猫又はどんな妖怪?起源や化け猫との違い

猫又はどんな妖怪?起源や化け猫との違い

「猫又」「化け猫」という言葉はよく耳にしますよね。しかしこの「猫又」「化け猫」二つの言葉が違うとは考えていませんでした。様々な違いを探りたいと思います。

猫又とは

猫又

出典:https://ja.wikipedia.org

その昔、当時の猫の平均寿命はとても短く、10年以上も生きる猫はあまりいませんでした。なので、「10年生きた猫はしっぽが二つに割れ、人の言葉を話すようになる」さらに、「15年を過ぎると、不思議な力を身に着け始める」と言われていたのです。猫又になった猫は、人に災いをもたらす、人をたぶらかすなど、人間にとって良くない生き物として恐れられていました。

猫又の特徴

  • 飼い猫が老齢になると化けるのが猫又
  • 猫又は尻尾が分かれる(二股)
  • 猫又は長生きで不思議な能力を身につける
  • 猫又は二本脚で踊る
  • 黄色や黒色の毛色が猫又になりやすい
  • 大きい猫は猫又になりやすい

飼い猫が年を重ねると猫又になると言われ、人間の言葉が通じたり言葉を操ったり不思議な能力を身につける妖怪と言われていました。ただし、伝承により3年、5年、10年以上、13年など、猫が猫又の年になるのが何年かは定かではありません。

そして猫又は、二本脚で手ぬぐいを持って踊るなどとも伝わっています。猫又の被毛は黒色であるほど能力が強いとも残されています。

猫又になると言われている猫

  • 人が長く飼っていた猫
  • 野生の山猫

長年飼っていた猫が猫又になる場合と、山猫が猫又と言われ人家にあらわれる場合とがあります。

猫又の尻尾が割れている理由

正確な理由は分かっていないのですが、とある一説によると、狐は年をとると妖気が増してしっぽが九つある「九尾」になるというお話がありますよね。猫と狐、どちらも「化ける」イメージがあり、見た目もどことなく似ています。そのため、しっぽが九つになる狐のイメージが猫にも定着し、猫もしっぽが割れた「猫又」が描かれるきっかけになったのではないかと言われています。

猫又の起源

平安時代

平安時代の終わり頃には、既に猫は化けると言われていました。 しかし、まだ「化け猫」のみで「猫又」の存在はありません。

鎌倉時代

鎌倉時代に入ると、明月記という日記の中に「猫股という、目は猫、身体は犬のような生き物が、人を7、8人襲った」というお話が登場し、ここで猫又の名前がでてきます。一方、京の都で流行した「猫股病」という疫病もあり、これは中国に伝わっている伝染病の鬼神、「猫鬼(びょうき)」からきていると思われます。そして、鎌倉時代末期になると、徒然草という書き物の中に「猫又という生き物が山の奥で人を食う」「山だけではなく、そこいらにいる猫も長生きすれば猫又となり人を襲うこともあるだろう」と記されているところがあり、平安時代にはただ化けるだけだった「化け猫」から、「猫又」となって人に危害を加えるという悪いイメージがつくこととなったのです。

室町時代

室町時代に入ると、玉藻前というお話の中に「しっぽが二本、または九本に分かれた狐が美女に化けていた」という箇所があります。 ここで猫又と大きく関わりのある九尾の狐が登場しました。

江戸時代

そして江戸時代、中国の化け猫「金花猫(きんかびょう)」の「3年以上飼われている猫は人を迷わすことが出来る」という部分が、約100年かけて日本に浸透していき、日本の猫又の「長生きした猫は化ける」というイメージが加速したと言われています。さらに、雄猫は遺伝子的に金色の毛色(オレンジ系)が生まれやすいことから「10年以上生きた雄猫は化けて人に害をなす」と、雄猫にスポットが当たるようになりました。そして江戸時代中期に差し掛かると、「老猫は身体が大きくなり、しっぽも二つに分かれ、人々に災いを成す猫又となる。しっぽが割れているからねこまたというのだ」といった内容が広まり、江戸時代後期の頃には猫又=しっぽが割れているというイメージが定着したというわけです。

猫又と化け猫の違い

化け猫

出典:https://ja.wikipedia.org

歴史

猫又と化け猫では猫又の方が歴史は古いようです。猫又は中国の随(600年前後)が伝承の始めで、その時は「猫鬼(びょうき)」と言われました。「猫鬼」を祭る人が、対象の人に取り憑かせ、猫鬼が取り憑いた人を食べ取り憑いた人の財産等を祭った人間にもたらすとして、当時の中国政府が撲滅に乗り出すくらいに流行したようです。しかし随から唐へと時代が変わり、猫鬼も忘れられていったということです。

起源

  • 猫又は「名月記」の中に記述(1233年)
  • 化け猫は「古今著聞集(ここんちょもんじゅう)」の中に記述(1254年)

猫又も化け猫も鎌倉時代に書かれた著作が起源となっています。

名月記は藤原定家が日記として約56年の歳月を執筆しています。その中で、北条泰時が執権であった1233年に「猫股(猫又)」という凶暴な獣が出現し7〜8人を食い殺したと書かれています。「猫股(猫又)」は山猫が原因であり、猫の妖怪変化ではありませんでした。

化け猫は「猫の魔性性」を基本に存在しているので、伊賀守橘成季によって編纂された世俗説話集である「古今著聞集」が起源であろうと言われています。嵯峨に住んでいた法師と唐猫の話で、法師が愛すべき猫に与えた刀を、猫から取り上げようとする人々に対して魔の力を借りて立ち向かう様子が描かれています。

