猫に虫が寄生している時の症状や対処法、予防の方法

猫に虫が寄生している時の症状や対処法、予防の方法

トイレ掃除中にうんちに白っぽい虫を見つけて驚いたことがあるのではないでしょうか。猫に寄生する虫はいくつかありますが、その中で猫の体内で寄生する内部寄生虫はどんな種類の虫がいるのか、今回はよく感染する代表的な内部寄生虫をピックアップしてみました。またそれらの内部寄生虫に感染した場合に起こる症状や治療法、そして寄生されないようにするためにはどのような予防法があるのか、それぞれまとめてみました。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫に寄生する虫にはどんな種類が居る?

トイレ中の猫

2つの線虫類

猫に寄生されやすい線虫類は回虫と鉤虫があげられます。これらの線虫類は多くの種類が存在し脊椎動物に寄生するものでも約36000種類といわれています。線虫類は主に腸管で寄生するものが多いです。

1.猫回虫

猫回虫は猫をはじめネコ科動物を終宿主とし、3〜15cm程でミミズや芋虫のような形で白色や黄白色をしています。猫回虫に感染した猫の排泄物(糞便)に虫卵が排出されますが、虫卵自体に感染力はありません。

しかし排泄物を放置してしまうと虫卵の中に幼虫が形成されてしまい感染力をもちます。そのため感染経路としては幼虫に形成されてしまった糞便を口にしてしまったり、すでに猫回虫に寄生しているネズミなどの動物を食べることで感染します。

また母猫が猫回虫に感染している場合、胎盤や母乳などを通して子猫に感染します。また、感染力のある虫卵を手に付着したまま食べ物と一緒に口に運ぶなどの経緯によって人間にうつるため、人獣共通感染症(ズーノーシス)でもあります。

2.猫鉤虫

成虫は1〜2cm程のミミズ様な形で白色をしています。幼虫は土の中や湿った環境中に存在し、口や皮膚から侵入し感染します。また母猫が感染していた場合、胎盤や母乳を通して子猫に感染することがあります。

妊娠期に子猫が感染した場合、1ヶ月以内に亡くなるケースが多いです。比較的若い猫に多く見られる傾向があります。人間も皮膚から侵入することで感染するため、水泳などの湿潤環境下を裸足で歩いた際に感染するケースが多いそうです。

条虫類

猫の条虫は扁平上で細長い形をしています。数個〜数千個の体節(片節)が連なっている寄生虫であり、サナダムシの事を指します。

日本国内で猫に寄生する条虫類が10種類以上といわれており、特に代表的なのが「瓜実条虫」「マンソン裂頭条虫」「猫条虫」「多包条虫(エキノコックス)」です。

瓜実条虫

瓜の種のような体節(片節)がいくつも連なっているのが特徴です。片節の大きさはゴマ粒〜米粒くらいなため、猫のお尻周りや寝床周辺などで見つかりやすいです。

瓜実条虫は片節の一部を分離し、糞便と一緒に排泄されます。排泄された片節には虫卵が存在し、その虫卵をノミやシラミが食べ、それらが猫の口に入ることで感染します。

猫は毛づくろいする習性があるため、その際に被毛に付着していたノミやシラミを口の中に取り込んでしまうことで感染することが多いです。この瓜実条虫は人間も手に付着した虫卵の状態のまま食べ物と一緒に口にしてしまうことで感染します。

マンソン裂頭条虫

虫体の全長が1m以上と長く、平な形をしています。

マンソン裂頭条虫は特に外に出る機会がある猫に多く発症しています。糞便とともに排出された虫卵が水の中で孵化します。それをミジンコが食べ、そのミジンコをカエルなどが摂食し、そして最終的にそのカエルなどを猫が捕食することで感染します。

また、虫卵が含まれている川の水などを経口摂取することで人間にもうつることがあります。

猫条虫

成虫になると全長が約60cmにもなる条虫で、中間宿主でもあるネズミに寄生しているためネズミを食べることで感染します。

小腸に寄生し、小腸壁に食らいつくようにして寄生しますので小腸が傷ついてしまったり、ご飯を食べたとしても条虫が栄養を奪ってしまうため体重が減少します。また猫条虫の虫卵を人間が何らかの経緯によって誤って口にしてしまうことで、人間も感染する場合があります。

多包条虫(エキノコックス)

エキノコックスの成虫は全長で約4mm程ととても小さいです。エキノコックスはキツネや犬、猫など肉食動物を終宿主とし、ネズミなどは中間宿主とします。

中間宿主であり既に寄生しているエキノコックスはネズミを中間宿主とし、エキノコックスが寄生したネズミを猫が捕食することで感染します。そのためエキノコックスが感染したネズミなどを捕食しない限りは感染が成立しないため、キツネなどの糞便を口にしたとしても感染しません。

キツネや犬、猫などが感染した場合、糞便とともに虫卵が排出されます。その虫卵を人間が食べ物などと一緒に摂取してしまうことで感染します。

猫のお腹に虫がいると起こる症状

ブランケットにくるまっている猫

下痢や嘔吐が続く

猫が内部寄生虫に感染していた場合、消化不良を起こし便が軟らかくなったり、寄生している虫の数によっては激しい下痢や嘔吐が続きます。うんちに白い虫が出てきたり、嘔吐物に虫が混ざっていることがあります。

体重減少・栄養不良

猫の小腸などの消化管に寄生するため、食事から得た栄養が寄生虫に奪われてしまいます。そのためご飯を食べていても体重が減少します。特に子猫に感染した場合は、発育不良となってしまうため命に関わってきます。また栄養不良により毛づやが悪くなります。

