猫が腎臓病になった時の症状や病名、治療法

猫が腎臓病になった時の症状や病名、治療法

猫が腎臓病になった時の症状や病名、治療法についてまとめました。猫は腎臓病にかかりやすいと言われています。異変にいち早く気付くためにも、猫が腎臓に何らかの問題を抱えている時の症状や、それらの予防法について改めて確認しておきましょう。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫が腎臓病になった時のよくある症状

眠る猫

猫が患う疾患のなかでも、発症率が高く、死因として挙げられることも多い腎臓病は、初期段階では目に見える症状が少ないと言われています。原因となる疾患にもよりますが、腎臓病はゆっくりと進行するものも多く、腎臓の機能が60~70%以上失われるまでは無症状であることも多いようです。ただ、猫が腎臓病になった時によくある症状をしっかりと覚えておくことで、早期発見に繋がるかもしれません。

  • 水をよく飲み、頻尿になる
  • 食欲不振
  • 嘔吐下痢
  • 体重減少
  • 元気消失
  • 毛艶がなくなる
  • 貧血
  • けいれん
  • 体が浮腫む
  • おしっこの臭いがあまりしなくなる

猫が腎臓病になった時の症状:頻尿

まず、猫が腎臓病になった時の症状として比較的早い段階にみられるのが頻尿です。猫は、水の少ない砂漠で暮らしていたことも関係しているのか、通常は凝縮した濃い尿を排泄します。しかし、腎臓に何らかの問題がある場合は、薄い尿を大量に排泄することがあります。愛猫のおしっこの量や色で腎臓病を早期発見するためにも、ペットシーツを利用する等して日頃から尿の排泄をチェックしておきたいですね。

生じている疾患によってその症状は様々ですが、猫が腎臓病になった時は、主に上記のような症状が出ることが多いようです。元気消失、貧血などを引き起こしている場合は既に末期の可能性もあります。少しでも異変を感じた場合は、すぐにかかりつけ医を受診しましょう。

猫がかかりやすい腎臓病の種類

獣医師と猫

猫は腎臓病にかかりやすく、15歳前後の猫では30%が腎臓病を患っており、その発症率は犬の2~3倍とも言われています。その原因はハッキリと解明されていませんが、濃度の高い尿を排泄することで、腎臓に負担が掛かりやすいのではないかと考えられている様です。そこで、猫の腎臓の種類やその治療法についてご紹介します。

  • 猫の慢性腎不全
  • 猫の急性腎不全
  • 猫の水腎症
  • 猫の急性糸球体腎炎
  • 猫の腎盂腎炎
  • 猫の腎結石

猫の慢性腎不全

猫が発症する腎臓病のなかで、最も発症率が高いのがこの慢性腎不全(まんせいじんふぜん)です。慢性腎不全とは、尿のろ過を担っているネフロンと呼ばれる器官が、時間を掛けて徐々に破壊されていくことで、腎臓が慢性的に機能不全に陥る病気です。好発年齢は9歳頃とされており、加齢と共に発症率は上昇します。

猫の慢性腎不全の症状は、頻尿、食欲不振、体重減少、貧血などが挙げられますが、これらの症状は腎臓の機能が60~70%程度まで破壊されてから生じる場合も少なくありません。また、慢性腎不全は猫の不治の病と呼ばれることもあり、完治は望めません。しかし、この腎臓病の進行を遅らせることは可能です。

一度ダメージを受けた腎臓を元に戻すのは非常に困難です。そのため、猫の慢性腎不全の治療法は、対症療法が主となり、慢性腎不全自体の治療ではなく、慢性腎不全による症状を抑える治療を行います。同時に腎不全に対応した食事療法を行うこともあります。海外では、腎移植が行われている場合もありますが、日本ではまだまだ現実的ではありません。

2017年4月に、共立製薬株式会社から「ラプロス」という猫の腎臓病である慢性腎不全の新薬が発売され話題になりました。これは、人間の原発性肺高血圧症や、犬の心疾患などに用いられる薬で、腎機能の低下を抑制する効果が期待できるようです。不治の病と呼ばれる猫の慢性腎不全に対抗できる新薬に期待したいですね。

猫の急性腎不全

猫の急性腎不全(きゅうせいじんふぜん)は、その名の通り急速に腎臓が機能不全に陥ってしまう病気です。前述の慢性腎不全とは対照的に、急激に激しい嘔吐や下痢、食欲不振など、一見胃腸障害のような症状が現れます。猫の急性腎不全は、腎毒性物質と呼ばれるものを摂取した場合や、何らかの疾患による腎臓の異常などによって引き起こされます。

腎毒物性物質とは、生物が有する毒や、ユリ科植物、エチレングリコールなどのことを指し、特にこのエチレングリコールによる急性中毒は多く報告されています。と言うのも、このエチレングリコールは甘い香りや味がするため、誤って猫が口にしてしまうことが多いのです。車のエンジンや、住宅の暖房ヒーターの冷却水として使用される不凍液にも含まれており、ガソリンスタンドや駐車場、保冷材の一種などを猫が誤飲してしまう可能性が高いです。エチレングリコールを摂取すると、急激に腎尿細管上皮細胞を破壊し、急性腎不全を引き起こします。

