猫は尿に関する病気になりやすい
猫は尿のトラブルが起きやすい動物です。元々猫はあまり水を取らないため、体内にある水分を再利用します。そのため、猫は濃縮された尿をつくる体のつくりになっています。
限られた水分で体を維持できるように働いているため、腎臓に大きな負担がかかってしまい、年齢とともにその機能が衰えていきます。特に猫はネフロンの数が少ないため、非常にダメージを受けやすい欠点があります。
元々飲水量が少ない猫ですが、寒い冬の季節になると、更に水を飲む量が減る傾向があります。こうして猫は一段と濃縮された尿をするようになってしまうため、泌尿器系疾患にかかりやすくなるのです。
猫の尿が臭い
尿スプレーによるマーキング
マーキングをする原因
元々猫は濃縮した尿を排泄するため、健康な状態でも臭い尿をします。しかし、特に去勢していないオス猫の尿の臭いがキツく、また尿スプレーによるマーキング行為をします。
尿の臭いがキツイ原因は、硫黄を含むアミノ酸である「フェリニン」が、去勢していないオス猫に多く分泌されているからです。
また、猫の尿にはタンパク質の1種である「コーキシン」が含まれており、オス猫の方がメス猫よりも約4倍も多く分泌されています。
そのため、去勢していないオス猫の尿は臭いがキツく、かつ尿スプレーは自分の縄張りを相手に示すために行うものなので、通常よりも尿を濃くして噴射します。そのため、猫はマーキングをする際、とても臭い尿をするのです。
マーキングの治療法
去勢手術を受けることで、尿の臭いをある程度軽減することができます。また、性ホルモンの関係により尿スプレー行為も抑えられることができます。
しかし、マーキング以外でも猫の尿は臭いため、トイレ以外に粗相してしまったり、あるいは尿スプレーをされてしまったりすると、生活上困ってしまいます。
ペット用の消臭剤を使ったり、熱湯をかけたりすることで、臭いの原因であるアンモニアを分解させる方法があります。また漂白剤もアンモニアを中和させる働きを持っているため、効果的といわれています。
細菌性膀胱炎
原因
高齢猫に多く発症しやすく、膀胱内に細菌が侵入・増殖することで、炎症をおこす病気です。特にメス猫の方がオス猫と比べて尿道が短いため、細菌性膀胱炎を引き起こしやすいです。
症状
膀胱内に細菌が増殖・炎症をおこすため、頻尿や血尿、尿が臭くなるなどの症状がみられます。
治療法
細菌性膀胱炎の場合は、膀胱内に増殖している細菌を抑制するために、抗生剤・抗菌薬の投薬を行います。
あまり効果が見られない場合は尿の細菌培養検査を行い、有効である抗生剤の種類を再度決めて、治療を行います。
猫の尿が出ない
尿道閉塞
原因
結晶や結石ができたことで尿道に詰まってしまったり、膀胱炎を繰り返し発症したりすることで、膀胱粘膜や炎症細菌がドロッとした膿のような塊となることで起こります。
特にオス猫の方がメス猫と比べて尿道が細長い構造となっているため、尿道閉塞を起こしやすい傾向があります。
症状
結晶や結石などにより、尿道に詰まってしまうことで自力での排尿が困難となり、尿が少ししか出ない、あるいは全く出なくなります。
全く尿が出なくなってしまうと、腎臓に大きなダメージとなり、急性腎不全、尿毒症となり、最悪の場合は命を落とす危険があります。
治療法
尿道閉塞は命を落とす危険がある状態なため、応急処置として尿道にカテーテルを挿入し、たまっている尿を出します。
尿道閉塞の状態がひどかったり、結石ができてしまったりしている場合は、外科的手術を行う必要があります。
3.猫の尿がいつもと違う
(慢性)腎不全
原因
高齢猫に多い慢性腎不全は、年齢とともに腎臓機能が徐々に低下することで発症します。15才以上の高齢猫の約30%が、慢性腎不全を引き起こしているといわれています。
猫は水をあまり取らないため腎臓に負担がかかりやすく、かつ腎単位であるネフロンの数が少ないため、腎不全を発症しやすいと考えられています。
症状
