猫の進化の歴史とは?祖先となった動物や人間と暮らすまでの過程

猫の進化の歴史とは?祖先となった動物や人間と暮らすまでの過程

私たちの身近に常に寄り添い、家族として暮らしてきた動物たち。そんな動物たちにも祖先がいます。この記事では、猫の進化の歴史や、人間と暮らすまでの過程についてご紹介します。

猫の進化につながる祖先となった動物

横を向く猫

現在、地球上には140万種類の動物がいますが、そのなかで哺乳類はどのくらいいるでしょうか?

答えは約5500種類です。

では、その哺乳類の大本となった祖先をご存知ですか?ここでは哺乳類の祖先をさらに深掘りし、猫の進化のカギとなる動物について紹介します。

猫や犬の祖先となった太古の動物は「ミアキス」

恐竜が絶滅したといわれる6500万年前〜4800万年前、ヨーロッパ大陸の森林に「ミアキス」という動物がいました。

30cmほどの小さな体で主に樹上で生活し、小動物を捕食して暮らしていました。このミアキスこそが、現代に生きる肉食動物の祖先なのです。

ミアキスにはざまざまな種類が存在し、その中には猫や犬の祖先もいました。また、猫や犬だけでなく「イタチ科」「クマ科」「ハイエナ科」などの食肉目に分類される肉食性の動物はミアキスが祖先なのです。

意外なところでは、アシカやセイウチなどもミアキスが祖先であるとされているんですよ。

ミアキスの特徴と生態

ミアキスの体長は30センチほどで、胴は長くほっそりしていて、長い尾と短い脚が特徴的です。現代のイタチによく似た姿であったと考えられています。

後ろ脚は前脚より長く、四肢の先端には、猫のように引っ込めることができる鋭い爪を備えた5本のユビがありました。また骨盤の形は犬に近いことが分かっています。

これらの特徴から、ミアキスは猫と犬の共通点を多く持っていることが分かります。また、ミアキスは好んで樹上で生活していたかというと、そうではありませんでした。

当時の地上ではヒアエノドン科の肉食哺乳類が生活しており、捕食者として非常に高い地位にいたため、ミアキスは樹上での生活を余儀なくされたというわけです。

猫の進化の歴史

ヤマネコ

動物たちは、狩りの方法や生活スタイルを変化させ、長い年月をかけて進化してきました。その結果、ネコ科だけでもとても多くの系統や種類が存在します。

ここでは、猫の進化の歴史を解説し、猫と犬を分けた狩りの方法についても紹介します。

森から動かず狩りを続けた「ネコ」

ミアキスはもともと森で生活しており、長いあいだ森から動くことはありませんでした。常に単独で狩りを行い、待ち伏せしてやってきた獲物を鋭い爪で仕留めて捕食する、という「待ち伏せスタイル」をとっていました。

このとき、森から動かなかったミアキスが「ネコ」へと進化し、瞬発力や優れた聴覚、木登りのための器用な前足を手に入れたのです。群れることなく自由に行動する様は、まさに現代の自由奔放な猫の姿ですね。

平原に移動し群れで行動した「イヌ」

森で生活していたミアキスは、森林の減少や乾燥によって、森を離れるものがでてきました。森を離れたミアキスは広大な平原へ移り住み、群れで協力して獲物を追い詰めるという「追い込み型」の狩りのスタイルに変わっていきました。

このとき、平原に移り住んだミアキスが「イヌ」へと進化し、獲物を威嚇するための大きな鳴き声や、身を守れるような筋肉質な体と脚力を手に入れたのです。

また、獲物を追い詰めるためにはチームワークが必要になり、群れを統率する絶対的なリーダーが生まれました。現代の犬が飼い主との主従関係を築けるのは、このときの名残であると考えられています。

猫の仲間は8系統37種類に分けられる

すべての肉食動物の祖先はミアキスですが、現在の37種類のネコ科の祖先は、約1100万年前に生息していたプセウダエルルスという動物だったと考えられています。

200kgを超えるライオンから、1.5kgほどしかないサビイロネコまで、このプセウダエルルスが進化したものなのです。

プセウダエルルスは、大陸移動や氷河期など長い年月を経て、カルカラ系統・オオヤマネコ系統・ピューマ系統・ベンガルヤマネコ系統・オセロット系統・ベイキャット系統・ヒョウ系統・イエネコ系統の八つに分かれ、世界中に広がり進化しました。