急性腎不全の治療法も、対症治療が主となります。別に基礎疾患がある場合は、そちらの治療も同時進行で行います。腎毒物性物質による急性腎不全は、予防できる病気でもあります。猫が毒物を摂取しないよう、完全室内飼いの徹底や、猫にとって毒になるものに対しての知識を蓄えておくと安心ですね。

猫の水腎症

猫の水腎症(すいじんしょう)とは、腎臓と膀胱を繋ぐ尿管が何らかの原因で閉塞することで腎臓に尿が溜まってしまう症状と、血流が悪くなることによって腎臓が部分的に委縮してしまっている症状が引き起こされている状態のことを言います。

水腎症は無症状の場合も多く、特異的な症状ではお腹が膨らむことが挙げられます。水腎症に陥ることで腎不全に似た症状を引き起こすこともあります。猫の水腎症の原因は、先天的な尿管の奇形や、後天的な結石や腫瘍による詰まりや圧迫、避妊手術時の不慮の尿管結紮などがあります。

猫の水腎症における治療法は、片側性と両側性によって分けられ、片側性の場合は外科手術が行われることもあります。両側性の場合は、腎不全に似た症状が生じることから急性腎不全と同じ対症療法が用いられます。

猫の急性糸球体腎炎

猫の急性糸球体腎炎(きゅうせいしきゅうたいじんえん)とは、急性腎炎(きゅうせいじんえん)とも呼ばれ、腎臓内部にある糸球体(しきゅうたい)に炎症が生じた状態のことを言います。この糸球体とは、毛細血管の塊のことで血液中の老廃物をろ過する役割を担っています。糸球体が炎症を起こすことで、ろ過機能が低下し、血液中に老廃物が残ったままになります。

猫の腎臓病である急性糸球体腎炎はおしっこの量が減る、元気消失、口から強いアンモニア臭がするなどの症状を引き起こします。この急性糸球体腎炎の原因ははっきりと解明されておらず、何らかの細菌感染によっての発症である可能性が考えられています。また、この急性糸球体腎炎を発症した猫のうち75%がオス猫であると報告されています。猫の急性糸球体腎炎の治療法も、他の腎臓病と同じで、対症治療や基礎疾患の治療が主です。

猫の腎盂腎炎

猫の腎盂腎炎(じんうじんえん)とは、腎臓内部にある腎臓と尿管を繋ぐ腎盂(じんう)と呼ばれる部位に炎症が生じることで、腎臓が機能不全に陥った状態のことを言います。腎盂に炎症が生じると、周囲に炎症が広がる場合が多いことから「上部尿路感染症」と呼ばれることもあります。急激に症状が現れるものを「急性腎盂腎炎」、長い時間をかけて症状が現れるものを「慢性腎盂腎炎」と呼びます。慢性腎盂腎炎の場合は、発覚時に既に慢性腎不全に陥っている場合が多いとされています。

猫の腎盂腎炎の症状は、頻尿、食欲不振、元気消失などの他に、尿の濁り、尿のニオイが強くなる、腰付近を触ると嫌がる、痛がるなどが挙げられます。腎盂腎炎の原因は主に細菌感染で、膀胱炎などが原因になることも。治療法は抗生物質の投薬治療や、対症治療が行われます。

猫の腎結石

猫の腎結石(じんけっせき)とは、腎臓内部にある腎盂(じんう)と呼ばれる部位に結石が発生している状態のことを言います。この結石は、尿路結石と同じでストルバイトや、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムで構成されています。

腎盂に発生した結石が小さいうちは、無症状であることが多く、結石が大きくなったり、尿路感染症を併発することで嘔吐下痢、頻尿、尿の濁り、血尿などの症状が現れます。猫の腎結石の原因は、尿路感染症や食事の偏り、体質、飲水量などがあります。治療法は、結石の種類や状態によって異なりますが、外科手術や投薬治療、食事療法などが行われます。

猫の腎臓病を予防する方法

水を飲む2匹の猫

猫の腎臓病についてお話ししてきましたが、これらの病気を予防することは可能なのでしょうか。残念ながら、猫が腎臓病にかかりやすい原因ははっきりと解明されていません。一度破壊された腎臓を元に戻すのは非常に困難とされており、早期発見が要とされているのに反し、初期症状が少ないのも特徴で、60~70%以上の腎機能が破壊されてから目に見える症状が出始めるケースも多いとされています。では、可能な限り健康に寿命を全うしてもらうために、飼い主にできることは何なのでしょうか。

  • 猫の腎臓病を予防する方法①水分補給
  • 猫の腎臓病を予防する方法②自宅でできるpH値チェック
  • 猫の腎臓病を予防する方法③定期的な健康診断
  • 猫の腎臓病を予防する方法④良質な食事

猫の腎臓病を予防する方法①水分補給

猫が腎臓病にかかりやすいのは、猫が凝縮した濃度の高い尿を排泄する習性が関係していると考えられており、猫の祖先が砂漠で暮らしていたことから、少ない水分で生きていく習性があり、その習性が結果的に腎臓に負担をかけていると言われています。