貧血・血便

鉤虫は吸血して栄養を得るため、貧血を起こしたり血が混じった血便をすることがあります。

元気喪失・食欲不振

寄生虫によって栄養を奪われてしまったり下痢や嘔吐、貧血などの症状に伴い元気がなくなったり、食欲も落ちます。

猫の虫を駆除するには

茶トラ猫とカプセルの薬

駆虫薬の投与

猫が寄生虫に感染していた場合は駆虫薬を投与します。駆虫薬は消化管に寄生している虫体に対して効果がありますが、幼虫や虫卵には効果がありません。

そのため完全に駆虫するためには2週間以上の間隔をあけて、駆虫薬を複数回投薬する必要があります。多頭飼いの場合はトイレを共有していることにより同居猫も感染している可能性がありますので、糞便検査とともに同居猫も駆虫薬を投与しましょう。

飲み藥や皮膚につけるスポットタイプの駆虫薬があります。

症状に合わせての対症療法

寄生虫によって下痢を起こしたり、吐くなどの症状がひどい場合は下痢止めや吐き気止めの治療をおこないます。また脱水している場合は点滴をおこなうなど、症状や状態に合わせての対症療法をする場合があります。

猫に虫が寄生されないようにできる予防法

黄昏る家猫

完全室内飼いにする

外に出てしまうとその分、虫に寄生されるリスクが高くなります。そのため猫の飼育環境を完全室内飼いにし、外に出さないようにすることです。

完全室内飼いにすることで寄生虫に感染予防だけではなく、野良猫との接触もなくなるので鼻水やクシャミといった猫風邪や、治療法がなく命の危険がある猫白血病ウイルス感染症や猫免疫不全ウイルス感染症などの感染症も予防することができます。

定期的に予防・駆除薬の投与をおこなう

瓜実条虫のように媒介動物を通して感染する寄生虫もあります。

たとえ猫が室内飼いだとしても、外と出入りする人間の衣服に付着し、家の中へ持ってきてしまうことで猫が感染する場合がありますで、猫に対してノミやシラミ、ダニなどを駆除させるために駆除薬を投与することです。

住んでいる地域によって多少変わりますが、年間を通して暖かい場合は毎月1回投与する必要があります。特にノミは気温が13度あれば生存できるため、冬の時期でも暖房をつけることでノミが活性化し、増殖してしまうため寒い冬の季節でも注意が必要です。

特に猫を保護した場合は早めに糞便検査を受ける

寄生虫に感染している猫は特に野良猫や外に出入りしている子に多いです。また保護団体から譲渡された猫も回虫などに感染していることが多く見られます。そのため野良猫を拾ってきたり、保護団体から猫を譲り受けた場合は寄生虫に感染している可能性がありますので、寄生されていないかどうか糞便検査する必要があります。

先住猫がいる場合は感染する恐れがありますので、検査して感染していないことを確認できるまではトイレを別々にしましょう。感染猫の排泄物を放置してしまうと感染力を持ってしまいますので、すぐに処理をおこない清潔な状態を保つことが大事です。

糞便検査で寄生虫の虫卵が見つからなければ、寄生虫感染を受けていないとは言い切れません。糞便検査で見つからなくても駆虫薬を投与する方法もあります。

清潔な生活環境に心がける

感染症の中には人間にもうつるものがあるため、猫だけではなく人間にも感染させないように生活環境に気をつける必要があります。

生活環境が不衛生な状態だと寄生虫をはじめ、細菌や真菌などの数が一気に増え、感染するリスクが高くなります。こまめな清掃や猫の排泄物を早めに処理するなど、常に清潔感を維持させることが大切です。

まとめ

子猫の昼寝

今回は内部寄生虫を中心にまとめてみましたが、それでも猫回虫や瓜実条虫など猫に感染する内部寄生虫はたくさんあります。感染した場合、消化管に寄生し下痢や嘔吐の症状が続きます。

また小腸などの消化管に寄生するため口から得た栄養が、寄生虫に奪われてしまうためご飯を食べても体重が減少します。特に成長期である子猫に感染してしまうと栄養不良をおこし、最悪の場合は命に関わってきます。

寄生虫を駆虫する必要があるため、治療法として駆虫薬を投与します。駆虫薬は一般的に消化管に寄生している虫体に対して効果はありますが、成長段階の幼虫や虫卵には効きません。虫体を駆虫したとしても幼虫や虫卵も退治しなければ意味がありませんので、およそ2週間程間隔を開けて複数回投薬が必要です。

多頭飼いの場合はトイレの共有によって同居猫も感染することがありますので、同居猫に対しても糞便検査をおこなうと共に駆虫薬を投与しましょう。

猫が内部寄生虫に感染する主な原因は、虫卵を何らかの経緯で口に入ってしまったりネズミやカエルなどを捕食する、被毛に付着していたノミを毛づくろいの際に口の中に取り込んでしまうなど様々です。

寄生虫による感染症は猫だけではなく人間にもうつるものがあるため、感染しないように猫を完全室内飼いにしたり、ノミやシラミ、ダニなどに対して定期的に駆除薬を投与する、こまめな清掃や排泄物の処理をすぐ片付けるなど心がける事が大事です。

また野良猫を拾ったり保護団体から譲渡された猫は感染している可能性があるため、感染していないか糞便検査をおこないましょう。

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