原因

  • 猫又は長生きをして不思議な力を身につける
  • 化け猫は怨念や恨みで化ける

長年生きた猫は不思議な力を身につけ「猫又」になると言われました。そして猫又がもっと修行すると猫魈(ねこしょう)になるとも伝承されています。

化け猫として有名な「鍋島猫騒動」のように恨みや怨念が猫に託され、激しい怨念から「化け猫」になると言われています。ただし、地域により猫が何歳以上になれば化け猫になると伝承されている事も多くあります。

尻尾

  • ねこま(寝駒)→ねこまた(猫又)→尻尾が二股
  • 猫又は尻尾が二股にわかれる

鎌倉時代末に書かれたであろう「四季物語」という書物には猫又の正体が「原野に住む老齢の猫が猫又になる」と描かれています。ねこま(寝駒)という言葉に、「た」を付けた物が「ねこまた」であり、後々当て字として「猫又」となり尻尾が二つに分かれるという説が生まれたようです。

化け猫は、尻尾が二股に分かれる事はなく普通の猫の姿です。

当時の人たちのイメージ

  • 猫又は精霊、神
  • 化け猫は怨霊、幽霊

猫又は老齢の猫が人間に化けたり、人間をたぶらかしたりする精霊や神のような妖怪として扱われています。化け猫は人間に取り憑いたり、人をたたったり、人を操ったり激しい恨みに基づいた怨霊が元になり人間を殺してしまう事が多いようです。

猫又と化け猫の違いは、よりプラスの意味とよりマイナスの意味の違いがあるでしょうか。

猫又は本当にいるの?

境内にいる黒猫

吉田兼好著作の「徒然草」に猫又の話が書かれていますが、猫又は結局飼い犬であったというオチがついています。猫又は人間の臆病な気持ちの現れだったり、自然からの人間への諌めなど説明の出来ない自然現象をあらわしていたこともあるのではないかと思います。

猫の不思議な見た目や、死に際を人間に見せないように家出する猫の習性も猫又の特徴にしやすかったようです。

猫又がついた地名がある

猫又の存在が信じられていたので地名に残されている場所が何カ所かあります。

猫又が付いた地名1.猫魔ヶ岳(ねこまがだけ)

猫魔ヶ岳

出典:https://ja.wikipedia.org

  • 福島県会津
  • 標高約1404m

猫魔ヶ岳にいた山猫が山を下り人間を襲ったと言われています。この頃山猫は神と崇められ災難除けの霊験もあるとされていました。近くの磐梯神社では山猫の絵を描いて災難除けのお札として江戸時代まで売られていました。

猫又が付いた地名2.猫又山

猫又山

出典:https://ja.wikipedia.org

  • 富山県猫又山
  • 標高2378m

富山県魚津市と黒部市にまたがる毛勝三山(けかちさんざん)の一つが猫又山です。黒部の山の中に猫又が人に追われすみつきました。大猫であり人を襲う事があったようで猫又がいたのではないかと伝承されています。黒部川を下ると猫又駅や猫又谷がありますので、猫又の存在は信憑性が高く実在していたとも言われています。

猫又が付いた地名3.猫又駅、猫又谷

猫又駅

出典:https://ja.wikipedia.org

  • 富山県黒部市黒部川近く
  • 黒部峡谷鉄道(関西電力)

猫又駅は黒部峡谷鉄道の一つで、関西電力専用の線路のために一般客の利用はできません。猫又山とは黒部川でつながっており猫又谷が広がっています。

猫又が付いた地名4.猫又坂

  • 文京区千石
  • 昔存在していた猫又橋の名残

猫又坂を下っていきますと千川(小石川)にぶつかります。この橋を渡るために木の根っこで橋をかけました。そのために「根子股橋」と呼ばれたそうです。この根子股橋で、猫が手ぬぐいを持って踊ったり、猫に人間が追いかけられたりと猫又の伝説があります。

猫又坂はこの伝説のある猫又橋に由来しています。

まとめ

寝る茶色猫

猫又はどんな妖怪?化け猫との違いをお伝え致しました。

猫は古代エジプト時代は神格化され珍重されていました。しかしその後はネズミを食べ人間に役立つ事が分かるまでは、猫は忌み嫌われる歴史が長く続きました。

魔女裁判の時は一緒に黒猫も処刑されていますし、シェイクスピアの「マクベス」には魔物として老雌猫が登場しています。そして極めつけは、釈迦が猫を魔物として十二支に入れなかったとも言われています。海外でもベトナム、チベット、ブルガリアでは干支に猫を入れています。奥の深い猫と人との繋がりです。

猫の勝手気ままと言われる人間的な性格や、突然に消えてしまう習性、そしてくるくる表情の変わる目や、爪を持った柔らかくしなやかな身体から妖怪に見立てられやすいのかもしれません。

人間の関知できない摩訶不思議なことは世の中にはいっぱいあると思いますので、「猫又はいるのではないか」と考えてしまいます。皆様はいかがでしょうか?

投稿者

20代 女性 うみか

猫又は、人間の弱い心のあらわれだったりするのですね!
調べているうちに、妖怪の仕業でないことがわかりまして安心しました。猫ちゃんの妖怪が人を襲ったりという記述があって怖いなと思いました。ですが、それは犬の仕業だということがわかりまして、驚きました。猫ちゃんからの伝染病のことを猫鬼(びょうき)と呼んでいたそうです。のちに、人間の気持ちを表した昔の言い伝えだそうです。猫又の絵が怖いので、見ているとぞくぞくしますが昔の人は怖くはなかったのでしょうか。猫ちゃんはどちらかというと昔から不思議な存在なんだなと感じました。

スポンサーリンク