猫はなぜ外出が嫌い?
「社会化期」という言葉を聞いたことがある飼い主さんはどのくらいいるでしょうか?
社会化期とは、心の発達に大きな影響を与える時期のことで、
- 他の動物とのコミュニケーション
- 人との交流(接し方、触られること)
- 室内外の音、匂いなどの刺激
に慣れていくための貴重な時間です。
この期間にいろいろな刺激に慣れておくことで、他の猫・人・場所を受け入れやすくなる受け皿が猫の中にできます。しかし、犬の社会化期が生後1~3か月頃まであるのに比べ猫の社会化期は生後3週齢~9週齢と犬より早くスタートして終わるのが特徴です。
猫は社会化期を逃しやすい
ところが、子猫を家に迎え入れたころにはすでに社会化期が終わっていたり、より幼いうちに保護した子猫でもずっと家の中で家族とだけで過ごし、残念ながら社会化期をあっという間に逃してしまったということがほとんどです。
もちろんこの頃を過ぎても、まだまだいろいろなものに触れ合って対応力をみがいていく第2の社会化期であることに変わりはありません。ただ、この社会化期の頃にキャリーでの移動や動物病院へ行くことに慣れていると、将来成猫になってからも、動物病院へかかる時に比較的ストレスの少ない来院ができると言われています。
動物病院へ行った方が良いのはなぜ?
社会化期を逃したり、子猫の頃の外出時に怖い思いをしてトラウマができると、ますます動物病院へ行くことが苦手になってしまいます。そこで、子猫の頃から動物病院を利用するメリットを考えながら、飼い主である自分自身と猫、そして動物病院との関わり方をぜひ知っておきましょう!
生後12か月までの子猫の時の関わり方
子猫の時に意識したいことは、社会化期の頃はもちろん、心と体の成長期を過ごすこの時期に「トラウマ」を植えつけないこと。動物病院ではどうしても、ワクチンなどの注射や投薬といった「子猫にとっての嫌なこと」を行う場面も出てきます。
この時に、子猫にとって嫌なことをしただけで終わってしまうと、段々と怒るようになったり恐怖でパニックになる猫へと成長してしまいます。嫌なことをする瞬間には、「声をかけて気をそらす」「なでて痛みを紛らわす」おやつをうまく使うなどの対応を心掛けてあげましょう。
猫の扱いに慣れた獣医さんや動物看護師の場合、子猫が痛みや違和感で嫌がらないように接し方を工夫してくれる人もたくさんいます。
子猫のうちに動物病院をしっかり利用するメリット
- 幼い頃からの情報が動物病院に記録として残る
- キャリー移動や動物病院という環境に慣れるきっかけになる
- 成長期の体重チェックが正確にできる
- 順調に体の異常なく成長しているか診断してもらえる
- 子猫の育て方で悩んだ時に専門的なアドバイスがもらえる
- 去勢避妊手術を任せたいと思える信頼できる獣医師を判別することができる
といったメリットを得ることができます。
「本当にこの育て方でいいのかな?」「子猫の噛み癖で困っている…」子猫の成長はあっという間で、ごはんやトイレなどの育て方や、頭を悩ませる行動が出てくることもたくさんあります。生後1か月以内の子猫を保護した飼い主さんならなおさらです。幼い頃から獣医さんや動物看護師に飼い猫のことを知ってもらい、気軽に相談できる相手としてぜひ動物病院を利用してみてくださいね。
成猫の時の関わり方
生後1歳を過ぎる頃にはある程度の性格形成も終わり「うちの子はこんな子!」と飼い主さんもはっきりと伝えられることが多いでしょう。この頃になると、年に1回のワクチンくらいしか来院することがなく、動物病院と接する機会は激減することがほとんどです。
しかし、年に1回の来院頻度では「楽しくないことしかされない場所」と猫が認識しなおかつ他の犬や人の匂いで緊張するため、余計に動物病院を嫌ってしまうこともしばしば。そうなってしまうと、年に1度の診察だけでなく、飼い主さんの不在で動物病院のホテルを利用したい時などにも、猫に大きなストレスがかかってしまうことが考えられます。
おすすめは、定期健康診断を受けること。この時のメニューは「痛み」を感じることのない身体検査だけでも構いません。毎年春先から始まる寄生虫予防薬の処方を、まとめて処方ではなく3か月ごとに処方してもらうスパンに切り替えて、ついでに診察を受けるという方法をとるのも来院のきっかけにできます。
