顔面神経の役割
猫の脳神経は全部で12あります。その中の「第七神経」に属するのが顔面神経です。顔面神経には次のような役割があります。
- まばたきをする
- 涙や唾液を分泌する
- 顔の筋肉を動かす
顔面神経が麻痺するとどうなるの?
顔面神経の役割からも分かるように、麻痺が起こると日常生活に支障をきたします。ここでは、主な症状を3つご紹介いたします。
症状1.目が乾燥する(角膜が傷つくことも)
麻痺が生じると、まばたきができなくなります。片側のみが麻痺することも多いので、その場合は麻痺している側の目がトラブルを抱えることになります。
目を閉じることができなくなると、深刻なのは目の乾燥です。人工涙液や眼軟膏などを用いてサポートしなければ角膜に傷ができ、角膜潰瘍にもつながってしまいます。
症状2.食事が困難になる
麻痺が生じた側の口は、閉じられないうえに垂れ下がったような状態になります。要は顔が歪んでしまうのです。
これは、外見上の問題だけではありません。食事や飲水にも支障が出てきます。筋肉が動かせないために、食べたものや飲んだ水が、麻痺した側からこぼれ落ちてしまうのです。
症状3.耳を動かせなくなる
猫は本来、耳を180度横に動かすことができます。ところが、顔面神経が麻痺することでこの能力も失われてしまいます。
猫が耳を動かすのは、獲物や天敵の動きを察知することが目的なので厄介な症状といえるでしょう。家猫であっても、情報収集ができずにストレスを感じてしまいます。
ちなみにヒゲも同様に動かせなくなり、生活を脅かします。
顔面神経麻痺の原因
なぜ大切な神経が麻痺を起こしてしまうのでしょうか?その原因を4つご紹介いたします。
原因4.特定の原因が見つからない
顔面神経麻痺の約4分の1は、特発性といって原因が特定できません。このケースでは、効果的な治療法はありません。ただし特発性の場合、2~6週間ほどで自然治癒することもあります。
目の乾燥を防いで、角膜を保護してあげることが大切です。
原因5.細菌性中耳炎
原因が細菌性中耳炎の場合、原因菌を特定して治療することが重要です。麻痺が完治するとは限りませんが、中耳炎そのものを放置すると炎症の範囲が広がり、命をも脅かす恐れがあります。
初期症状は、耳をかく・耳垢が増える・耳の中が赤くなるなどです。異変があれば早めに動物病院を受診しましょう。早期発見が、顔面神経麻痺の予防策にもなります。
原因6.手術の後遺症
中耳炎や耳道内腫瘍の術後の後遺症として、麻痺が生じることがあります。理由は、顔面神経が中耳腔を通っているからです。
外耳炎は繰り返すことが多く、炎症がひどくなると鼓膜にも影響を及ぼすようになります。猫の場合、中耳側の鼓膜付近に神経があるため神経症状がおこりやすいです。しきりに耳を気にする動作が見られないか、よく様子を見てあげてください。
原因7.腫瘍
耳道内腫瘍や脳腫瘍ができると、腫瘍が神経を圧迫します。圧迫された神経が「第七神経」の場合、顔面麻痺が起こります。
治療法としては手術や放射線治療、抗がん剤による化学療法などの選択肢があります。腫瘍の大きさや位置、愛猫の体力面などを考慮して最善の方法を考えていきます。
ただし、猫の脳は非常に小さいので腫瘍のある場所によっては手術は難しい決断になるかもしれません。麻痺への対応は、先ほどまでと同様に、目の保護や食事の介助などのサポートが求められます。
まとめ
顔面神経麻痺は原因が様々で、とても複雑な病気です。麻痺が残ることも珍しくなく、一生涯にわたって向き合わなければならないこともあります。
しかし、その一方で早期発見が功を奏する場合もあります。顔や耳、ヒゲの動きに異変を感じたら動物病院を受診しましょう。