猫と人の共通感染症
感染し得る病気はこんなにたくさん!
人間の風邪の原因となるウイルスは、猫の風邪のウイルスと型が違います。そのため人間の風邪は猫にうつらず、猫の風邪も人間にうつることはありません。
しかし風邪以外を見てみると、
- サルモネラ菌感染症
- 猫ひっかき病
- Q熱
- パスツレラ症
- カプノサイトファーガカニモルサス感染症
- 皮膚糸状菌症
- トキソプラズマ症
- 回虫幼虫移行症
- 疥癬
など、猫と人間に共通する感染症は結構たくさん存在します。
猫から人間に、そして人間から猫にもうつり得る感染症の原因となるのは、細菌、真菌、原虫、寄生虫など多岐に渡ります。
次に、猫から人間にうつる感染症の中で上記の9種のうち、代表的な4種を詳しく見てみましょう。
猫ひっかき病
ユニークな名前の「猫ひっかき病」ですが、単に引っ掻かれるケガのことを指すわけではありません。猫ひっかき病は猫に噛まれたり舐められたり、そして引っ掻かれたりすることで細菌感染が起こる病気です。
猫ひっかき病の原因となる病原体が特定されたのは1992年と割と最近で、バルトネラという菌であることが分かりました。
猫ひっかき病を起こすと感染箇所の近くのリンパ節が腫れ上がったり、微熱、倦怠感、吐き気などの症状が見られます。
かく言う筆者も以前子猫を保護した際に、親指を噛まれて猫ひっかき病になった経験があります。噛まれた手の側の脇のリンパ節が腫れてしまい、グリグリとしこりのようになり痛みや熱感もありました。
人間が感染すると諸症状が出ますが、猫が感染しても無症状なことがほとんどです。
パスツレラ症
「パスツレラ」は猫の爪や口の中にいる常在菌であり、健康な猫でも口腔内には必ず存在する菌です。自身に存在することが普通である猫には基本的になんの症状も出ませんが、稀に肺炎を起こすこともあります。
人間がパスツレラに感染すると、激しい痛みを伴って傷口が腫れ上がることがあります。骨に達するような深い傷を負った場合は骨髄炎を起こしたり、重症化すると敗血症を起こしたりすることもある要注意な感染症です。
傷口からの感染だけでなく、実は日本においてのパスツレラ症の約6割が「鼻から肺までの呼吸器系」に感染しているという調査結果があります。呼吸器系に感染すると、気管支炎や肺炎を起こすことがあります。
皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌症は「糸状菌」というカビの一種に感染して起こります。糸状菌は動物の毛や皮膚に感染し増殖します。
皮膚糸状菌症は人間に感染すると「白癬(はくせん)」と呼ばれることが多く、足に発症した状態を「水虫」と呼んでいます。皮膚糸状菌を持っている猫に接触し感染すると、菌が付着した部分に赤みが出たり水膨れ、痒みが現れたりします。
頭部に感染すると脱毛が起こることもあり、脱毛の様子は円形になり大部分の脱毛が起こることもあります。皮膚糸状菌症の症状の程度は、感染した人の免疫機能に深く関係していると言われています。
回虫幼虫移行症
「回虫」とはお腹の中に寄生する虫のことで、白いタコ糸のような細長い姿をしています。激痛で有名なアニサキスは水棲動物に寄生する線虫で、回虫も線虫類に属します。
回虫の卵は宿主の排泄物とともに外へ出てから1週間ほどで成熟します。成熟して感染力を備えた卵は、なんと1年以上もその感染力を維持することも。取り込まれた卵は体内で孵り、消化管で成虫となって卵を産みます。その卵が猫のうんちに現れて他の宿主を待つ、というサイクルです。
回虫の卵は目に見えないくらい小さいので、目視で確認するのは難しいでしょう。
本来猫を宿主にする回虫は人間を宿主とする回虫と種が違うため、猫回虫は人間の体内で成虫まで成長することができません。
しかし成長できない幼虫が幼虫のままで、本来の寄生ポイントではない肺や肝臓、眼、脳などに侵入してしまう事があります。これは「幼虫移行症(トキソカラ症)」と呼ばれ、幼虫が迷い込んだ部位でトラブルが起こります。幼虫が組織を突き破って侵入するため、組織の損傷や炎症が起こります。
回虫の幼虫がどの部位に侵入したかによって症状が異なりますが、
- 発熱
- 咳
- ぜいぜいする呼吸音
- 発疹
- 肝臓の肥大
などの症状が多く見られます。
回虫幼虫移行症は幼い子供に多く、土や砂場を触った手で口元を触ってしまう頻度、食べ物でないものを口に入れたくなってしまう頻度などが関係していると考えられます。
感染を予防する対策
- 猫との接触後は石けんで手を洗う
- キスをしない
- 噛まれたり引っ掻かれたら放置しない
- 愛猫の症状に早期に気付く
- 免疫力を下げない
などで猫からの感染を予防しましょう。
こまめに手洗いをし、濃厚な接触を避け、負った傷を放置しないということのほか、愛猫や接触する猫ちゃんの異変に気付くということも大切です。
そして免疫力が低くなると感染症に負けてしまいやすいため、体調を整えて免疫力を保つことも大変重要です。幼いお子さんや妊婦さん、ご高齢の方、免疫疾患がある方は特に注意しましょう。
完全室内飼育でしっかり検診や定期駆虫を受けている場合、寄生虫に関しては愛猫からの感染は過度に心配する必要はないかと思います。
しかし
- リードをつけてお散歩に行く子
- 地域猫との接触がある
- 外猫を保護する
などの場合は感染症のリスクが高くなりますので注意しましょう。
細菌や真菌感染は、室内ネコでも保菌している場合がありますので注意が必要です。
まとめ
筆者が猫ひっかき病になってしまった時、名前のチャーミングさと裏腹な脇の腫れと痛みにしばらく悩まされました。
猫から人間に感染する病気の中には重症化する恐れがあるものもありますので、特に外猫に噛まれたり引っ掻かれたりした後は放置せず受診すると安心です。猫の舌はザラザラなので、舐められただけで傷がつく事も。
猫と触れ合った後、そしてトイレを掃除した後は石けんでしっかり手を洗うことが大切です。