成猫の頃にも定期的に通うメリット
- 元気な時の記録が動物病院に残り、病気の時との比較が簡単にできる
- 獣医師が飼い猫のことを覚えやすくなるので、性格や接し方を理解してもらいやすい
といったメリットができます。
可能であれば、年に1回は血液検査などを含めた健康診断を受けておくことをおすすめします。そうすることで、その猫の「ふつうの状態」が分かりやすくなり、体がしんどい、苦しい時の異常が見つけやすくなるからです。
8歳以上の老猫の時の関わり方
シニア期に突入した猫なら、「1年に4歳、年を重ねる」ということを意識して、ぜひ年間の健康診断回数を増やしたいもの。例えば年に1回の健康診断を受けていたとしても、猫の老いるスピードを考えれば、人に換算すると4年に1回しか健康診断をしていないことになります。
年齢を重ねるほど、私たち人も猫も、体が酸化することによって様々な「老化現象」が見られることになります。その老化現象の中には、外からは見えなかったりわかりにくいものである、
- 内臓機能の低下
- 関節炎などの痛み
- 筋力や体力の低下
といったものも含まれます。
シニア期は病気の早期発見に役立つ
特に腎臓病や肝臓病、がんや糖尿病などは、できるだけ早期に発見したい病気の1つ。「病気が見つかるのが怖い…」と来院をためらう飼い主さんもいますが、早期に病気を発見できるほど、治療の選択肢は広がり、完治する病気なら治るまでの来院間隔も短くなることがメリットです。
成猫の頃から病院に通っていると、獣医さんが猫のことをわかってくれて「この子にはこんな投薬方法が良いと思いますよ」「こんな治療方法も活用できますよ」と話してくれることもあるかもしれません。
体が「痛い」「苦しい」「だるい」など、猫が不調に苦しんだ時に「年に1回しか行かないから、どんなふうに獣医さんに相談すれば良いのかわからない」と悩んでしまう飼い主さんもいます。治療方法の選択や相談がしやすい動物病院・獣医さんをあらかじめ知っているということは、飼い主さんにとって大きな安心材料になりますよ。
来院時には猫のストレスに配慮しよう
猫に動物病院に慣れてもらうためには、その場所が「緊張して恐怖を覚える場所」であってはいけません。できる限り猫が快適に過ごすことができるよう、飼い主さんと獣医師・動物病院スタッフが配慮してあげる必要があります。
来院時には、猫の負担軽減のために、
- のぞき込まれにくく、猫の体が隠せるハードキャリーを使う
- スムーズな猫の出し入れのために、上部も開くキャリーを使う
- キャリーのドアから外が見えやすい時にはバスタオルなどをかけて暗くする
- 猫専用の待合スペースや専門の診察時間があれば利用する
といった方法をとってあげてください。
来院の際はお互いに疲れない方法で
可能な限り、他の動物と接触しにくい時間帯を狙って来院するほうが、猫にとっても飼い主さんにとっても過ごしやすさにつながる秘訣です。特に、動物病院によって混み合う時間帯は様々。混雑している時に来院すると、検査から結果が出るまでの待ち時間が長かったり、獣医さんや病院スタッフに気軽に話しかけられる雰囲気ではなくなってしまいます。
ぜひ普段から、動物病院の前を通る機会があれば駐車場の混雑状況をチェックしたり、あらかじめスタッフに混み合いやすい時間帯を確認するなど情報収集に努めてみてください。猫にとっても、飼い主さんにとっても、疲れない来院方法を少しずつ探してみてくださいね。
まとめ
動物病院に来院して獣医さんや病院スタッフと良い関係ができると、飼い猫の日常生活の相談から、病気になった時の自宅での看護方法まで、幅広い話題で話しやすくなります。
慣れない動物病院の待合室や診察室で過ごすことや、病院スタッフと接することは、飼い主さんにとっても緊張の連続。いざという時に慌ててしまい、来院時に落ち着いた行動ができなくなる原因になりがちです。
元気な頃から動物病院と関わっていくことによって、猫にとっても飼い主さんにとっても「信頼できる動物病院」を作ることにつながっていきます。ぜひ今のうちから定期的に、近くの動物病院に足を運んでみてくださいね。