また、この進化の過程で、イエネコ系統のリビアヤマネコだけが家畜化されたと言われています。リビアヤマネコの生まれ持った性格の穏やかさは、人間と暮らすには欠かせないものだったのです。

家猫に進化して人間と暮らすまでの過程

部屋でくつろぐ猫

私たちが当たり前のように一緒に暮らしている猫たちは、8系統あるネコ科の中でも、イエネコ系統の猫です。それ以外の系統の猫は人間となれあうことはせず、各々の道を選びました。

では、もともとは野生だった猫が、どのようにして人間と暮らすようになったのでしょうか。ここでは、家猫に進化して人間と暮らすまでの過程について紹介します。

遺伝的な進化はほとんどないまま野生の猫から家猫になった

私たちが一緒に暮らしている家猫は、リビアヤマネコの子孫であると考えられています。長い脚と大きな耳が特徴的で、砂のような被毛が現存のキジトラとよく似ています。

ただ、リビアヤマネコがいつから人間と暮らすようになったかは分かっていません。

その理由は、イエネコは家畜化されても遺伝的な進化がほとんどなく、遺跡から見つかる骨が野生のものか、家畜化された後のものなのか判別できないからです。

わずかな変化といえば、最近になって「ぶち柄」の毛皮が現れたことくらいでした。

家猫は人間の農耕生活の始まりに合わせて家畜化された

リビアヤマネコからイエネコに派生したのは、およそ9500年前の古代エジプト時代で、その頃から家畜化がはじまったのではないかと考えられています。

人間は次第に一箇所にとどまり、作物を育てながら生活するようになりました。

すると、作物を狙ってネズミが発生し、猫はネズミを追うようにして人間の居住地に住み着いたのです。猫はネズミを捕獲してくれるので、追い払われることはありませんでした。

ただ、当時のリビアヤマネコは人間からエサはもらっていなかったと見られ、ペットと飼い主という関係ではなく、持ちつ持たれつの共生関係を築いていただけ、と考えるのが自然ではないでしょうか。

愛玩動物としての猫の存在

猫は、ミアキスの時代から単独で行動していたため、社会性に欠け人間の指示に従うことはありませんでした。

そのため、家畜化された後も、犬のように一緒に狩りにでかけるようなことはせず、ネズミを捕獲するだけの用心棒的な存在でした。

しかし、古代エジプトで猫は神の使いとされ、大切に扱われてきた歴史もあります。また、日本では飛鳥時代から奈良時代には猫がいたと見られ、作物をネズミから守ったり、仏教の経典をネズミから守ったりと重宝されていました。

特に、室町時代頃からは愛玩動物としての地位が確立され、用心棒ではなく、人間に癒しを与える存在として、良好な関係を築いていたようです。

まとめ

外で目をつぶる猫

肉食動物の祖先「ミアキス」とは

  • 猫や犬をはじめ、イタチクマハイエナなど食肉目に属するすべての動物の祖先。
  • 猫のような鋭い爪や犬と似た骨盤など、犬と猫の共通点をあわせ持っている。

猫と犬を分けた狩りの方法

  • 森で生活し、単独で狩りを続けたミアキスは「ネコ」へと進化した。
  • 平原に移り住み、群れで狩りを行ったミアキスは「イヌ」へと進化した。

家猫として人間と暮らすまでの過程

  • イエネコ系統のリビアヤマネコだけが家畜化されるようになった。
  • はじめはネズミ退治の目的だったが、次第に愛玩動物としての地位を確立した。

この記事では、猫の進化の歴史についてご紹介しました。猫と犬が同じ祖先であることに驚いた方も多いのではないでしょうか。

同じ祖先を持ちながら、まったく違う進化の過程をたどった動物たち。身近なペット達にも深い歴史があるということを知れば、何か新しい発見があるかもしれませんね。