スコティッシュフォールドの折れ耳
スコティッシュフォールドの特徴で思い浮かぶのは何より折れ耳。ぺたんと垂れるように折れた耳は、スコティッシュフォールドならではの魅力です。スコティッシュフォールドの折れ耳は、全体的に丸みを帯びた柔らかい体とまん丸でかわいらしい目、小さめの外見、そして穏やかな性格にもマッチしていますね。
なぜ耳が折れているのか
その折れ耳は遺伝的なものであることが分かり、ブリティッシュショートヘアやアメリカンショートヘアなどとの交配を重ね、現在のスコティッシュフォールドが生まれました。スコティッシュフォールドの折れ耳は実のところ、先天的な骨と軟骨の形成異常によるものです。
スコティッシュフォールドの折れ耳の注意点
かわいらしいスコティッシュフォールドの折れ耳ですが、他の猫にはない折れ耳だからこその注意点があります。折れ耳は立ち耳と比べて耳の中の通気が悪いので、湿度が高くなりがちです。耳垢が溜まりやすかったり、蒸れて痒くなったり、外耳炎など耳の病気になりやすいと言えます。
正しいケアの方法
立ち耳の猫でも言えることですが、猫の耳はデリケートな部分ですので、自己流のケアをすると傷付けてしまいます。獣医師にアドバイスを受け、正しいケア方法で耳を清潔にすることを心がけてください。
折れ耳は立ち耳よりもこまめにチェックすることも大切です。異常が見られたらすぐに獣医師に診てもらいましょう。
折れ耳のスコティッシュフォールドの弱点
スコティッシュフォールドの折れ耳は様々な交配が繰り返された中で固定された特徴ですが、折れ耳同士の交配で生まれたスコティッシュフォールドは遺伝的に弱くなります。元来、折れ耳は耳軟骨の遺伝的奇形です。折れ耳同士を交配すると、必ず折れ耳の子猫が生まれますが、遺伝性の骨軟骨形成異常の症状が重度に現れてしまうのです。愛猫が足をかばうような仕草や触ると痛がる、動きたがらない、食欲がないなどの様子があった場合にはすぐに獣医師に相談してください。
折れ耳以外の「立ち耳」のスコティッシュフォールド
折れ耳が特徴のスコティッシュフォールドですが、立ち耳がいることはご存知でしょうか。現在、きちんと知識を持ち動物の福祉を重視するブリーダーは遺伝的な弱さをカバーするためにも折れ耳同士の繁殖は決して行いません。折れ耳と立ち耳のスコティッシュフォールドの交配、もしくは折れ耳のスコティッシュフォールドと別種の猫(アメリカンショートヘアー、ブリティッシュショートヘアー、ブリティッシュロングヘアー)の交配を行います。
その結果、スコティッシュフォールドの血を持つ、折れ耳と立ち耳の子猫が生まれます。折れ耳のスコティッシュフォールドを購入する際には親や兄弟に立ち耳が居るか確認したほうが良いでしょう。両親ともに折れ耳である場合には、その子猫には重度の骨と軟骨の異常が若いうちから出ることになります。
立ち耳のスコティッシュフォールドは耳こそ折れていませんが、丸い外見と穏やかな性格などの特徴はそのままのかわいらしい猫です。立ち耳のスコティッシュフォールドは折れ耳のスコティッシュフォールドに高い確率で見られる骨軟骨異形成症の発症率が低いか全くなく、耳の病気にもかかりにくいと言われています。
まとめ
かわいいスコティッシュフォールドの折れ耳ですが、治ることのない遺伝性の病気を発症する危険性もはらんでいます。獣医師の指導の下、適切な食事やケアなどを行い、些細な変化に気付いてあげることで生活の質をできるだけ高く保ってあげることは可能です。可能な限り長く幸せな時間を過ごすためにも、さらに気を配って愛猫を守ってあげましょう。
▼スコティッシュフォールドについて詳しく知りたい方はこちら
スコティッシュフォールドの性格や特徴、値段から飼い方まで
スコティッシュフォールドの特徴!折れ耳と立ち耳がいるのはなぜ?
スコティッシュフォールドの骨軟骨異形成は、不完全優性遺伝の疾患です。1対ある遺伝子のうち、両方に骨軟骨異形成を起こす遺伝子を持てば、その症状は子猫の頃から認められ、かつ重度のものとなります。これが本記事内で書かれている「遺伝的に弱い」ということです。片方だけにその遺伝子を持っていても骨軟骨異形成となりますが、症状の程度や発症時期は様々です。仮に飼い主さんが気づくような症状が見られなくても、レントゲンやCT検査を行うと骨や関節の異常が見られるようになります。耳については、程度の差はあれ折れ耳となると考えてよいようです。そして、両方ともにその遺伝子を持たなければ、骨軟骨異形成を持たない、耳が立っているスコティッシュフォールドの猫となるわけです。
2016年、スコティッシュフォールドの骨軟骨異形成に関与している遺伝子変異が1つ報告されました。TPRV4と呼ばれる遺伝子にある変異で、その変異は立ち耳のスコティッシュフォールドやその他の品種の猫には一切見られませんでした。しかし、折れ耳のスコティッシュフォールド44匹を調べた結果、その変異を持たない猫も1匹いたので、骨軟骨異形成に関わる他の遺伝子変異の存在も考えられます。スコティッシュフォールドにおける遺伝子変異の研究は、人間における先天性の骨軟骨異常の病態解明にも役立つ、という点からも注目されています。
スコティッシュフォールドは、特徴的な折れ耳の猫を作出することを重視して繁殖されてきたため、骨軟骨異形成の他にもよく見られる遺伝性疾患があります。その1つが多嚢胞腎で、これは優性遺伝する病気です。また、スコティッシュフォールドは肥大型心筋症の好発品種でもあり、これも遺伝性が疑われています。
骨軟骨異形成は今のところ治癒しない、進行性の病気であり、放射線療法や外科手術などの治療法が研究され行われていますが、基本的には痛みに対する対症療法と運動障害に対する緩和療法を生涯にわたって行っていくことになります。
≪参考論文≫
B. Gandolfi, et al. (2016) A dominant TRPV4 variant underlies osteochondrodysplasia in Scottish fold cats. Osteoarthritis and Cartilage. Volume 24. Issue 8. Pages 1441-1450
Takanosu, M., Takanosu, T., Suzuki, H. and Suzuki, K. (2008), Incomplete dominant osteochondrodysplasia in heterozygous Scottish Fold cats. Journal of Small Animal Practice, 49: 197-199.