猫の匂い袋とは
「肛門嚢」のこと
猫の匂い袋といいますが、正しくは「肛門嚢」です。「肛門嚢」の「嚢」は、袋という意味があります。猫の匂い袋は、その名の通り、匂いが入っている袋です。
匂いを出す役割がある
猫の匂い袋には、肛門腺液という分泌液があり、これが独特の匂いを放出します。猫の匂い袋から匂いが分泌されるのは、猫が便をするときです。この匂いによって、縄張りを主張したり、また他の猫を識別したりしています。
排便以外にも、ストレスにさらされたり、興奮したりしたときに分泌されます。猫はお互いのお尻の匂いを嗅ぐことがありますが、この匂い袋から出される匂いを確かめているのです。猫の匂い袋は、大切な役割を担っているのですね。
肛門の両脇にある
猫の匂い袋は、肛門の両脇、やや下よりにあります。肛門を中心に四時と八時の位置です。
猫の匂い袋は炎症、破裂する
症状
猫の匂い袋は、匂いがうまく分泌できずに、詰まってしまうことがあります。匂い袋が詰まると、炎症を起こしたり、破裂してしまったりすることもあるのです。
炎症
猫の匂い袋が詰まると、炎症を起こしてしまいます。炎症を起こすと、猫は肛門を舐めたり、お尻を床にこすりつけたりします。肛門周辺が赤く腫れ、ひどくなると発熱や食欲不振、便秘などの症状が見られることもあります。
化膿
匂いの分泌口から細菌が入り、中で細菌感染が起こると化膿してしまうことがあります。猫の匂い袋に膿がたまることを肛門嚢膿瘍といいますが、ひどくなると穴が開いて、そこから膿が出てくることもあります。
出血
肛門の辺りから出血していて、飼い主さんが慌ててしまうことがあります。出血と同時に独特の匂いがあったら、猫の匂い袋が破裂したのかも知れません。肛門腺液は生臭いような匂いです。ただ、匂いは猫によって違いますので、全ての猫が生臭いような匂いとは限りません。
原因
猫の匂い袋が詰まってしまうのには、いくつか原因が考えられます。
体質だから
体質により、匂い袋が詰まりやすい猫がいます。分泌液がドロドロしていると、詰まりやすいです。
運動不足だから
運動不足で筋力が低下すると、匂いをうまく分泌できずに、匂い袋が詰まりやすくなります。運動不足が原因による肥満で、匂いを出す穴が脂肪にふさがれてしまうこともあります。
高齢だから
高齢の猫も、筋力が弱ることで匂い袋が詰まってしまうことがあります。
室内飼いだから
匂い袋の匂いは、興奮やストレスでも分泌されますが、室内飼いの猫では、外敵にあうことがありません。そのため、匂い袋から匂いが分泌されることが少なく、詰まりやすくなってしまいます。
慢性的な下痢だから
下痢をしていて、おしりが汚れていると、匂い袋に細菌が入り炎症を起こしやすくなります。
対処法
猫の匂い袋が炎症を起こしているときは、獣医さんに診てもらいますが、それほど慌てなくても大丈夫です。まずは応急処置をして、動物病院につれていきましょう。
止血する
猫の匂い袋が破裂すると出血しますので、まずガーゼなどで止血をします。出血が治まってきたら、動物病院へ連れて行ってください。
猫が傷を舐めてしまうと、さらに出血してしまうことがあります。猫が傷を舐めるようなら、エリザベスカラーをつけましょう。
動物病院での治療
猫の匂い袋が化膿したり破裂したりしている場合、動物病院では痛みや腫れを抑える抗炎症剤や抗生剤を投与したり、カテーテルを入れて洗浄、消毒したりすることもあります。
猫の匂い袋が破裂して皮膚が壊死している場合は、その分部の皮膚を除去します。肛門嚢炎を何度も発症してしまう場合は、匂い袋を切除する手術を行うこともあります。
猫の匂い袋のお手入れ方法
匂い袋を定期的に絞る
匂い袋が詰まりやすい猫は、月に1回程度絞って出してあげる必要があります。猫の匂い袋を絞る方法は、匂い袋を軽く押すだけです。
液が出てくるので、ティッシュ等を肛門に当てて、肛門の両脇を指で斜め上の方向に軽く押します。部屋に飛び散ってしまうとなかなか匂いが取れませんので、お風呂場で行うことをおすすめします。
とはいえ、お尻を触られるのを嫌がる猫ちゃんも多いです。そのような場合は、他の人に猫のお尻を持っていてもらうなど、2人で協力して行うといいでしょう。
匂い袋を触ると猫が痛がる、匂い袋が硬い、腫れている場合は、無理に押さないようにしてください。そのような場合は獣医さんに相談しましょう。
運動不足にならないようにする
猫が運動不足で筋力が弱っていたり、肥満で匂いの出る穴がふさがってしまったりしていると、匂い袋が詰まる原因になります。室内飼いの猫も、運動できるように気をつけましょう。
まとめ
猫は、肛門の脇に匂い袋を持っています。この匂い袋から出される匂いは、縄張りを表したり、他の猫を識別したりする大切なものです。
匂いは、排便時などに自然に分泌されるものですが、高齢や運動不足などが原因で詰まってしまうことがあります。匂い袋が詰まりやすい猫は、そのままにしておくと、炎症を起こしたり、破裂につながったりするので、定期的に絞ってあげましょう。
猫の匂い袋が腫れて膿が出ているようなときは、動物病院に連れて行ってくださいね。