下半身麻痺の「セラピー猫」が永眠、車いすで多くの人々を元気づけてきた猫と医師との出会い

車いすでセラピー活動を行う唯一無二の猫

今年6月、13年間車いすに乗ってセラピー猫として活躍してきたスクーターが、脳卒中で亡くなりました。

死の前日、新型コロナのため15カ月間中止していたセラピー訪問が再開され、久しぶりに介護施設を訪れたスクーターはいつものようにたくさんの患者を元気づけたそうです。

ですが、残念ながらスクーターのセラピー訪問はこの日が最後となりました。

スクーターは治療を受けたものの回復が見られず、飼い主である獣医のベッツィー・ケノン先生の腕の中で安らかに眠りについたそうです。

ケノン先生にとってスクーターはただのペットではなく、一緒にセラピー活動を行うパートナーでもありました。

スクーターはこの13年間、ケノン先生と一緒に週2回のペースでリハビリセンターや介護施設、病院などのセラピー訪問を行ってきたのです。

特に脳卒中や事故、脚の切断などで車いすでの生活を余儀なくされている人々にとって、車いすで活躍するスクーターの存在は非常に勇気づけられるものでした。

怪我をした子猫を救った運命の出会い

スクーターは子猫の頃に怪我をして背骨を損傷し後ろ脚が麻痺してしまったため、車いすを使うようになりました。

2008年、当時生後6カ月ほどの野良猫だったスクーターは、怪我をして動けなくなっているところを散歩中のシベリアンハスキーに救われました。ハスキー犬の飼い主は、泣きながらケノン先生の動物病院にスクーターを連れてきたそうです。

スクーターはおそらく交通事故に遭ったとみられ、下半身が麻痺して今後は医学的な補助がなければ排尿や排便をすることができないため、当初ケノン先生は彼を安楽死させるしかないと考えました。

ですが、彼の大きな目に見つめられニャーと鳴いたり喉を鳴らしたりする姿を見て、どうしても安楽死させることができず自宅へ連れ帰ったのです。

そして、その後2カ月もしないうちにスクーターはケノン先生と一緒にセラピー活動を行っていました。

セラピー猫として大きな注目を浴びる

セラピー猫はまだまだ数が少ないことから、スクーターはやがてちょっとした有名猫となります。

2010年にはアメリカの有名雑誌「Reader’s Digest」の表紙を飾り、2012年にはアメリカ動物虐待防止協会のキャットオブザイヤーを受賞しました。

ケノン先生はスクーターを偲ぶ追悼文でこう述べています。

「これまでスクーターと一緒に何百人もの人々に喜びを届けてきました。彼は私の人生を変え、心と魂を開いてくれました。この悲しみはとてつもなく大きいですが、スクーターのことや彼と一緒に行ってきたことは絶対に忘れません」