猫よりも犬が好まれるネパール|若者や動物保護団体が古い考え方を払拭するために尽力

猫よりも犬が好まれるネパールのお国事情

ネパールにおいて大抵の犬は可愛がられ崇拝されるのに対し、猫は罵られたり追い払われたりすることが多いそうです。

特に、黒猫は悪いことが起きる前兆や魔女の化身と考えられ、黒猫を見ることさえ不吉とされています。

猫は一般的に、不愛想で不誠実、そして食べ物を盗む動物と思われており、多くの家庭では積極的に猫をペットとして飼おうとはしません。

ですが近年、インターネットや猫に対する古くからの迷信を信じない若者の影響で、少しずつ状況が変化しています。

若者によるSNSを利用した里親活動の普及

サンジバーニ・ターパさん(20歳)は、自身のSNSページで犬や猫の里親になることを勧める活動をしています。

彼女の母親もやはり、猫が忌み嫌われ不運を運んでくる存在であると考えるコミュニティで育ちました。

このため、サンジバーニさんが引き取った猫に対し、彼女の母親が慣れるまでしばらく時間がかかりました。

しかし、今ではだいぶ考え方が変わり、猫と一緒に自撮り写真を撮ることさえあるそうです。

犬とは正反対の扱いの猫

サンジバーニさんと2人の友人は、猫にまつわる悪い評判を打ち消すべく、2015年から猫の可愛い動画や画像を投稿。

猫が素晴らしい伴侶動物となることや、都会の小さなアパートで暮らす忙しい家庭にとって理想的なペットであることを伝える活動をしています。

それでもやはり、ネパールの人は猫よりも犬の方を好むようです。

ヒンズー教には犬にまつわる神話が多く、ヒンズー教の伝統的な祭りであるティハールでは、1日中犬を祝い感謝を捧げます。

残念ながら猫はこのような存在ではないのです。この地域では、猫に関する肯定的な神話はほぼ皆無です。

猫の啓発に努める若者や動物保護団体

ネパール中部ガンダキ・プラデーシュ州のポカラを拠点に活動する、野良犬や野良猫の獣医療ケアを行う動物保護団体「Himalayan Animal Rescue Trust(HART)」のアンジャニ・グルングさんも、「猫は一般的にあまり好かれない」と言います。

ですがアンジャニさんによると、この5年間で猫の去勢・避妊手術のために訪れる飼い主が増えているそうです。

「これは嬉しい増加であり、ネパールも近いうちに猫に優しい国になることを願っています」とのこと。

ネパールには他にも懸命に動物の福祉活動に取り組む団体が多くあり、「Animal Nepal」や「Kathmandu Animal Treatment Center」は、動物の保護活動やシェルターの提供や去勢・避妊手術を行っています。

一方で、母猫とはぐれた子猫や捨てられた子猫がある程度成長するまで世話をし、その後里親を見つける活動を行ってるのが「Catmandu Lovers」という団体です。

Catmandu Loversは、猫の世話や去勢・避妊に関する講習会なども行っています。

「買わずに引き取る」の精神で猫を飼う人が増加

現在インターネットでは日本同様、猫のおもしろ行動を紹介する動画や画像が人気を博しており、こうした現象もネパール人の猫に対する認識を変えるのに一役買っています。

ですが、猫の人気が急速に伸びている背景には、若者の間に広がる「ペットは買うよりも引き取る方がより倫理的である」という認識があるでしょう。

この考えは、「もともと野良犬の数が増えすぎないようブリーダーから純血種の犬を購入するのではなく、野良犬を引き取ることを推奨する」ということから生まれたものです。

一方、ネパールにはそもそも猫のブリーダーはおらず、純血種の猫の市場もありません。

たいていの猫は野良猫として引き取られるため「買わずに引き取る」という精神と合致するのです。

猫の普及にロックダウンも後押し

ネパールでペットショップを営むディペンドラ・バジュラチャルヤさん(34歳)も、飼い主を必要としている動物がシェルターに多くいることから、「買わずに引き取る」というメッセージを支持しています。

ディペンドラさんは、「猫を引き取る人が増えているのは、口コミを通して、もしくは猫が実際に人間と絆を築く姿を目にする人が増えているためではないか」と考えています。

彼によると、新型コロナによるロックダウン以降、キャットフードなどの猫用製品が犬用製品と同じくらい売れるようになったそうです。

これは、実際に猫を飼う人が増えていることの裏付けでもあります。

こうした変化がさらに進み、ネパールが猫にとってより住みやすい国になるとよいですね。