腎臓機能の低下により、体内の老廃物が濾過できなくなるため、薄い色の尿をするようになります。特に初期段階では多飲多尿がみられ、食欲不振や体重減少、嘔吐などがみられます。
飲水量が少ない猫は、腎不全になると体内の水分が失われてしまい、脱水症状をおこします。進行度が進むにつれて、老廃物が体内に蓄積されていき、尿毒症を起こし、命を落とす危険があります。
治療法
一度でも失われた腎臓の働きは元に戻ることはできないため、基本的に猫の(慢性)腎不全は対症療法となります。
脱水を補うために点滴を行ったり、貧血の場合は造血剤を投与したりします。また、腎臓になるべく負担をかけないように、進行防止としてタンパク質やリンの含有量を制限した食事療法を行います。
4.尿がポタポタ垂れている
膀胱炎
原因
細菌感染で膀胱に炎症が生じて発症することがありますが、猫の膀胱炎のほとんどが原因不明である突発性膀胱炎といわれています。
環境変化によるストレスが原因の多くを占めるのではないかと考えられており、飲水量の低下も尿を更に濃縮してしまうため、膀胱炎を引き起こす要因でもあります。
特に飲水量が少なくなる冬は、膀胱炎の発症率が高い傾向があります。また尿石症により膀胱に結石ができたことで炎症をおこし、膀胱炎を引き起こすこともあります。
症状
膀胱炎の症状は、頻尿により尿がポタポタと垂れてくる、血尿などが主にみられます。また、いつもよりトイレにいる時間が長く落ち着きがなかったり、陰部を気にしてよく舐めたりする、トイレ以外で粗相をすることもあります。
また、排尿後のトイレ砂の色がいつもより濃い場合は、膀胱炎の可能性が高いと考えられます。
治療法
細菌性膀胱炎の場合は抗生剤の投与などですが、突発性膀胱炎はストレスの要因を除去したり、飲水量を増やしたりする、運動不足解消(減量)、食事療法などを中心に治療を行います。
また、症状によっては痛み止めや抗生剤、抗炎症剤などを投与することもあります。
5.猫の尿がキラキラしている
尿石症
原因
尿のpHが極端にアルカリ性・酸性に傾くことで発症します。結石の多くがpHがアルカリ性傾くことが原因で起こるストラバイト結石・結晶が多く、主な原因としては、食事やオヤツに含まれているマグネシウムなどのミネラル成分と考えられています。
また、飲水量の低下や肥満なども要因としてあげられます。
症状
結晶や結石により尿が出にくくなり、何回もトイレに行くが尿の量が少ない(頻尿)、血尿、排尿痛などの症状が見られます。
尿とともに結晶も出てきているので、尿がキラキラと見えるのが特徴です。この結晶や結石の量が多いことが原因で尿道がつまり、尿道閉塞を起こす危険があります。
治療法
猫に多いアルカリ性のストラバイトの場合は食事療法を行いますが、酸性のシュウ酸カルシウムは溶解することができないため、結晶が大きくなり膀胱結石となった場合は、外科的に摘出する手術を行う必要があります。
猫が尿をする回数、量
腎臓は血液を濾過する働きと再吸収する働きをもっており、猫は再吸収の働きを重点的にしています。
祖先が砂漠地帯である現在の猫(イエネコ)もその名残により、水分を再吸収する働きを重点的においているため、水をあまり取らず濃縮した尿をします。
- 猫の尿の回数:1日2〜3回
- 猫の体重ごとの尿の量:20〜30ml/kg
そのため健康な状態でも排尿回数は人と比べてはるかに少なく、平均で1日2〜3回ほどといわれており、体重あたりで20〜30ml/kgといわれています。
多飲多尿時の回数、特徴
高齢猫に多い慢性腎不全になると多飲多尿となり、排尿回数が6〜7回と多くなります。
また、通常の尿は濃縮しているため黄色や琥珀色をし、キツイ臭いを放ちますが、慢性腎不全になると透明に近い薄い尿の色となり、臭いもしなくなります。
猫の尿に関するトラブルを予防するには
飲水量をチェックする
元々水を好んで飲まない猫は、飲水量が低下しやすいため膀胱炎や尿石症、腎不全など様々な泌尿器系疾患にかかりやすくなります。水飲み場を複数箇所設置し、いつでも水を飲めるようにします。
