動物の活動時間帯は昼か夜かだけではない
私たち人間は、基本は日中に活動し、夜間に休息を取ります。そのため、動物には昼行性と夜行性があるということは、自然に理解ができるのではないかと思います。
私たちの身近にいる猫は、昼間うとうとと寝ていることが多く、また網膜に光を反射するタペタムという反射板を持っていて夜目が利くために、夜行性だと思われている方が多いと思います。
しかし実際は、猫は夜行性ではありません。
「薄明薄暮性」と言って、明け方や夕暮れ時の、薄暗い時間帯に活発に活動する動物なのです。それは、獲物となる鳥やネズミなどが活動する時間帯が明け方や夕方だからです。
我が家の猫達も、若い頃は夕方の5時頃や明け方の4時頃になるとよく追いかけっ子をしていました。
実験室で飼育されている猫の生活
猫の1日の活動サイクルに関しては、昔からさまざまな研究が報告されています。
まずは、実験室で規則正しい環境で飼育されている猫についてご紹介します。
猫は人間のように長時間まとまった睡眠を取らずに、寝たり起きたりを短時間で繰り返しています。
しかし、その間隔は均等ではなく、活動時間が長い時もあれば、少ないときもあるのです。
実験施設にて日中12時間は電気をつけた状態、夜間の12時間は電気を消した状態で、規則正しい時間に給餌されるという環境で飼育されている猫では、日中の方が夜間よりも1.4倍も活動性が高かったという報告があります。
一方、同じように実験施設で規則正しく管理された環境で飼育されているネズミは、電気の状態に関係なく夜になると活発に動き始めたそうです。ネズミは真の夜行性であることを示していると言えるでしょう。
農場で放し飼いにされている猫の生活
1978〜79年の冬に、イギリスのコーンウォール農場で放し飼いにされていた5匹の猫たちの1日の行動を観察した報告があります。
その報告によると、猫の1日の時間の使い方は下記のとおりでした。
睡眠:40%
休息:22%
グルーミング:15%
狩り:15%
移動:3%
食事:2%
その他:3%(「観察できなかった」も含む)
ここで観察された猫たちの活動分布には、2つのピークがありました。朝と夕方です。
しかしこの農場では朝にミルクを与えていたので、明け方のピークが分断されて活動が正午にシフトしているのではないかと推測されています。
都会で暮らしている野良猫の生活
一方、都会で暮らしている野良猫は、実験施設や農場で飼育されている猫とは逆に、夜間に活動的になるという調査結果があります。
その理由は、下記のように考えられています。
食事をくれる親切な人もいますが、大抵は庭から追い出されたり、中にはひどい仕打ちをする人もいます。
昼間の道路は自動車もたくさん通ります。そのため、猫にとっては日中の危険が多いと考えられます。
また都会の夜は電気がついているところが多く、真っ暗闇になることはありません。
そのため、夜目が利く猫にとっては夜間でも行動に支障がなく、あえて夜になると行動を開始するのだろうという考え方です。
人と一緒に暮らしている猫の生活
今までの調査報告をみると、ある共通点に気がつくのではないでしょうか。それは、猫は人の行動パターンに合わせて自分が活動する時間を調整しているということです。
実験施設の猫も農場の猫も、基本的には人が活動している時間帯に食事をもらい、何らかのコミュニケーションを取りながら生活していたと考えられます。
そういった猫たちは、本来の薄明薄暮性の行動パターンを残しつつも、活動時間を昼の方に寄せていたように見えます。
逆に人が行動している時間帯を避けたい野良猫たちは、活動時間を夜間の方に寄せていました。
つまり室内飼いの猫たちは、薄明薄暮性という習性を残しつつも、飼い主さんの生活リズムに合わせた生活を送っていると考えられます。
まとめ
今日のねこちゃんより:マー君♂ / 2歳 / 茶トラ / 6.4kg
猫は、寝たり起きたりを短いサイクルで繰り返しながら、明け方や夕暮れ時の薄暗い時間帯に活発に活動をする薄明薄暮性の動物です。
しかしいろいろな研究結果から、猫は生活のリズムを一緒に暮らす飼い主さんに合わせられることが分かりました。
猫と人が共に快適に暮らすためには、飼い主さん自身も規則正しい生活を心掛け、猫に分かりやすい生活リズムを作り出すような努力が必要なようです。