猫ちゃんも長寿化!
動物医療の進歩やペットフードの改良などにより猫ちゃんの寿命が年々長くなり以前は10年ほどでしたが現在では約15〜17年と伸び、中には20歳を超える猫ちゃんもいるようになりました。
高齢猫に多い「甲状腺機能亢進症」
私たちと同様に猫ちゃんも年をとるとその分、高齢特有の病気にかかりやすくなります。その中でもよく発症する病気の一つに「甲状腺機能亢進症」があります。人では女性にかかりやすいイメージがあると思いますが高齢の猫ちゃんでも発症しやすい病気なのです。
猫の甲状腺機能亢進症とは?
発症する要因は?
喉のあたりを触ると気管の両脇に「甲状腺」があり、そこから甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは通常、新陳代謝を促進する働きをしたり循環器や各臓器、神経などの働きを整えたり、体温の調節など体全身に関わるホルモンなのです。つまり、体を元気にするホルモンです。
この甲状腺ホルモンの働きが活発になり分泌量が多くなることを「甲状腺機能亢進症」といいます。特に8歳以上ぐらいから発症が多く、高齢猫ちゃん全体の約10~15%が甲状腺機能亢進症にかかっているといわれています。
普段与えているフードの内容、飼育環境などの生活スタイルも関わっているといわれています。
どんな症状をおこすの?
甲状腺ホルモンの分泌量が増えることにより新陳代謝量も増えるため、各臓器に影響を与えてしまいます。この状態が続いてしまうと体全体に大きく負担がかかり命に関わってきます。
- 若い頃と変わらず活発的で夜になっても寝ようとせず常に動き回る
- 食欲が増え、多めにご飯を与えているのに体重が低下する
- 瞳孔(黒目部分)がいつも大きく、興奮状態が続いており落ち着きがない
- 若い頃は穏やかな性格だったのが噛んできたり引っかいてきたりと攻撃的な性格に変わった
- 飲水量が増え、オシッコの量も増える
- 嘔吐や下痢
- 体温の上昇(発熱)
- 毛並みが悪くなり皮膚の弾力がない
- 頻脈(心臓の働きが活発になり心拍数が上がる)
- 過度に鳴く(夜鳴き)
などの症状がよくみられます。その中でも特に行動が活発になったり、食欲があるのに体重が落ちている、夜鳴き、興奮状態が続いているなどが甲状腺機能亢進症を発症している猫ちゃんに多くみられます。
猫の心臓に悪影響を及ぼす
甲状腺ホルモンの分泌が多くなると血圧が上昇したり頻脈になります。血圧が高い状態や頻脈が続いてしまうと体全身に血液を送り出す働きする心臓に負担がかかり、心臓が疲れてしまい、最悪失神してしまったり、命をおとしてしまう場合もあります。
猫の腎臓も障害を受けます
高血圧は心臓だけではなく腎臓にも大きく影響をあたえます。腎臓は血液をろ過し老廃物や余分な水分を尿として体外に排出する働きがありますが血圧が高くなると血液量が多くなり腎臓に負担がかかってしまい腎臓病を併発もしくは悪化させることもあります。また、甲状腺ホルモンは元気にさせるホルモンですので、それが過剰にでていたおかげで腎臓を元気にし本当は腎臓病なのに隠されていたのが、治療をはじめて安定してくると、隠されていた腎臓病が表れてくる場合もあります。
腎臓の働きが低下すると余分な水分や老廃物が排出されなくなり、尿毒症をおこし命にかかわります。一度失われてた腎臓の機能は元に戻ることができないので進行を遅らせる対症療法しかありません。
症状が進行するとどうなるの?
甲状腺ホルモンの過剰な分泌が長く続くと常に代謝が活発な状態なため、体力の激しい消耗により元気が低下し動かなくなります。食欲の低下や嘔吐、息が荒くなる、心拍数の上昇などの症状を発症し命をおとします。
猫が甲状腺の病気になったら治療法はあるの?
甲状腺ホルモンはフードに含まれている「ヨウ素(ヨード)」を元にしてつくられています。そのヨウ素の含有量を制限した療法食を与え、甲状腺ホルモンの分泌量を減らすことができます。ただし、この療法職での治療は、お水とこのごはん以外は一切与えてはいけないという絶対条件がありますので、このごはんを好んで食べてくれる子でなければいけません。
また薬を服用し甲状腺ホルモンの分泌を抑える内科療法もあります。
薬の飲み過ぎなど不適切な治療をしてしまうと逆に甲状腺ホルモンの量が少な過ぎてしまい体温の低下や脱毛、皮膚の黒ずみ、肥満体型になり甲状腺機能低下症を発症してしまうため内科療法をおこなう場合は必ず定期的な血液検査をする必要があります。
まとめ
甲状腺機能亢進症にみられる症状で行動が活発になり常に走り回る、よく鳴く、食欲の増進など一見健康そうな行動の変化のため多くの方が気にしておらず病気にかかっていることに気づくのが遅いケースがよくみられます。
それにより体全身に悪影響をあたえ心不全や腎臓病など合併症を発症しやすくなるため治療をしなければ命に関わってきます。適切な治療をおこなえば症状を抑えることができたり合併症の予防にも繋がります。
日頃から猫ちゃんの様子や行動をチェックしたり、高齢の場合は定期的に血液検査することが大切です。