レバノンからはるばるアメリカへやってきた14頭の保護猫
2021年12月4日、レバノンからの長旅を経て14頭の保護猫が無事ニューヨークの動物保護施設「Mohawk Hudson Humane Society」に到着しました。
この14頭の移送に尽力したのは、30年の獣医師経験を持つデビッド・チコ医師です。
チコ医師はこの5年間、ベイルートを拠点とする非営利動物保護団体「Animals Lebanon」に協力してきました。
ベイルートは経済情勢が不安定なため、Animals Lebanonとチコ医師は野良猫を保護したうえでアメリカへ移送し、受け入れ先を見つける活動を行っています。
今回の保護猫14頭もこのためにアメリカへ移送されてきました。
この取り組みは、2020年にベイルートで起こった硝酸アンモニウムの爆発事故以来、さらに重要になったと言います。
200人以上が死亡し何百人もの人々が住む場所を失ったこの事故では、同様に何百匹ものペットが家を失くし、飼い主たちは安全のためペットたちをシェルターに引き取ってもらうことを懇願したそうです。
「こうした状況に直面し、家族を養うかペットを養うかの選択を迫られた場合、人間は自分の家族を優先しなければなりません。このため多くの動物がシェルターに持ち込まれるか、捨てられました」と、チコ医師は言います。
動物保護に貢献するベテラン獣医師の活動
チコ医師はニューヨーク州農業・市場局に常勤獣医師として勤務しており、私立病院のBurnt Hills Veterinary Hospitalでも25年間勤務してきました。
彼がボランティアで動物保護活動を行ったのは、8年ほど前の動物保護慈善団体「International Fund for Animal Welfare(IFAW)」での活動が最初で、その際は台風の被害に遭ったフィリピンの動物たちを保護したそうです。
Animals Lebanonに協力するようになったのは5年ほど前からですが、当時は犬と猫の両方を助けることができました。
ところが1年ほど前から、犬は狂犬病を拡げる恐れがあるとして米国疾患管理センターにより犬の移送が禁止。Animals Lebanonは、保護した猫しかアメリカの提携動物シェルターに移送できなくなりました。
レバノンで初めての動物保護法案が成立
2018年以降、4回の移送でアメリカへ連れてこられた保護猫は50頭に上ります。
「私がこうした活動を行うのは、十分な食料を買うのにも苦労するような国の人たちが、それでも懸命に動物たちの世話をしようとしているからです」と、チコ医師は言います。
レバノンでは、2017年に飼育動物と野生動物の虐待を禁止する法律がようやく施行されました。これは国内で施行された初めての動物福祉法でした。
このように国内情勢が不安定で動物の福祉体制が十分に整っていない国がある一方、それでも動物を大切にしたいという気持ちで人々がつながっているのはとても嬉しいことですね。