猫エイズってどんな病気?
猫エイズとは「猫免疫不全ウイルス(FIV)」に感染することで起こる病です。病気の経過や誤解されやすいポイントについて、簡単にまとめてみたいと思います。
感染=発病ではない
FIVの感染自体が病気の発病ではありません。進行速度としては非常に緩やかです。数年かけて白血球を破壊していきます。
抵抗力が弱まった頃に、様々な症状が現れます。これが真の発病です。
抗体が作られる「急性期」
FIV感染後、数週間から数ヶ月にわたり急激に症状が現れます。この特徴から「急性期」と呼ばれる時期です。具体的な症状は、後ほど詳しく紹介します。
この急性期に抗体が作られ、血液検査で陽性の判定が出るようになります。
全く症状のない「無症候キャリア」
急性期の後は、無症状の期間が数年間続きます。この時期を「無症候キャリア」と呼びます。
この期間中は、健康な猫と変わらずに元気に過ごすことができます。しかし、この期間中も病魔が体を蝕んでいることには変わりません。
リンパ節が腫れる「リンパ節腫大期」
無症候キャリアの後、リンパ節の腫れが見られることがあります。腫れ具合には個体差があるので早期発見が困難です。
多彩な症状が現れる「エイズ関連症候群期」
白血球が破壊されることで、抵抗力が弱まります。それに伴い、次のような多彩な症状が現れはじめます。
- 口腔トラブル(口内炎や歯周病など)
- 消化器症状(嘔吐や下痢)
- 上気道炎
- 細菌性皮膚炎など
口腔トラブルは痛みを伴います。その影響で食欲が低下し、体重が落ちてしまうこともあります。
エイズの末期「後天性免疫不全症候群期」
末期には免疫不全に陥ります。以下のような症状が出現し、徐々に衰弱していきます。最終的には命を落としてしまいます。
- 白血球減少症
- 日和見感染
- 貧血
- 腫瘍(悪性リンパ腫など)
- 神経症状を伴う脳炎
日和見感染とは、健康体であれば感染しない若しくは、ほぼ無症状で終わるほど弱い菌による感染症を指します。
必ず発病するとは限らない
猫エイズには治療法がありません。ただし、全てのキャリア(FIV陽性の猫)が発病するとは限りません。無症候キャリアのまま天寿をまっとうできる猫もいます。
他の動物には移らない
猫エイズは他の動物には移りません。そして、人のエイズも猫に移ることはありません。
主な感染経路
主な感染経路は、喧嘩による咬傷です。特に、発病している猫に噛まれることでリスクが高まります。
早期発見が大事!急性期の症状とは?
猫エイズで最も重要なのは、無症候キャリアの維持(発病を遅らせること)です。そのためにも早期発見が大切になります。
ここからはポイントになる症状を5つご紹介いたします。症状に加えて、外の猫との接触が疑わしい場合は一度検査を受けると良いでしょう。
1.発熱(感染症を伴うことも)
感染後は一時的に発熱することがあります。感染症も起こりやすくなるので、その影響も考えられます。正確な体温を家庭で計測することは困難ですが、抱っこした際にいつもより熱いと感じる場合は発熱を疑いましょう。
2.下痢
フードの変更や食べ過ぎなどがないのにも関わらず、下痢を起こすといのは自然なことではありません。
3.体重減少
子猫や健康な成猫は、目立って痩せることは通常ありえません。何かしらの不調を抱えている可能性があります。
発熱に伴う食欲不振や、下痢による体重減少も併せて異変があると捉えましょう。
4.無気力
周囲の観察をしなくなった、遊ばなくなったなど「興味」を急に失ってしまった場合は注意が必要です。
猫は、本能的に室内をパトロールしたり観察することが日課になっています。これらの行動を全く取らないのは不自然なのです。
対処法は?
FIVを予防する最も効果的な対処法は、完全室内飼育です。外の猫との接触を避けることがポイントになります。
次に、オス猫の場合は去勢手術を受けることも効果的です。縄張り意識が緩むことで、無駄な喧嘩を避けられます。
FIVのワクチンがありますので、ウイルス検査でFIV陰性の場合は接種しておくのもよいでしょう。ただし、ワクチンを接種していても、エイズキャリアの猫と喧嘩をしたり交尾をするなどの濃厚接触がおこると感染します。ワクチン接種を行い、外に出さないことが一番の予防になるでしょう。
まとめ
完全室内飼育を心がけることで、FIV感染は予防できます。愛猫が脱走しないように気をつけることが大切です。
仮に保護した猫がキャリアだったとしても、悲観的にならないでください。早期発見により、無症候キャリアを維持することができれば発病を遅らせることができます。
キャリアの猫と暮らす場合は、適切な栄養管理とストレスをかけないことを配慮しましょう。免疫力をキープすることがポイントになります。