イエネコとアフリカヤマネコの脳容量を比較
猫の脳のサイズが1万年前に人間により家畜化されて以降縮小しているという研究結果が、2022年1月26日に科学誌「Royal Society Open Science」で発表されました。
ウィーン大学とスコットランド国立博物館の共同研究チームは今回の研究で、イエネコの脳がその祖先である「
アフリカヤマネコ」の脳よりも小さいことを明らかにしました。
これまでの研究でも、犬やヒツジ、ウサギなどの様々な動物で家畜化により動物の脳が縮小することが確認されています。
しかし、これまでに行われた家畜化動物の脳の縮小を測定するための研究のほとんどは非常に古く、文献資料の入手が困難なものも多いそうです。
過去には、ヨーロッパヤマネコと比較してイエネコの脳容積が25%小さいことも確認されています。
しかし、そもそもヨーロッパヤマネコは元々のイエネコの祖先ではない可能性もあるとのこと。
そこで今回は、1960年代と1970年代に発表された研究方法を再現し、イエネコとその祖先とされるアフリカヤマネコ、さらにヨーロッパヤマネコおよび、イエネコとヨーロッパヤマネコの交配種の脳の容積を比較しました。
今後は猫以外の家畜動物での研究も必要
比較の結果「イエネコ」は、ヨーロッパヤマネコやアフリカヤマネコと比較して頭蓋骨の大きさ、すなわち脳容積が小さいことが明らかになりました。
さらに、イエネコとヨーロッパヤマネコの交配種の頭蓋骨は、この2種の猫の頭蓋骨の中間の大きさであることも判明しました。
研究チームによると、こうした脳容積縮小の原因として、「家畜化により従順さを残すための自然淘汰が起き、興奮性や恐怖に関連する神経堤細胞の生成が減少。そのため頭蓋骨と脳のサイズが縮小した可能性が考えられる」とのことです。
また、「他の動物種で調査することにより家畜化が猫もたらす影響を、さらに解明できる可能性がある」と言います。
今後は古い知見の再現に取り組んでさらに家畜化に関する研究を進め、神経堤細胞の生成減少などの仮説が確かな知見に基づくものかどうかを確かめる必要があるそうです。
人間が動物を飼い慣らしたことにより猫をはじめ様々な動物の脳がどのように変化したのか、とても興味深いですね。