特に飲水量が低下しがちな冬場は、冷たい水ではなく温めたお湯にしてあげるなど、工夫することで飲んでくれることがあります。
しかし、一方で高齢猫に多い慢性腎不全の初期症状にみられる多飲で、気づく飼い主さんもいますが、実際にどれくらい飲んでいるのか気づきにくいことが多いです。
計量カップで量って入れたり、容器に印をつけておいたりすると、どれくらい飲んだのか把握することができます。
体重管理
肥満体型は尿石症になりやすい傾向があるため、太らせないように体重管理をすることです。また、肥満は尿石症だけではなく糖尿病や関節・心臓にも大きな負担をかけてしまい、健康上よくありません。
去勢・避妊後にほとんどの猫が体重の増加しており、尿石症は比較的若い年齢でかかりやすいため注意が必要です。1日の食事量を決め、計量して与えるようにし、オヤツの与えすぎにも注意です。
ストレスとなる要因を排除
猫の尿のトラブルは、環境変化などによるストレスが原因で膀胱炎を引き起こしやすいため、ストレスの要因であるものを排除させることが大事です。
猫は警戒心が強く、些細なことに対して過敏に感じストレスとなってしまうため、できる限り生活環境を変えないように配慮するように心がけてください。
トイレ環境の改善
- 清潔なトイレか?
- 適したトイレの大きさか?
- 静かな場所にトイレを置いているか?
- 適した猫砂の種類か?
尿のトラブルの原因がトイレ自体にあることがあります。猫にとって好ましくないトイレだと我慢してしまったり、粗相したりする原因にもなります。
トイレの大きさが猫に合っているか、清潔であるか、静かな所に設置しているのかなど、猫が安心してトイレができる環境にすることが大切です。
また、中にはトイレ砂の種類や敷き詰められている量にこだわりがあったり、臭いだけでトイレを使わない子もいたりしますので、ふだん猫がスムーズにトイレをしているのかチェックしましょう。
多頭飼い飼育の場合は、猫の頭数よりも+1個は最低でも置くようにし、こまめな清掃を心がけるとともに、いつでも安心して落ち着けるトイレにしてあげましょう。
定期的な検査を
猫は具合が悪くても隠そうとする動物です。そのため、気づいた頃には状態が進行しているケースも少なくありません。
腎不全のように完治することができない病気や、膀胱炎や尿石症は再発しやすく、尿道閉塞を起こす危険が伴います。
早期発見・再発防止のためにも定期的に血液検査や尿検査などの健康診断を受けることが大切です。
また、元気や食欲があったとしても多飲多尿や頻尿など些細な異変や症状が猫の健康・寿命に大きく左右することもありますので、動物病院を受診することです。
まとめ
猫は元々あまり水を取らず、無駄にしないように水分を再吸収し、濃縮した尿を出します。そのため腎臓に大きな負担がかかり、年齢とともにその機能が衰えていきます。
特に猫はネフロンの数が少ないため、非常にダメージを受けやすい欠点があります。
水を好んで飲まないため、飲水量の低下になりやすく、更に尿を濃くしてしまうため、猫は尿のトラブルを引き起こしやすいのです。
尿石症や膀胱炎などの下部尿路疾患は症状が似ていて、高齢猫に多く発症しやすい慢性腎不全の初期症状は、多飲多尿と気づきにくいです。
遺伝や体質などにもよりますが、これらの下部尿路疾患は再発しやすく、最悪の場合は尿道閉塞を起こし尿が全く出なくなり、命を落とす危険がでてきます。
また腎不全に関しましても、1度でも失われた腎臓機能は元に戻らないため、気づいたときにはすでに末期状態のケースも少なくありません。
定期的に検査を受けることも非常に大切ですが、体重管理やストレスの排除、トイレ環境の改善、飲水量のチェックなど、日常生活に心がけることも予防に大きくつながります。
猫は具合が悪くても隠そうとする動物なため、気づくが遅く状態が進行していることもあります。少しでも異変を感じたら、動物病院を受診するようにしましょう。