律神経障害では、自律神経の神経細胞に上記のような変化が見られますが、これらは神経を病理組織学的に検査する(神経の一部を採取して顕微鏡で観察する)必要があるため、生前には行えません。

そこで、動物病院では血液検査、X線検査、超音波検査、シルマーティア試験、尿検査などを行い、さまざまな症状や経過を併せて考え、症状の原因となっている他の疾患がないことを確認することで診断するしかありません。

また、自律神経障害だと診断されても治癒させるための治療法はなく、確認できた症状を緩和させるための対症療法を行うことしかできません。

そのため、治療を行っても予後がよくないことも多くあります。誤嚥性肺炎などを起こして、そのまま死に直結することもあります。回復した猫もいるそうですが、回復するまでに何年も介護を必要とする場合もありますし、重症の場合には助かるケースは少ないそうです。

5.猫の自律神経障害の予防策

スキンシップされる猫

原因が解明されていないため、残念ながら自律神経障害に対する有効な予防策もありません。

ごく一般的な健康管理である、栄養バランスのとれた食事、適度な運動、ストレスフリーな住環境の整備と、定期的な健康診断ならびに飼い主さんの日々のスキンシップによる異常の早期発見・早期治療を心掛けましょう。

まとめ

瞳孔が開いている猫

猫の自律神経障害という病気について、その概要や症状、原因、診断・治療、予防策などを解説しました。

残念ながら原因が分かっていないため、有効な治療法や予防策がなく、治療を続けてもなかなか厳しい病気なのは事実です。

しかし、愛猫の健康管理をしっかりと行い、わずかな変化にも早期に気付くことで、早めに動物病院に相談できるように日々心掛けておくことが、自律神経障害やその他の様々な病気の早期発見と効果的な治療につながることになるでしょう。

スポンサーリンク