猫は『完全肉食動物』って本当?草を食べる理由やベストな食事を解説

猫は『完全肉食動物』って本当?草を食べる理由やベストな食事を解説

猫と犬はどちらも身近な動物ですが、その食事内容は少し違います。犬は人間との共生の歴史の中で雑食性が高くなったと言われますが、猫の場合は「完全肉食動物」と言われています。しかし猫を飼っていて、愛猫が草や葉物野菜を食べたがることがあり不思議に感じています。今回は「なぜ猫が草を食べたがるのか」や「猫に適した食事」について解説いたします。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

猫は完全肉食動物

フード皿と舌を出す猫

猫の歯は「ナイフ」のみ!

愛猫があくびをした時にお口の中を見たことはありますか?「猫の歯ってこんなに少なかったっけ?」と気付いた方もおられるかもしれません。

犬の歯が42本あるのに対し、猫の歯は30本しかありません(永久歯)。奥歯である猫の臼歯もナイフのように尖っていて肉を噛みちぎったり引き裂いたりするのに適しており、猫には食べ物をすり潰すのに向いた歯はありません。

これは猫は完全な肉食動物ゆえに、獲物となる動物のお肉を飲み込める程度に引き裂ければOKであるためです。

猫は腸も肉食仕様

動物にとって、肉よりも、実は草の方が消化が大変な食べ物です。草食動物は微生物の助けを借りて、食べた草を発酵させ吸収できる栄養に変えているのです。

草食動物の中でも牛や羊、ヤギは「反芻(はんすう)動物」と呼ばれ、胃に入れた草をもう一度口に戻して咀嚼を繰り返します。加えて牛反芻動物は役割の異なる胃袋を4つも持ち、食べた物を細かくしたり、よく混ぜたり、微生物による発酵を効率的に行っています。また、反芻動物ではない馬は大きな盲腸を持つなど、草食動物は自分では消化できない物質を消化して栄養とするために消化器官を独自に進化させています。

このような工夫が必要な消化管を持つ草食動物に比べ、たんぱく質を多く摂取する雑食動物や肉食動物は短い腸を持ち、猫は完全に肉食なので、腸も2~3mと短めです。

犬と同様に猫も人間と共に暮らしてきた歴史がありますが、犬が非常に多くの仕事を受け持ってきたのに対し猫の仕事はネズミ退治がほとんど、また犬は食べる物を人間に依存してきたのに対し猫は自分の食べ物は自分で手に入れていたケースが多く、現代の猫も祖先や野生のネコ科動物と同じ肉食動物なのです。

猫が草を食べたがる理由

猫草を食べる猫

実は猫も間接的に草を食べていた!

猫は他の動物を食べる肉食動物ですが、実は自然に草も食べられていました。なぜならば、獲物となる動物の内臓の中には消化が進んでいる植物が入っているためです。

肉だけでなく内臓まで丸ごと食べることで、間接的に草を食べていたというわけです。そして内臓の中の草はすでに消化や発酵が始まっているため、猫が消化吸収しやすい形で効率的に草を摂取できていました。

自分で必要な栄養素を補っている?

現在飼育されている猫たちは、飼い主さんから毎日ごはんをもらいます。

キャットフードは、製造過程で素材が加熱や乾燥などの加工をされた食べ物です。

手作りごはん派の飼い主さんも多くおられますが、野生のように生きた状態の草食動物を内蔵ごと与えることは困難です。

ですので、猫たちが草を食べたがるのは、現在の食事では本来摂取していた植物を摂取することができず、本能的にそれを感じて自分で必要な栄養素を補っているから、と言う人もいます。

また、胃の中に毛がたまった時に草を食べて毛を吐き出すため、草を食べて食物繊維を多く摂取することで腸の動きを活発にしてお腹の中の寄生虫を排せつしやすくしようとしていた野生の名残である、また単に食感や味が好きだから、などと様々な理由が推測されています。

草や葉物野菜を猫がそのまま食べても必ずしも吐き戻すわけではありません。ただ猫は植物をうまく消化できませんので、未消化で排出されたりすることも多いでしょう。

猫に適した食事のポイント

フードを手に持つ人と待っている猫

お肉ファースト!高タンパクな食事

猫本来の生態を考えると、ごはんのメインは「動物性タンパク質」であることが好ましいと思います。市販のフードの場合は原材料欄を見ると「配合量が多い順」に成分が明記されていることが多いので、原材料欄の最初の方に肉や魚などの動物性タンパク質があるフードが好ましいと考えている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

タンパク質には、動物性タンパク質の他に植物性タンパク質もあります。どちらもアミノ酸からできている栄養素であり、動物種ごとにどのようなアミノ酸がどれくらい必要かが異なります。ですので、最も重要なことは動物性タンパク質であるか植物性タンパク質であるかということよりも、猫に適したバランスと量のアミノ酸が含まれているフードであることですので、植物性タンパク質が多く含まれているから好ましいフードではない、と言うことはできないでしょう。

また、猫ちゃんの持病によってはタンパク質を制限する必要がある場合もあるため、獣医師の指導や処方食がある場合はその指示に従うようにしましょう。

「グリーントライプ」や発酵された植物を含むフードも

「グリーントライプ」とは、反芻動物の洗浄や漂白などの処理がされていない胃袋のことです。洗浄や漂白されていない状態の反芻動物の胃袋には、草食動物が持つ消化酵素や消化途中の草、胃の中にいた微生物、必須脂肪酸などが含まれています。

グリーントライプを使ったフードや、トッピングやおやつにグリーントライプを選ぶことで、ネコ科動物の本来の食事に近い食べ物を与えることができ、猫にとってより良い食生活が期待できると思っています。また、発酵させた植物を含有しているフードも販売されていて、猫の消化に優しく植物からの栄養素を摂取できると思います。

まとめ

へそ天で眠る猫

現在ではたくさんの種類の猫用フードが販売されていますので、どのフードを選ぶべきか迷ってしまう飼い主さんは多くおられます。

そして最近では、手作りごはんを与える飼い主さんも増えてきていることからも「愛猫の食事をより良いものにしたい」という方が増えてきていることがわかります。

猫の体質や生活環境、持病などによって最適なフードは異なるため、このフードが絶対良いと断言できるものはありません。

しかし、現在のフードで消化不良を起こしていると考えられる場合や毛艶の状態が気になるなどの場合には、猫本来の食事に近付けた「動物性タンパク質を適量含んでいるもの」「発酵した植物やグリーントライプを使用したもの」などを試してみると愛猫の体質に合うものが見つかるかもしれません。

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