猫に鎖骨はあるの?
「にゃんたい動物」と呼ばれることもあるほど柔軟な体を持つ猫ですが、猫の骨格には果たして「鎖骨」と呼ばれる部位は存在するのでしょうか。
答えは「鎖骨そのものは存在するが、退化して機能していない」です。実際に猫の骨格をレントゲンで確認してみると、申し訳程度に鎖骨の存在を確認することができます。
退化というと聞こえは悪いですが、これは犬や馬など四足歩行する動物の殆どに見られる現象でもあるのです。人間の鎖骨は胸骨や肩甲骨などと連結していますが、猫の鎖骨は筋肉と繋がっているだけで、つまりは宙に浮いているような状態なのです。
猫の鎖骨はどうして退化した?
猫の鎖骨はどうして退化したのか。退化するべくして退化した、猫の鎖骨の謎に迫ります。
衝撃を和らげるため
前述したように、この鎖骨の退化は猫以外の四足歩行動物にもみられる現象です。四足歩行の動物は後ろ足で地面を蹴り、勢いよく進んだ体を前足を使って着地させます。つまり、この時前足には体重の何倍もの負荷が掛かるということ。
そもそも鎖骨とは腕の骨と背骨を繋ぐ骨であるため、もし猫の鎖骨が筋肉ではなく背骨と繋がっていたら、着地した時の衝撃が鎖骨、背骨、内臓にダイレクトに伝わってしまうことになります。
つまり、前足は着地する際の衝撃を和らげる役割も担っており、逆に鎖骨があると困るともいえるのです。
歩行に特化した構造
人間はもちろん、猿やうさぎ、ハムスターなどにも鎖骨が存在します。鎖骨がある動物最大の共通項といえば「前足を手として使用する」ということ。
鎖骨が手を安定させる土台のような役割を担っているようなイメージです。猫を含む鎖骨が退化している四足歩行の動物は、前足で物を掴むことはなく手先の器用さには欠ける代わりに、歩行や走行に特化しているのです。
これらのことを考慮すると、鎖骨は猫の骨格に必要がなかったということが分かりますね。鎖骨が存在するメリットよりもデメリットの方が多かったのでしょう。
猫が柔らかいのは鎖骨のお影
猫が柔らかいのは鎖骨が退化して機能していないからということが分かりました。猫の鎖骨が退化したからこそ出来ることには以下のようなものがあります。
高所からのジャンプ
前述したように鎖骨が退化していることによって、背骨や内臓に衝撃を伝えることなく、瞬発的に走ったり、高所からジャンプしたりすることができます。退化した鎖骨、さらに比較的柔軟性の高い背骨の関節のお陰で猫のしなやかな身のこなしが実現するのです。
狭い場所を通り抜ける
猫は「頭が通る隙間であれば通れる」といわれます。これは、鎖骨が退化したことによって肩幅を自在に操ることができるからですね。猫が狭い隙間に入り込めるのも、退化した鎖骨のお陰ということです。
骨折しにくい
猫の鎖骨が退化したことによって、骨折のリスクが軽減されているともいえます。実際に人の骨折の約10%が鎖骨とされており、もし猫の鎖骨が柔らかい筋肉だけではなく背骨などと繋がっていたとしたら、それらへの影響も十二分にあったと考えられますね。
寝相がバラエティ豊か
猫は「何故そうなった…。」と飼い主さんを驚愕させる寝相を披露することも珍しくありません。これは猫の体がとっても柔らかいからですよね。猫特有の寝相である「ニャンモナイト」「アンモニャイト」。これらも鎖骨の退化の賜物といえます。
鎖骨があると出来る事
人以外にも猿、うさぎ、ハムスターには鎖骨があるということを前述しました。
逆に鎖骨がない動物は犬や馬、牛、ゾウ、更にはネコ科動物であるライオンやチーターなど。これらの動物を比較してみると理由はそれぞれ異なるものの、鎖骨がない動物は「歩行に特化すべき習性」を持つことが分かります。
手を使って作業できる
鎖骨が退化する、もしくはないことによって得られるメリットは既に紹介済ですが、鎖骨があるからこそできる最大のメリットは「掴む」「抱く」という行動が可能となることです。
人は鎖骨のお陰で腕、手で細かい作業を行うことができます。それと同様に猿、うさぎ、ハムスターなどの動物が両手を使って器用に毛づくろいをしたり、エサを食べたりできるのは鎖骨のお陰です。
猫にうっすら鎖骨があるのはなぜ?
この事を考えると、猫の習性をよくご存知の方は矛盾を感じたかもしれません。ここまでで「猫の鎖骨は退化して機能していない」ということを紹介してきましたが、実は「猫には鎖骨がない」というと嘘になります。
というのも数ミリ程度でありながら、四足歩行の動物のなかで猫は骨格の割には大きな鎖骨を持つ…といわれることもあるのです。
実際に猫は木登りができますが、犬にはできません。これは、小さいながら鎖骨がある猫に対して鎖骨が全くない犬は、前足の間隔を調節して物を挟み込みホールドすることができないからです。
確かに猫は手先が器用な個体も多く、状況によっては「前足」というより「腕」に近い感覚で利用しているように感じられる行動が見られることもしばしば。
つまり猫は、退化してこそのメリットだけではなく、デメリットにならない程度の鎖骨を最大限に利用しているということ。
ただ柔らかく、かわいいだけではなく長い年月をかけて猫にとって必要な骨格を作り上げてきたということですね。