猫の種類を日本の歴史から辿る
日本にはツシマヤマネコ(対馬)、生きた化石といわれるイリオモテヤマネコ(西表島)がいます。西表島は面積が290平方kmほどで、ヤマネコの住む島としては生息域としても世界最小です。これは遥(はる)か昔から生きている野生のヤマネコで、今の日本における猫の種類とは違います。
現在みられる猫はイエネコと呼ばれ家畜化されたもので、祖先はアフリカ系の山猫(リビヤヤマネコ)、ヨーロッパ山猫(ヨーロッパヤマネコ)、アジア砂漠猫(マヌルネネコ→長毛の猫の起源とされる)が主な元祖と言われています。
イエネコと呼ばれ現在、日本に存在する猫の元祖となるのは、シルクロードを通じてアジア圏内にまで広がり、中国を経由して日本にやってきたのです。日本は奈良時代(710~794年)に仏教伝来の際、教典・仏典などの大事な書物をネズミから守るための益獣として中国からやってきました。
日本における最も古い記述は、「今から1100年前、唐の国からもたらされた黒猫」で「黒猫の他にも、黒斑の猫、黒白の猫、赤白の4匹が当時の朝廷に献上された。」とCFA(The Cat Fanciers’Association、 INC. 世界最大の猫協会) 審査員ジョーン・ミュラー女史が言っていたそうです。
大陸から献上された猫は「唐猫」と呼ばれていました。「唐猫」とわざわざ記録されているのは、その頃には在来の猫が日本に存在していたと考えられていたからです。恐らく、それらが掛け合わされて日本の猫の種類が増えていったのだと思われます。
戦国時代には東南アジアとも交易したことから、これらの猫とも関係ができたと思います。現在、存在する日本猫の形は江戸時代には固定されたようです。しかし、第二次世界大戦後に進駐軍から猫の外来種が日本に大量に持ち込まれ、特に日本で爆発的なシャム猫の流行(はやり)がありました。
日本猫は外来種と混血が急速に進んで、20世紀後半の頃には日本猫は絶滅寸前の危険すらありました。こうした歴史を経て、日本における猫の種類が多種多様になっていきました。
日本猫の代表的な6種類の特徴
純粋な日本猫は絶滅寸前といわれたほど、日本古来の日本猫は長い間、「雑種」扱いされてきました。(ペットショップに日本猫は売られていません。)しかし、純潔度や固定度が他の公認種よりも高く、「日本猫保存会」によってのみ公認種に認定されています。国内においては猫種の一つである日本猫の特徴を調べてみました。日本猫の代表的な6種類は以下の通りです。
白猫
色は真っ白で、白猫によくみられる左右で目の色が違うオッドアイの場合があります。これは色素の量によるもので、色素がとても薄ければ青色に、色素がやや多ければ金色の目になります。左右で色素の量が違うためオッドアイとなるのです。
黒猫
黒猫でもお腹(なか)や胸などにほんの少し白い毛が混じることがあります。これは、エンジェルマークと呼ばれ、天使が触れたあとや幸せを呼ぶ猫の印と言われています。
サビ猫
茶色と黒が混ざった色の猫突然変異種であり、遺伝子の関係でサビ猫はほぼメスです。顔の左右で茶色と黒がはっきり分かれているサビ猫もいます。
トラネコ
縞(しま)模様の猫です。模様によって呼び名が「キジトラ」「サバトラ」「茶トラ白」などと呼ばれています。日本猫の祖先は「すべてキジトラ模様」であったそうです。
ブチネコ
白地に黒、白地に茶の二色の猫です。白地に黒のぶちでは牛の柄に似ていることから牛柄やホルスタイン柄と呼ばれることもあります。
三毛猫
白、茶、黒の三色が混ざった猫です。この三毛猫も大半はメスです。オスの三毛猫は1,000匹に一匹の確立で生まれるそうです。これは、茶や黒は性染色体Xの上にしかないからです。オスは性染色体がXYのため茶か黒にしかならないのです。
三毛の茶(オレンジ)をつくる遺伝子は、ヨーロッパよりもアジアに多く、日本においてはヨーロッパの3倍と言われているため日本には三毛猫が多く存在します。昔は日本にいる猫種の中で一番身近な猫だっただけに、関心を余り引かなかったのでしょうか。
空前の猫ブームで日本猫の注目度はアップしていますよね。日本にいる猫の種類では、存在がとても珍しい三毛猫のオス猫がいます。昔はよく船に益獣として猫を乗せていました。「三毛猫のオスが幸運を招く」として船乗りの間では信じられていたそうです。
また、日本猫の特徴で猫の尻尾は短いことが世界で驚かれました。一説に、尾は東に行くほど細長く、関西では短く、西へ行くと折れ曲がっているらしいです。日本猫という種類は正式な血統ではないため、ペットショップで買うことはできません。もし日本猫を飼いたいときは、捨て猫を保護する、又は、保健所に里親として応募する方法があります。
猫の種類で日本にいる純血種
純血種は、人が改良を加えて作りだしたイエネコのことです。CFAの公認猫種は40種弱だそうですが、世界には100種類くらいいるといわれています。国内における猫の純血種には、日本猫の血を引く「ジャパニーズボブテイル」がいます。
太平洋戦争終戦後、1968年に来日したアメリカ人の愛猫家が100匹以上の短尾の日本猫をアメリカに連れて帰ったことから始まり、人為的に繁殖させました。猫団体のCFAとTICA(The International Cat Association)に公認されています。世界でも日本でも猫の種類は大きく「長毛種」と「短毛種」に分けられます。
主な長毛種は、ペルシャ、メインクーン、ノルウェージャン・フォレストキャット、ターキッシュ・アンゴラ、アメリカン・カール、バーマン、ラグドール、エキゾチックなど。主な短毛種は、アメリカン・ショートヘア、アビシニアン、オシキャット、ソマリ、ロシアンブルー、シャム、ジャパニーズボブテイル、ラグドール、コラット、エジプシャンマウなどです。
日本にいる猫の種類には「純血種」「雑種」が存在し、どちらも私たち人間に癒(い)やしを与えてくれる愛らしい動物といえるでしょう。
日本での猫の種類の違い
日本における猫種の「純血種」と「雑種」はどのように違うのでしょうか。動物学的には純血種も雑種も「イエネコ」として一種に統括されます。その中で、純血種は個体ごとの特徴が似通っている一群であり、雑種やそのほかの起源不明のイエネコたちは、容姿が一定せず、変化に富んでいます。
日本における猫の種類では、雑種が多く飼われている、という統計があります。平成27年度のペットフード協会の「全国犬猫飼育実態調査」によると、猫を飼っている人1214名のうち、純血種は182匹、雑種1002匹という結果でした。約82%が雑種を飼っています。
それから、世界にいる雑種の数は何と6億匹いるといわれているようです。もし、日本における猫種の中で一匹飼えるとしたらとても迷います。参考までにですが、健康面を考えると雑種の方が病気に強いそうです。
まとめ
日本にいる猫の種類はどれくらいかと考えたこともなかったのですが、いろいろ調べてみると、興味深い内容でした。歴史の中で、守り神的な扱いを受けていたのですね。食料がそうでなくても不足している時代に、穀物を荒らすネズミは人間にとって憎むべき存在だったと思います。
そんなときに害獣駆逐のためにいる猫は有り難かったと思います。エジプトでは神格化されていますしね。三毛猫のオスは船乗りにとって幸運を呼ぶとか、どこか神秘的な力を秘めているのも猫の魅力の一つではないでしょうか。