猫の目頭にある白い膜の正体
猫はとても愛らしい顔が特徴的です。その愛らしさを決定づけている要因の一つが、大きい目ではないでしょうか。
猫は、顔の大きさの割には大きな目をしています。そして、ゴールド、グリーン、ブルーなどの多彩で美しい瞳の色が特徴的です。
猫の目と私達人間の目を比較した時に、すぐに気づく違いが白目の有無ではないでしょうか。
人間の目は、明らかに白い眼球の中に小さな瞳(虹彩)がありますが、猫の白目はまぶたで隠されてしまい殆ど見えません。
しかし、もう少し良く観察してみると、もう一つの大きな違いに気付きます。
それは、猫の目頭のあたりにある白い膜です。この膜は「瞬膜」と呼ばれるもので、正式名称では「第三眼瞼」と呼ばれる3番目のまぶたです。
瞬膜は、私達人間や一部の霊長類にはありませんが、猫や犬など多くの哺乳類や、両生類、鳥類、爬虫類や一部の魚類に見られる器官です。
猫のまぶたの構造
人間のまぶたは上下に2枚あり、上まぶたは下方向へ、下まぶたは上方向へと動くことで目を閉じたり開いたりします。
猫のまぶたも同じように上下に動く2枚のまぶたがありますが、さらにその下に、前述の瞬膜があります。
通常の状態では、目頭のあたりにわずかに見えるだけなのですが、上下のまぶたが閉じると瞬膜も中央の方向へ広がり、眼球の表面を覆った状態になります。
そのため、猫が眠そうな時などには、いつもよりも瞬膜が少し広がった状態に見えることがあります。
一瞬病気かと思われるかもしれませんが、その後いつも通りの状態に戻るのであれば、それは単なる生理現象なので心配する必要はありません。
それでは、瞬膜の役割について見ていきましょう。
「瞬膜」の役割
1.乾燥防止
瞬膜には、瞬膜腺(第三眼瞼腺)と呼ばれる腺があります。この腺からは、涙液の約30%が産生されています。
そして、まばたきをすることでこの腺から分泌される涙液が眼球にまんべんなく行き渡り、眼球が乾燥しないように防いでいます。
また眼が潤うことで栄養が眼球にいきわたり、猫の魅力の大きな要素となっている美しい目を守っていると考えられています。
2.異物侵入防止
人間は、上下のまぶたの双方にまつげが生えていて、異物が眼球に侵入することを防いでいます。
しかし、猫のまつげは上まぶたにしか生えていません。そのため、目に異物が入りやすいといわれています。
瞬膜は、異物の侵入を防いだり、眼球を覆う際にモップのように異物を取り除く役割を果たしています。また、雑草や敵からの攻撃から角膜を守る役割も果たしています。
3.感染予防
猫の表皮や口の中、目の表面などには、常在菌といって多くの細菌や真菌が生息しています。
これらの常在菌は、猫が健康に暮らしていくために役に立っているのですが、免疫力が低下したような場合には、感染症の原因になることがあります。
瞬膜にあるリンパ小節が、涙と一緒に抗体などの免疫媒体物質を分泌することで、眼の感染症を防ぐ働きもしています。
「瞬膜」に関するトラブル
瞬膜に下記のような症状が見られる場合は、目の病気である可能性があります。
もし愛猫の目を見て下記のような症状が認められた場合は、できるだけ早く動物病院で診てもらうようにしましょう。
- 瞬膜の色が赤みがかっている
- 左右の目の瞬膜のバランスが異なっている
- 片目または両目の瞬膜の戻りが悪い
- 片目または両目の瞬膜が出っぱなしである
「瞬膜」に症状が表れる猫の目の病気
前述のような症状が瞬膜に表れる原因となる「目の病気」をご紹介します。
結膜炎
眼の中に異物が侵入したり、細菌やウイルスなどに感染したりして発症する病気です。
猫の場合は隠れていてあまり見えない白目の部分と瞼の裏を覆っている膜に炎症が生じるため、痛みや結膜の腫れにより瞬膜が出ることがあります。
チェリーアイ(第三眼瞼腺逸脱)
瞬膜腺が赤く腫れ上がることで瞬膜が通常の位置から逸脱してしまい、突出して眼球を覆う状態になる病気です。
突出した状態の瞬膜が赤く腫れ上がってさくらんぼのように見えるために「チェリーアイ」と呼ばれています。重症化すると外科手術が必要になる場合もあります。
ホルネル症候群
脳にある視床下部から頸部を通り、眼球までを走っている交感神経路の周辺に異常が起きる病気です。外傷、腫瘍、中耳炎などが原因で起こりますが、原因不明の場合(特発性)も多いようです。
瞳孔が縮小したままになり、眼球が落ち込んでまぶたが下がり、瞬膜が飛び出して半目になったように見えます。
まとめ
今回は、人間のまぶたの構造とは異なる猫の瞬膜について、役割や病気などをご紹介しました。
普段はあまり目立ちませんが、猫が眠い時などにはいつも以上に広がった状態の瞬膜を目にすることがあります。
猫が通常の状態に戻った時に瞬膜も元に戻っていれば、あまり心配することはありません。
しかし、なかなか元に戻らない、明らかにいつもと様子が異なるといった場合には、早めに動物病院で診てもらうようにしてください。