グルーミングとは?どんな役割があるの?
動物病院を受診すると「グルーミングはしていますか?」と聞かれることがあるでしょう。何となく察しがつくと思いますが、グルーミングとは毛繕いのことです。
猫にとってグルーミングは大切な日課のひとつです。獣医さんがこの質問をする理由は、グルーミングの有無や頻度が健康のバロメーターになるからです。ほとんどしない場合は体調不良が疑われ、過剰な場合はストレス、または痛みや痒みがあることが疑われます。
グルーミングの中でも、自分自身の被毛を整える毛繕いを「セルフグルーミング」といいます。猫の一日をざっくり捉えると、寝ているか毛繕いをしているか、食べているかになるのではないでしょうか。その合間にトイレや遊びが加わっています。グルーミングには次のような役割があります。
- 身なりを整える(自身のにおいを消す、汚れを落とす)
- 体温調節(体に汗腺がないので気化熱を利用)
- 気分転換(良くも悪くもリフレッシュしたい)
アログルーミングはどんな毛繕いのこと?
アログルーミングという言葉は聞き慣れない方もいらっしゃるでしょう。一体どのようなグルーミングなのでしょうか?
ほとんどの猫が一度は経験している
「アロ」とは「他の、異なる」という意味ですので、アログルーミングとは他の猫に毛繕いをしてもらったり、逆に自分が他の猫の毛繕いをしてあげる行為です。
このアログルーミングは、ほとんどの猫が成猫に成長する過程で受けています。そう、生まれて初めて受けるアログルーミングはお母さんからです。母猫は子猫の被毛を舐めて身なりを整えるだけでなく、排泄を促します。
少し成長すると、きょうだい同士でもアログルーミングをするようになります。
猫の社会化期(生後2ヶ月頃までの時期)と呼ばれる期間にアログルーミングをはじめ、猫らしい生活を母猫やきょうだい猫との関わりの中で学んでいきます。社会化期は、猫社会のことを学ぶだけではなく、人や犬を含めた他の動物や様々な環境に慣れる時期でもあります。あまりに早期に母猫から引き離すことが好ましくない理由は、ここにあります。
信頼関係が大切
同じ家庭で飼われている猫がアログルーミングをするのは多くの場合、お互いに親近感や信頼関係を持っている、ということになるようです。
親きょうだいと一緒にずっと暮らしていれば、子猫の時から引き続きアログルーミングを受けたり自分も母猫やきょうだい猫にアログルーミングをするようになるでしょう。しかし血縁関係のない猫でも、一緒に暮らしていて信頼関係が作られていれば、猫同士がアログルーミングをするというシチュエーションが見られるようになるでしょう。
アログルーミングでは、顔・耳の後ろ・背中など自分では舐められない部位を舐めることが多くありますので、体中をきれいにするという意味でも役立っていると考えられますが、それよりも猫同士のつながりを表すものだと考えられるそうです。
アログルーミングは種を越える
アログルーミングは猫同士だけに見られる行動ではありません。仲間意識を持った他の動物、人間に対しても見られます。
猫が飼い主さんの顔や手を舐める行為は、まさにアログルーミングです。信頼と愛情を伝えてくれているのでしょう。猫が仲間意識や信頼していることを伝える方法には他に、体や頭を相手にこすりつけることがありますが、それも飼い主さんに行うことがありますよね。
事の真相を知ると嬉しくなるものです。とはいえ、さすがに被毛を舐めてお礼をすることはできません。こちらが愛猫に対してできるアログルーミングはあるのでしょうか?
愛猫には優しく撫でてお返しをしてあげてください。その際、猫同士のグルーミングと同様に、顔や耳の後ろなどを撫でてあげると喜んでくれます。
まとめ
今日のねこちゃんより:虎(トラ)と景(カゲ、サバトラ)♂ / 1歳 / キジトラ / 4.7kg
猫同士のアログルーミングは、見ていて心温まる行動ですね。今は、人間同士は距離を取らなければならない不自然な生活を強いられています。猫のアログルーミングを見るとほっとするような気分が味わえるかもしれません。
同じ家庭で飼われている猫同士がアログルーミングをする場合、ほとんどはお互いに信頼や愛着があって行われている行動だと考えられますが、自分の優位性を示す行動であることもあるようです。ランキングの高い猫がランキングの低い猫に対してグルーミングを行うことがその逆よりも多く、アログルーミングは実際に衝突することを避けながらも序列を確認するための行動かもしれないとしている論文もあります。
また、アログルーミングは同性間でも異性間でも見られますが、上記論文の観察研究ではオス同士のアログルーミングが最も多く見られ、次にオスとメスの間で、そしてメス同士のアログルーミングが最も少なかったそうです。また、アログルーミングを始めるのは圧倒的にオスからの場合が多かったということです。
《参考論文》
van den Bos, R. The function of allogrooming in domestic cats (Felis silvestris catus); a study in a group of cats living in confinement. J. Ethol. 16, 1–13 (1998).
https://doi.org/10.1007/BF02896348