そのような習性から、猫は積極的に水分補給をしないため、尿濃度が上昇しやすく、尿路結石や膀胱炎などの泌尿器系疾患を発症することも少なくありません。猫の腎臓に負担をかけないためにも、水分補給を促すことが非常に重要です。ちなみに、猫が一日に必要とするおおよその水分量は以下の通りです。

  • 体重3kgに対し、約150ml~
  • 体重4kgに対し、約200ml~
  • 体重5kgに対し、約230ml~

猫がいつでも新鮮な水が飲めるよう、複数の水飲み場を用意したり、自動給水器を取り入れたりするなどの工夫をしましょう。

猫の腎臓病を予防する方法②pH値チェック

良質な食事と水分補給にしっかり気を配っていても、腎臓病を患ってしまう場合もあります。そこで重要になるのは、早期発見です。しかし、何度もお話ししたように腎臓病は初期症状が少ない場合が多いとされています。そこで、予防しきれない腎臓病を少しでも早く見つけるためにも、自宅で簡単に行うことができる「pH値チェック」をおすすめします。

pH値チェックでは、猫のおしっこが酸性か、アルカリ性かをチェックすることができます。正常な猫のおしっこは弱酸性ですが、何らかの異常がある場合はアルカリ性に傾きます。猫の尿が正常かどうかをみる数値に関しては、正常値がpH6.4±0.2(弱酸性)とされていますが、難しい知識は必要ありません。おしっこに浸した試験紙の色と、色見表によって簡単に見分けることが可能です。

猫の腎臓病を予防するチェック方法として、必要な分だけ切り取って使用することができるロール式のpH値チェッカーなども販売されていますので、おしっこのチェックを習慣づけておくと異変にいち早く気付くことができるかもしれません。

猫の腎臓病を予防する方法③定期的な健康診断

猫の腎臓病を予防するために、猫が1歳~6歳の場合は年に1度、7歳からは半年に1度の健康診断を受けましょう。腎臓病の検査は主に尿検査(pH値、尿比重(USG)UPC(尿蛋白クレアチニン比))や、血液検査(BUN(血中尿素窒素)、Cre(クレアチニン))が行われ、その数値によって診断されます。なるべく早い段階で、猫の腎臓病に気付くことができれば、進行を遅らせることもできます。検査項目や頻度に関してもかかりつけ医としっかり相談しておくと安心ですね。

猫の腎臓病を予防する方法④良質な食事

腎臓病に限ったことではありませんが、やはり愛猫の健康のためには良質な食事を摂ることが重要です。現在では、様々なキャットフードが販売されていますが、猫の腎臓病を予防するためにも、肉食動物の猫に必要である良質なタンパク質を適切量含んだフードを選びましょう。

腎不全の症状が現れるのは2個ある腎臓の内3/4が機能しなくなってからです。腎不全になるとタンパク質は腎臓の負担になりますので、タンパク量を制限していきます。肉食だからとたんぱく含量の高いものを年齢や症状にかかわらず食べさせてしまうとかえって悪化させてしまいます。

また、猫の食事といえばドライフード、所謂カリカリが一般的ですが、猫の腎臓病予防のために水分を多く含んだウェットフードを取り入れるのもひとつです。嗜好性が高いことや、歯垢が溜まりやすいなどの理由で敬遠されがちなウェットフードですが、水を積極的に飲まない猫の水分補給法としては、腎臓病予防にとても有効的です。もちろんメインのフードはカリカリで、1日に1度や数日に1度など、飼い主さんが決めたペースで食べさせてあげるのがいいかもしれませんね。

まとめ

猫を抱く女性

猫の腎臓が悪い時の症状や、病気、それらの予防法についてご紹介しました。老年期に入った猫の殆どが腎臓病を患うと言われるほど、猫と腎臓病は身近な関係にあります。猫と暮らす以上、腎臓病に関しての知識はどれほどあっても無駄にはなりません。また、予防が難しい猫の腎臓病をいち早く発見するためにも、日頃の健康チェックや、健康診断を欠かさず行いたいですね。

投稿者

30代 女性 のりちゃん

猫ちゃんの、腎盂腎炎は祖母の猫ちゃんが経験しました。
尿道からバイ菌が入り激しい腹痛と血尿で気がついたそうで、すぐに、獣医師に診ていただき腎盂腎炎だと判明しました。
かなり、弱っていましたが点滴をずっと続けて2日間の入院も頑張りました。
食欲も戻り、すっかりと元気になり退院してきました。それからは、大きな病気もせずに12才まで生きてくれました。とても、賢くて穏やかな性格でしたが、人が苦手だったので、来客があるとこたつの中に逃げていました。
窓から外を眺めるのが大好きな静かな猫ちゃんでした。
投稿者

50代以上 女性 匿名

うちは二匹、兄妹猫がいます。昨日定期検査と注射に行ったら腎臓病と2匹とも言われました。ショックでした。
特にオスの猫は病院にお世話になることが多く、ケンカしてケガしたり、結石にはなるし、手のかかる子ほど可愛いとはこの事です。12歳になり腎臓病って…できるだけ長生きしてほしいです。

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